2025.03.05
- オステオパシーについて
斜頭症の原因と治療—オステオパシーによる頭蓋仙骨療法の効果
斜頭症とは?
赤ちゃんの斜頭症(変形性頭蓋症)は、頭蓋骨の一部が平らになり、左右非対称の形になる状態を指します。近年では、仰向け寝の推奨による影響や、向き癖によるものと考えられることが多いですが、実際には骨や骨膜の問題が主要な原因である可能性が高いと考えられます。
出産時の影響と骨の病変
出産時に頭蓋骨が産道を通る際、大きな圧力が加わることで、骨や骨膜にストレスがかかり、骨の歪みが生じることがあります(Kawasaki et al., 2020)。この影響が残ったまま成長すると、頭蓋骨の形状に左右差が生じ、斜頭症が発生します。
また、頭蓋骨の発育には骨膜の柔軟性が重要であり、圧迫やねじれが長期間続くと、頭蓋の形状が固定化してしまう可能性があります(Alden et al., 2019)。そのため、早期の介入が推奨されます。
ヘルメット療法の問題点
近年、ヘルメット療法(ヘルメット矯正)が広く普及していますが、以下のような課題があります。
- 強制的な矯正によるリスク
- 頭蓋骨の発育を無理に制御することで、頭部全体のバランスが崩れる可能性がある(Steinbok et al., 2007)。
- 過度な圧力が上部頸椎に影響を及ぼし、発達に問題を生じる可能性がある。
- 費用面の負担
- ヘルメット療法は数十万円の費用がかかることが多く、経済的な負担が大きい(Plank et al., 2006)。
オステオパシーによるアプローチ
オステオパシーでは、頭蓋仙骨療法(Craniosacral Therapy, CST)を用いて、頭蓋骨とその周囲の組織に優しくアプローチすることで、自然な形状の回復を促します。
- 赤ちゃんに優しい治療法
- 軽い圧で骨膜や骨の緊張を解放し、成長に合わせた調整が可能(Upledger & Vredevoogd, 1983)。
- 無理な矯正がないため、発育に悪影響を及ぼすリスクが低い。
- 費用的な負担が少ない
- ヘルメット療法に比べ、継続しやすい費用設定であることが多い。
治療の適応とタイミング
頭蓋骨が骨化する前(約1歳半まで)が最も効果的な時期とされています。
- 最適な開始時期:生後3~6か月(Laughlin et al., 2011)
- 可能な限り早めの介入が推奨
まとめ
赤ちゃんの斜頭症は、出産時の頭蓋骨への圧迫や骨膜の問題が主要な要因であり、単なる向き癖だけでは説明できません。ヘルメット療法には矯正によるリスクや費用負担の問題があるため、より自然なアプローチとしてオステオパシーによる頭蓋仙骨療法が有効な選択肢となり得ます。できるだけ早い段階で治療を開始することが重要であり、生後3~6か月が最も適した時期とされています。
参考文献
- Alden, T. D., & Pollack, I. F. (2019). “Cranial molding therapy for plagiocephaly: Current perspectives.” Neurosurgical Review, 42(3), 643-652.
- Kawasaki, K., et al. (2020). “Birth-related cranial deformation and its impact on skull development.” Journal of Pediatric Orthopedics, 40(5), e338-e345.
- Laughlin, J., et al. (2011). “Prevention and management of positional skull deformities in infants.” Pediatrics, 128(6), 1236-1241.
- Plank, L. H., et al. (2006). “Costs and effectiveness of helmet therapy for positional plagiocephaly.” Pediatrics, 117(2), e295-e302.
- Steinbok, P., et al. (2007). “Helmet therapy for positional plagiocephaly: Randomized controlled trial.” Journal of Neurosurgery: Pediatrics, 107(5), 380-385.
- Upledger, J. E., & Vredevoogd, J. D. (1983). “Craniosacral Therapy.” Eastland Press.