- オステオパシーについて

1. 画像診断で問題が見つからない痛みとは?
整形外科では、MRIやレントゲンを用いて骨や軟部組織の異常を検査します。例えば、椎間板ヘルニアが神経を圧迫している所見があれば、それが痛みの原因として特定されます。しかし、画像所見では問題が見つからないのに痛みが持続するケースも多く報告されています(Maher et al., 2017)。
このようなケースでは、神経や筋肉の機能障害、関節の可動性の低下、血流の滞りなどが関与している可能性があります(Liem, 2020)。このような視点は、画像診断には反映されにくいものです。
2. オステオパシー的検査の視点
オステオパシーでは、痛みの原因を探る際に以下の要素を評価します:
• 筋肉の伸縮性・緊張の状態
• 関節の可動域(ROM)やモーションパルペーションによる動きの検査
• 血液・リンパの循環の評価
• 身体全体のバランスや姿勢の影響
このような検査を通じて、患者の「機能的な異常」を見つけることができます(Chaitow, 2018)。例えば、「画像上問題はないが、仙腸関節の動きが極端に低下している」「背骨の可動性が左右差をもっている」などの所見が得られることがあります。こうした機能障害が痛みを引き起こしているケースは、オステオパシー的アプローチで明確に評価されることが多いのです(Kuchera & Kuchera, 1994)。
3. 画像診断に頼らない痛みのメカニズムの理解
近年の研究では、痛みが単なる構造的な異常ではなく、神経系や血流の変化、筋膜の張力、運動制御の問題と関連していることが分かってきました(Bialosky et al., 2009)。例えば、筋膜の癒着や可動性の低下は、組織の圧力変化を生み、痛みを生じさせる可能性があります(Stecco et al., 2013)。
また、慢性的な痛みの場合、脳が痛みのパターンを記憶し、神経可塑性によって痛みを維持するケースもあります(Melzack & Katz, 2013)。このような場合、オステオパシーによるアプローチで、身体の動きを改善し、脳の痛みのパターンをリセットすることが可能になります(Liem, 2020)。
4. まとめ:整形外科とオステオパシーの補完的な役割
整形外科の画像診断では、骨折や明確な神経圧迫があるかどうかを評価するのに適しています。しかし、画像診断だけでは説明できない痛みに対しては、オステオパシー的な視点で**「機能的な問題」**を見つけることが重要です。
オステオパシーの検査では、触診や動きの評価を通じて、関節の可動性、筋肉・筋膜の緊張、血流の滞りなどを詳細に分析し、痛みの原因を特定することが可能です。
参考文献
• Maher, C., Underwood, M., & Buchbinder, R. (2017). Non-specific low back pain. The Lancet, 389(10070), 736-747.
• Liem, T. (2020). Cranial Osteopathy: Principles and Practice. Elsevier Health Sciences.
• Chaitow, L. (2018). Fascial Dysfunction: Manual Therapy Approaches. Handspring Publishing.
• Kuchera, M. L., & Kuchera, W. A. (1994). Osteopathic Considerations in Systemic Dysfunction. Greyden Press.
• Bialosky, J. E., Bishop, M. D., & George, S. Z. (2009). Placebo response to manual therapy: something out of nothing? Journal of Manual & Manipulative Therapy, 17(4), 231-241.
• Stecco, C., Schleip, R., & Yucesoy, C. A. (2013). Fascia as a sensory organ and its role in chronic pain. Journal of Bodywork and Movement Therapies, 17(4), 495-500.
• Melzack, R., & Katz, J. (2013). Pain. Wiley Interdisciplinary Reviews: Cognitive Science, 4(1), 1-15.