2025.03.14
  • オステオパシーについて
脳脊髄液減少症と膜組織のバランス 〜オステオパシー的視点〜

交通事故後に発症する脳脊髄液減少症は、脳脊髄液(CSF)の漏出や減少により、脳の支持が低下し、多様な症状を引き起こす疾患です。特に、脳の下垂による脳への圧迫や、硬膜の緊張が長期的な不定愁訴の原因となることがあります。 

脳下垂による脳への圧迫

脳脊髄液は、脳と脊髄を保護し、クッションの役割を果たしています。CSFが減少すると、脳が下方へ移動し、脳組織や神経構造に過度な圧力がかかることがあります。これにより、頭痛、めまい、視覚障害などの症状が現れることがあります。

硬膜の緊張

硬膜は、脳と脊髄を包む堅牢な膜であり、CSFの保持に重要な役割を果たしています。交通事故などの外傷により、硬膜が損傷し、CSFの漏出が生じることがあります。その結果、硬膜自体が緊張し、神経系の機能に影響を及ぼす可能性があります。

診断と治療の課題

脳脊髄液減少症の診断には、RI脳槽シンチグラフィーやCTミエログラフィーなどの画像検査が用いられますが、必ずしも明確な所見が得られない場合があります。そのため、ブラッドパッチ療法や外科的手術が行われることがありますが、検査で問題が検出されない場合、これらの治療が適用できないことがあります。 

オステオパシー的アプローチ

オステオパシーは、身体の構造と機能の関連性に着目し、手技を用いて自然治癒力を促進する療法です。脳脊髄液減少症に対しては、以下のようなアプローチが考えられます。

頭蓋仙骨療法:頭蓋骨や仙骨の微細な動きを調整し、CSFの循環を促進することで、脳の圧迫を軽減します。

膜組織の緊張緩和:硬膜や他の膜組織の緊張を和らげることで、神経系の機能を改善します。

全身のバランス調整:全身の筋骨格系のバランスを整えることで、CSFの循環や神経機能の正常化を図ります。

これらの手技により、検査では検出しにくい機能的な問題にアプローチし、症状の改善が期待されます。 

まとめ

交通事故後の脳脊髄液減少症は、脳下垂や硬膜の緊張により、長期的な不定愁訴を引き起こすことがあります。従来の検査や治療で明確な原因が特定できない場合、オステオパシー的アプローチが有効な選択肢となる可能性があります。ただし、個々の症例に応じた適切な評価と施術が重要であり、専門家との連携が求められます。