2025.06.17
  • オステオパシーについて
片頭痛の神経血管連関に対するオステオパシー的理解と臨床応用

片頭痛の原因とは?

片頭痛は、単なる頭の血流異常ではなく、神経・血管・脳の奥深いネットワークの複雑な反射で起こるものなのです。

“首を調整することで頭痛が軽くなる”ということが臨床ではよくみられますが、その事実が医学的にどのようになっているかをまとめました。


■ 片頭痛のメカニズム

① 硬膜と血管の刺激がはじまり

脳の表面には「硬膜」という膜があり、その中を通る静脈洞という血管が何らかのきっかけでうっ血・拡張すると、その周囲にある感覚神経(特に三叉神経)が刺激されます。

このとき、

  • 血管が拡張
  • 神経が刺激
  • 炎症性の神経伝達物質(例:一酸化窒素、CGRPなど)が放出

…これにより、痛みが広がり始めます。

📘 参考論文:Goadsby PJ, et al. (2002). Pathophysiology of migraine: A disorder of sensory processing. Physiological Reviews, 82(4), 1025–1071.


② 三叉神経と頸椎のつながり

三叉神経は顔の感覚を司る重要な神経ですが、その痛みの信号は脳幹から首の奥深く、C1〜C3(第一〜第三頸椎)にまで届きます。これを三叉神経頚髄複合体といいます。

つまり、頭の奥で起きた痛みの反応が首に“降りて”きます。


③ 視床・視床下部と迷走神経が関与

首に届いた痛みの信号は、さらに脳の深部にある「視床」や「視床下部」に伝わり、

ここで自律神経系(特に副交感神経)と連動し始めます。

  • 迷走神経(副交感神経の主幹)が活性化
  • 延髄や脳幹との反射回路が形成
  • 血管がさらに拡張 → 痛みが悪化する

ここに舌咽神経などの上行性・下行性のフィードバックが加わることで、さらに頭蓋内の血管が拡張 → 硬膜の神経が刺激される → 痛みがループするという悪循環が生まれます。

📘 参考論文:Akerman S, Holland PR, Goadsby PJ. (2011). Diencephalic and brainstem mechanisms in migraine. Nature Reviews Neuroscience, 12(10), 570–584.


■ 偏頭痛の3つの構成要素とそれに関わる迷走神経

片頭痛を構成する3つの主要因は以下のとおりです:

  • 硬膜の血管拡張
  • 三叉神経節の過活動
  • 上部頸椎(C1〜C3)の関与

さらにこの中に、迷走神経をはじめとした副交感神経の過剰反射が加わることで、偏頭痛が悪化する可能性があります。


■ オステオパシーでどのようにアプローチするのか?

私たちオステオパスは、これらの神経−血管−筋骨格のつながりを非常に重視します。

見るべき重要ポイント

  • 後頭下部〜頸椎の熱感、硬さ、圧痛
  • OA関節(後頭骨と第一頸椎)の可動性
  • 頭蓋と硬膜のテンションバランス
  • 自律神経系の反応性(脈拍や呼吸の変化など)

触診では、皮膚の温度変化・組織の弾性・圧痛などから、頭蓋から頸部までのつながりを精密に評価します。

そこに制限が見られた場合は、頭蓋・上部頚椎のアプローチによって、迷走神経の緊張緩和血流・リンパの促進を図ります。

🧠 頭の中で起きている反応が「OA関節」や「首の奥」に現れる。

だからこそ、“首を調整することで頭痛が軽くなる”という臨床的事実があります。


■ 注意すべき片頭痛

以下のような症状を伴う頭痛は、速やかに医療機関での受診が必要です。

  • 事故などの外傷直後の頭痛
  • 発熱(感染の可能性)を伴う頭痛
  • 55歳以上で初めて発症した頭痛
  • 3歳以下の子どもに見られる頭痛

これらは、くも膜下出血、髄膜炎、腫瘍などの重大な疾患が背景にあることもあります。


■ まとめ

  • 偏頭痛は「神経・血管・自律神経」の複雑な相互反応で起きる
  • 三叉神経→頸椎→視床→迷走神経→血管拡張という“ループ”が存在
  • オステオパシーでは上部頚椎・OA関節・神経経路の調整によってこのループを断つ
  • 明らかな異常が疑われる場合は速やかな医療機関受診が必要


🔍 参考論文一覧

  1. Goadsby PJ, et al. (2002). Pathophysiology of migraine. Physiol Rev, 82(4), 1025–1071. PubMed
  2. Akerman S, Holland PR, Goadsby PJ. (2011). Diencephalic and brainstem mechanisms in migraine. Nat Rev Neurosci, 12(10), 570–584. PubMed
  3. Strassman AM, et al. (2004). Trigeminovascular convergence in the brainstem: a basis for referred pain. Headache, 44(2), 123–132. PubMed

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