- オステオパシーについて
起立性調節障害と酸素飽和度の関連
起立性調節障害(OD: Orthostatic Dysregulation)は、自律神経の不調によって血圧や心拍の調整がうまくできなくなる疾患で、特に思春期の子供や若年層に多く見られます。この疾患では、酸素飽和度(SpO₂)に影響を与えることがあり、いくつかの関連が考えられます。
1. 起立性調節障害における酸素飽和度の変化
低酸素状態が起こることがある
血流の調節異常により、脳や全身への酸素供給が不安定になります。立ち上がった際に血圧が急低下し、脳血流が低下すると、酸素飽和度が一時的に低くなることがあります。
睡眠時の低酸素
ODの子供は夜間の自律神経機能が乱れ、睡眠時無呼吸を合併する場合があります。その結果、夜間の酸素飽和度が低下し、朝起きるのが困難になる要因の一つになります。
低血圧や血流不全により末梢血流が低下
指先の血流が悪くなると、パルスオキシメーターの測定値が通常より低く出ることがあります。これは実際の低酸素状態ではないものの、測定値が一時的に低くなる要因となります。
2. 起立性調節障害のタイプと酸素飽和度への影響
起立性調節障害にはいくつかのタイプがあり、それぞれ酸素飽和度への影響が異なります。
タイプ | 症状の特徴 | 酸素飽和度への影響 |
---|---|---|
起立直後性低血圧(Immediate OH) | 起立直後に血圧が急低下 | 短時間の酸素飽和度低下が起こることがある |
体位性頻脈症候群(POTS) | 立ち上がると心拍数が急増 | 酸素飽和度は通常正常だが、動悸による息苦しさが出る |
遅延性起立性低血圧(Delayed OH) | 立ってしばらくすると血圧が低下 | 低酸素状態が長く続くことがある |
神経調節性失神(NMS) | 立位で意識消失する | 失神時には一時的に酸素飽和度が低下 |
3. 酸素飽和度をチェックするポイント
1. 朝起きた直後に測定する
90%以下であれば、夜間低酸素状態の可能性がある。低すぎる場合は、睡眠時無呼吸や血流不全の評価が必要。
2. 起立時の変化を見る
仰向けで測定し、立ち上がってすぐ測定、その後3分後に測定する。立ち上がった際にSpO₂が3%以上低下する場合、血流調節の異常が疑われる。
3. 運動後の測定
軽い運動後にSpO₂が低下しないか確認する。通常は運動後も95%以上を維持するが、90%を下回る場合は低酸素状態がある可能性がある。
4. 起立性調節障害と酸素飽和度の関係から考えられる対策
生活習慣の改善
水分と塩分をしっかり摂取し、血流を安定させることが重要。軽い有酸素運動を取り入れることで血流が改善される。
呼吸法の工夫
腹式呼吸を意識することで呼吸の質が向上し、酸素供給が安定する。ストレスを管理し、自律神経の乱れを防ぐことも有効。
オステオパシーのアプローチ
横隔膜の調整を行うことで呼吸を改善し、酸素供給の安定化を図る。頭蓋仙骨療法(Cranial Osteopathy)を用いて自律神経のバランスを整えることも有効。首や胸部の血流を促進することで、脳への酸素供給をサポートできる。
5. まとめ
起立性調節障害では、酸素飽和度が一時的に低下することがある。夜間低酸素、起立時の血流不全、低血圧による脳血流不足が関連することが多い。90%以下の酸素飽和度が続く場合は、睡眠時無呼吸や血液循環の問題を疑う必要がある。適切な生活改善、呼吸法、オステオパシーの施術で改善を図ることが重要。
もし酸素飽和度の低下が頻繁に見られる場合は、医療機関での評価(心肺機能や睡眠時無呼吸のチェック)を受けることをおすすめします。