2025.09.11
- 森田智史ブログ
小児・思春期に多い頭痛:発達神経学から見えること
はじめに(要点)
- 思春期は脳・自律神経・ホルモン・睡眠リズムが一斉に変化する「大改装期」。これが重なると頭痛がより出やすくなります。
- 小児〜思春期の片頭痛は、脳ネットワークの成熟過程(視床−皮質・サリエンスネットワークなど)に独特の問題が起きます。
- 起立性不耐症(立ちくらみ・動悸など)や睡眠問題の併存が多く、頭痛の出やすさに関与します。
- いわゆる「大人の片頭痛」と症状像が違う点があり、病院での診断基準も小児では少し緩やかに設定されています。
1) 脳ネットワークの成熟と「頭痛が起きやすい時期」
小児〜思春期の片頭痛では、安静時fMRIで“痛み・感情・覚醒度”をつなぐネットワーク(サリエンスネットワーク、視床−皮質回路など)の結合が年齢で変化し、同世代の健常児と違う結合パターンが報告されています。これは「痛みの受け取り方・感覚の強まり」に影響し、頭痛の感受性を上げると考えられます。
ポイント
- 視床は痛み情報の“中継所”。思春期は視床と皮質(前頭葉・島・小脳など)の結合が可塑的に変わりやすい。
- こうした結合の「揺らぎ」は、発作の前段階(予兆)からすでに検出されることがあります。
2) 思春期ホルモンの影響(とくに女児)
女児では、思春期後に一次性頭痛の有病率が有意に上がることが示され、月経関連の片頭痛へと表現型が近づく“段階的な変化”が報告されています。エストロゲン変動が痛み回路や血管反応性に影響する可能性が指摘されています。
3) 自律神経の未成熟・起立性不耐症(OI)との関係
思春期は自律神経系の再編期でもあり、起立時の循環調整が不安定な子どもでは、立ちくらみ・動悸・疲労と頭痛がセットになりやすいことが知られています。OIやPOTS(起立性頻脈症候群)は小児でも珍しくなく、頭痛との併存が臨床的に重要です。
見分けのヒント
- 立つと悪化、横になると楽になる頭痛や倦怠感
- 動悸・めまい・冷え、朝に症状が強い → 小児科/循環器での評価が役立ち、頭痛マネジメントの糸口になります。
4) 睡眠・概日リズムの乱れ
思春期は生物学的に「夜型化」しやすく、睡眠不足と不規則なサイクルが頭痛のトリガーになります。小児・思春期の頭痛と睡眠障害(不眠、概日リズム障害、睡眠時無呼吸など)の併存は多数報告され、生活指導だけでも発作頻度が下がるケースがあります。
5) 小児の診断像は「大人と少し違う」
- 痛みの部位は両側性が比較的多い
- 発作時間は短め(2時間〜)でも片頭痛と診断し得る
- 後頭部痛でも片頭痛を完全に否定できない こうした“子ども特有の像”を前提に診断・指導することが推奨されます。
6) 現場で役立つ実践ポイント(発達神経学×臨床)
- 生活:睡眠・起床時刻を一定にし、朝の光曝露を増やす
- 学校:長時間の前屈位や画面作業の連続を避け、休憩で体位変換
- 体調:起立性症状が強い場合は水分・塩分・段階的運動を検討(医療機関の指導のもと)
- 教育:発作への不安を減らす“予兆の理解”と“対処手順”の共有 (上記は一般的提案で、個別評価が前提です)
7) オステオパシーの位置づけ(補完アプローチ)
薬物療法や医療機関での評価が土台です。そのうえで、
- 頭頸部・胸郭・横隔膜の可動性を整え、呼吸と自律神経の切り替えを助ける
- 体性感覚の過敏さや姿勢性負荷を減らし、痛み回路への入力を軽くする
- OIが疑われる場合は医療と連携しつつ、循環・姿勢・呼吸を総合的にサポートする といった補完的アプローチは、発達期の“揺らぎやすさ”に寄り添う実践になります(医療の代替ではありません)。
まとめ
- 思春期の頭痛は「脳ネットワークの成熟」「ホルモン変動」「自律神経・起立性機能」「睡眠/概日リズム」の四重奏で理解すると腹落ちします。
- 小児の診断像は大人と違う面があるため、“子ども基準”で評価することが重要です。
- 補完的にオステオパシーを用いる場合も、医療評価・教育・生活調整を土台に“多面的”に進めると効果的です。
参考(主要文献)
- Pubertyと小児片頭痛:有病率・表現型の変化(Frontiers Neurol 2020; Headache 2020)
- 脳ネットワーク:小児〜思春期の機能結合の差異(Neuroimage Clin 2021; J Headache Pain 2019; Brain Sci 2021; Headache Med Rev 2021)
- 起立性不耐症と頭痛(Pediatr orthostatic intolerance review 2018; Headache Currents 2010; Curr Opin Neurol 2016)
- 睡眠・概日と小児頭痛(Neurol Sci Appl Neurophysiol 2024; J Headache Pain 2019; Sleep Med 2008; 総説 2013)
- 小児片頭痛 診断と臨床の要点(Practical Neurology 2019; 2023総説)
住所〒710-0061
岡山県倉敷市浜ノ茶屋1丁目162
休診日不定休・研修日
診療時間9:00 – 15:00 / 16:20 – 20:00