2025.03.03
  • オステオパシーについて
世界のオステオパシーの現状(2025)

オステオパシーは国ごとに異なる形で発展しており、医療資格として確立されている国もあれば、まだ十分に認知されていない国もある。また、近年はエビデンスベースの医学的アプローチが強化される一方で、伝統的なオステオパシーの哲学が衰退しつつあるという傾向も見られる。 

① 世界各国におけるオステオパシーの状況

アメリカ(USA)

DO(Doctor of Osteopathic Medicine)として医師資格を持つが、徒手療法は一部のDOが使用するのみで、多くは西洋医学の医師として活動している。MD(医学博士)との統合が進み、オステオパシー本来の徒手療法は縮小傾向にある。

DO医師の増加と全医師に占める割合

アメリカでは、MD(Doctor of Medicine)とDOの2種類の医師資格があります。近年、DO養成校の増加に伴い、DO医師の数は増加傾向にあります。2022年には、全医学生の約25%がDO養成校に在籍しており、将来的にDO医師がさらに増加することが見込まれている。 

オステオパシー手技療法の実施状況

DO養成校では、オステオパシー手技療法(OMT: Osteopathic Manipulative Treatment)を学びますが、実際に臨床でOMTを実施するDO医師の割合は限定的です。(約0.8%)多くのDO医師がMD医師と同様の診療を行っているとされている。 

ヨーロッパ

フランス、イギリス、ドイツ、イタリアなどでは、オステオパシーは国家資格として認められている。徒手療法専門のオステオパスが医療システムの中で活躍しているが、近年はエビデンスベースの教育が強化され、伝統的なオステオパシー技法(クラニオセイクラル、バイオダイナミクスなど)が削減される傾向がある。理学療法(PT)やカイロプラクティックとの違いが曖昧になりつつある。

オーストラリア・ニュージーランド

オステオパシーは国家資格であり、医療システムの一部として機能している。大学教育を受けたオステオパスが活躍しているが、こちらもエビデンスベースの徒手療法が主流となり、伝統的な哲学は弱まりつつある。 

アジア(日本・中国・韓国など)

日本では国家資格がなく、民間資格の団体が乱立している。「整体」や「カイロプラクティック」との混同が多く、一般の認知度が低い。教育基準の統一がされておらず、団体間の対立も見られる。エビデンスの確立が進んでいないため、医学界からの評価は低い。中国では伝統医学(中医学)の影響が強く、西洋的なオステオパシーの普及は限定的である。 

南米・アフリカ

アルゼンチンやブラジルではオステオパシーが一部認知されつつあるが、発展途上の段階にある。アフリカではオステオパシーの普及が進んでおらず、教育機関もほとんど存在しない。

② 世界的な課題

国ごとの資格制度の違い

アメリカではDOは医師資格を持つが、ヨーロッパでは徒手療法専門職として分かれている。日本などでは国家資格がなく、標準的な教育制度が確立されていない。ただし、日本でも国際的な教育基準を満たした学校はあり、近年卒業したオステオパスが増えつつある。

エビデンスの確立と伝統的オステオパシーの衰退

近年、エビデンスベースのオステオパシーが主流になり、伝統的な技法(バイオダイナミクス、クラニオセイクラルなど)が軽視される傾向がある。「科学的根拠のある手法」だけが重視され、オステオパシーの個別対応能力や全人的アプローチが損なわれつつある。

医療保険の適用

アメリカやフランスでは一部のオステオパシー施術が保険適用されているが、日本を含む多くの国では自由診療のみとなっている。保険適用が進まない限り、オステオパシーの利用者層が限定される。

他の徒手療法(理学療法・カイロプラクティック)との差別化

エビデンス重視の方向に進むことで、理学療法(PT)やカイロプラクティックとオステオパシーの違いが曖昧になりつつある。伝統的なオステオパシー技法が減少すると、オステオパシーを学ぶ意義が失われる可能性もある。

各国のオステオパシー団体の分裂

日本を含め、各国でオステオパシーの団体が多数存在し、統一が難しい。団体ごとに教育方針が異なり、まとまりがないため、業界全体の発展を妨げている。


③ 今後の展望

エビデンスと伝統のバランスを取る

科学的エビデンスを強化しつつも、伝統的なオステオパシー技法(クラニオセイクラル、内臓マニピュレーションなど)を守る動きが必要。エビデンスがないからといって効果がないと断定せず、経験的に有効な技法を研究する姿勢が求められる。

教育基準の国際的統一

WHO(世界保健機関)や欧米のオステオパシー機関と協力し、教育基準の統一を進める。日本でも、最低限の教育基準を整備し、「オステオパシーとは何か?」を明確にする必要がある。

医療制度への統合

医療保険適用の拡大を目指し、オステオパシーをより多くの人が受けられるようにする。心療内科やリハビリテーションなど、西洋医学との連携を強化し、統合医療の一部としての役割を確立していく。

デジタル技術を活用した情報発信

SNSやYouTubeなどを活用し、オステオパシーの正しい知識を広める活動が重要になる。科学的根拠に基づいたブログや動画コンテンツを提供し、誤った情報の拡散を防ぐ取り組みが求められる。 
 

④ まとめ

オステオパシーは欧米では医療資格として確立されているが、日本などではまだ発展途上にある。エビデンスベースの方向に進んでいるが、伝統的な技法が失われつつあるのが課題となっている。

国ごとの資格制度の違いが統一を妨げており、保険適用の拡大や、西洋医学との統合医療化が今後の鍵となる。デジタル発信の活用も重要な要素になるだろう。

オステオパシーの未来を考える上で、エビデンスを重視しつつも伝統を守ることが大切である。