- オステオパシーについて
片頭痛の原因とは?
片頭痛は、単なる頭の血流異常ではなく、神経・血管・脳の奥深いネットワークの複雑な反射で起こるものなのです。
“首を調整することで頭痛が軽くなる”ということが臨床ではよくみられますが、その事実が医学的にどのようになっているかをまとめました。

■ 片頭痛のメカニズム
① 硬膜と血管の刺激がはじまり
脳の表面には「硬膜」という膜があり、その中を通る静脈洞という血管が何らかのきっかけでうっ血・拡張すると、その周囲にある感覚神経(特に三叉神経)が刺激されます。
このとき、
- 血管が拡張
- 神経が刺激
- 炎症性の神経伝達物質(例:一酸化窒素、CGRPなど)が放出
…これにより、痛みが広がり始めます。
📘 参考論文:Goadsby PJ, et al. (2002). Pathophysiology of migraine: A disorder of sensory processing. Physiological Reviews, 82(4), 1025–1071.
② 三叉神経と頸椎のつながり
三叉神経は顔の感覚を司る重要な神経ですが、その痛みの信号は脳幹から首の奥深く、C1〜C3(第一〜第三頸椎)にまで届きます。これを三叉神経頚髄複合体といいます。
つまり、頭の奥で起きた痛みの反応が首に“降りて”きます。
③ 視床・視床下部と迷走神経が関与
首に届いた痛みの信号は、さらに脳の深部にある「視床」や「視床下部」に伝わり、
ここで自律神経系(特に副交感神経)と連動し始めます。
- 迷走神経(副交感神経の主幹)が活性化
- 延髄や脳幹との反射回路が形成
- 血管がさらに拡張 → 痛みが悪化する
ここに舌咽神経などの上行性・下行性のフィードバックが加わることで、さらに頭蓋内の血管が拡張 → 硬膜の神経が刺激される → 痛みがループするという悪循環が生まれます。
📘 参考論文:Akerman S, Holland PR, Goadsby PJ. (2011). Diencephalic and brainstem mechanisms in migraine. Nature Reviews Neuroscience, 12(10), 570–584.
■ 偏頭痛の3つの構成要素とそれに関わる迷走神経
片頭痛を構成する3つの主要因は以下のとおりです:
- 硬膜の血管拡張
- 三叉神経節の過活動
- 上部頸椎(C1〜C3)の関与
さらにこの中に、迷走神経をはじめとした副交感神経の過剰反射が加わることで、偏頭痛が悪化する可能性があります。
■ オステオパシーでどのようにアプローチするのか?
私たちオステオパスは、これらの神経−血管−筋骨格のつながりを非常に重視します。
見るべき重要ポイント
- 後頭下部〜頸椎の熱感、硬さ、圧痛
- OA関節(後頭骨と第一頸椎)の可動性
- 頭蓋と硬膜のテンションバランス
- 自律神経系の反応性(脈拍や呼吸の変化など)
触診では、皮膚の温度変化・組織の弾性・圧痛などから、頭蓋から頸部までのつながりを精密に評価します。
そこに制限が見られた場合は、頭蓋・上部頚椎のアプローチによって、迷走神経の緊張緩和や血流・リンパの促進を図ります。
🧠 頭の中で起きている反応が「OA関節」や「首の奥」に現れる。
だからこそ、“首を調整することで頭痛が軽くなる”という臨床的事実があります。
■ 注意すべき片頭痛
以下のような症状を伴う頭痛は、速やかに医療機関での受診が必要です。
- 事故などの外傷直後の頭痛
- 発熱(感染の可能性)を伴う頭痛
- 55歳以上で初めて発症した頭痛
- 3歳以下の子どもに見られる頭痛
これらは、くも膜下出血、髄膜炎、腫瘍などの重大な疾患が背景にあることもあります。
■ まとめ
- 偏頭痛は「神経・血管・自律神経」の複雑な相互反応で起きる
- 三叉神経→頸椎→視床→迷走神経→血管拡張という“ループ”が存在
- オステオパシーでは上部頚椎・OA関節・神経経路の調整によってこのループを断つ
- 明らかな異常が疑われる場合は速やかな医療機関受診が必要
🔍 参考論文一覧
- Goadsby PJ, et al. (2002). Pathophysiology of migraine. Physiol Rev, 82(4), 1025–1071. PubMed
- Akerman S, Holland PR, Goadsby PJ. (2011). Diencephalic and brainstem mechanisms in migraine. Nat Rev Neurosci, 12(10), 570–584. PubMed
- Strassman AM, et al. (2004). Trigeminovascular convergence in the brainstem: a basis for referred pain. Headache, 44(2), 123–132. PubMed
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