- 森田智史ブログ

斜頭症の概要
赤ちゃんの頭の形が左右非対称(後頭部の片側が平ら・耳や額の位置ずれなど)になる状態を「位置的(体位性)斜頭症」と呼びます。
ほとんどは成長に伴う頭位の偏りや筋の緊張(向き癖・斜頸)に関連しており、頭蓋縫合早期癒合症(病的に縫合が早く閉じる状態)とは区別することが重要です。
診断は問診・視診・触診が基本で、必要に応じて計測や3Dスキャンを用います(CVAI=Cranial Vault Asymmetry Index、Argenta分類 など)。画像検査は早期癒合症が疑われる場合に限られます。
成長した後に考えられる影響について
斜頭症は乳児期の頭の形の問題として見られることが多いですが、改善されずに成長した場合には、頭蓋や顔面の非対称が残り、発達や日常生活にさまざまな影響を及ぼす可能性があります。
1. 顔面・頭蓋の非対称
- 眼窩の位置のずれ 頭蓋の非対称は眼窩(目の入る骨のくぼみ)の位置異常につながることがあり、左右の目の高さや大きさの違いが目立つことがあります。視覚のバランスや眼精疲労に関連する場合も報告されています。
- 顎関節や噛み合わせの異常 頭蓋の歪みが下顎骨や顎関節の発達に影響し、噛み合わせのズレ(不正咬合)を引き起こすことがあります。これにより、将来的に歯列矯正や顎関節症のリスクが高まると指摘されています。
2. 機能的な影響
・運動機能の左右差 姿勢や頸部の可動性の非対称が残ると、全身の運動発達(はいはい、歩行、スポーツ時の動き)に偏りが出ることもあります。
・咬合異常による咀嚼や発音への影響 噛み合わせの不良は食べ物の咀嚼効率を下げるだけでなく、発音の明瞭さにも影響する場合があります。
・学習や発達への影響 いくつかの研究では、斜頭症と学習障害(読み書きの困難、注意力の問題)や運動機能の発達遅延との関連が報告されています。必ずしもすべての斜頭症児に生じるわけではありませんが、軽視できない要素です。

改善しやすい「時期」とその理由(エビデンス)
頭蓋は乳児期に急速に成長するため、生後4〜6か月が調整介入の効果が最も出やすい時期です。(開始時期はそれよりも早い方が好ましい)多くのガイドラインや専門病院は、6か月前後までに評価し、必要ならヘルメット療法を開始する方針を示しています。
12か月以降は効果が落ち、1歳を過ぎると矯正効率が低下します。
施設や装具メーカーの基準では「〜18か月まで適応あり」とする記載もありますが、一般に早いほど短期間で改善します。理由は、頭蓋の成長速度が6〜9か月以降に鈍化し、骨が厚く硬くなるためです。
自然経過とヘルメットの比較
オランダのランダム化比較試験(BMJ, 2014)では、中等度の斜頭症においてヘルメット群と自然経過群で24か月時点の頭形改善に有意差なし、皮膚の刺激や不快感などの副作用はヘルメット群で多い、と報告されました。一方で、観察研究やメタ解析では重症・早期開始でヘルメット有効とする報告もあり、重症度と開始時期が鍵という見解が共通しています。
医療機関での検査方法と評価の目安
- 目視・触診・写真/3Dスキャン
- CVAIやCVA(mm差)で定量化(例:9–12mmで軽〜中等度、>12mmで重度の目安)
- Argenta分類で重症度を段階評価 これらの客観指標で経過を追い、方針(体位調整・理学療法・ヘルメット)の妥当性を検討します。
一般的な治療:ヘルメット療法のメリット/デメリット/費用など
メリット
- 重症例・早期開始で改善速度と到達度が高い傾向(開始は4〜6か月推奨)
- 装着は通常1日23時間/数か月(個別差あり)
デメリット(リスク・負担)
- 皮膚のかぶれ・発疹・におい・睡眠妨害・装着ストレスなど
- 費用負担が大きい(日本では自費)
- こまめな調整が必要
費用(日本の実勢)
- 自費診療で約30〜60万円。医療機関・装具により差があり、医療費控除対象となるケースもあります(詳細は要確認)。

オステオパシー的アプローチ
体位性斜頭症に対する従来の対応は、主に局所的な頭蓋形態の矯正(体位変換・装具療法)に焦点が当てられてきました。これに対してオステオパシーは、頭蓋の変形を単独の問題として捉えるのではなく、全身の発達過程における適応の一部として理解し、介入を行います。
1. 全体性の視点
斜頭症の背景には、単なる外的圧迫だけでなく、頸部筋群の不均衡や体幹の緊張パターン、さらには授乳・睡眠姿勢など日常習慣による全身性のバイオメカニクスの偏りが関与しています。
これらは運動発達(寝返り、腹臥位保持、座位獲得など)の遅れや非対称性と相関することが報告されています。したがって、頭蓋に限定した介入よりも、頸部・体幹を含めた全身の可動性・バランスの改善が必要とされます。
2. 神経・循環系の調和
オステオパシー施術では、骨格アライメントに加え、脳血流・静脈還流・リンパ循環の改善を意識したアプローチを行います。これにより、局所の拘縮や硬直が緩和され、組織の可塑性が高まり頭蓋の自然なリモデリングを促進すると考えられています。さらに、自律神経系の調整は情動や発達面の安定にも寄与する可能性が示唆されています。
3. 発達支援としての位置づけ
オステオパシーの目的は「頭の形の正常化」そのものではなく、赤ちゃんが健全な発達段階をスムーズに経過できる環境を整えることにあります。具体的には、
- 向き癖や頸部可動制限の解除
- 胸郭・骨盤を含む体幹の柔軟性改善
- 姿勢制御や運動パターンの左右差軽減 を通じて、頭蓋変形の改善と同時に、運動・神経発達の質を高めるサポートを目指します。
4. 家庭環境へのフィードバック
施術に加えて、ポジショニング指導(抱っこ・授乳・寝かせ方)やタミータイムの推奨を行うことで、日常生活レベルでの負荷の左右差を減らし、治療効果を持続・強化します。これにより、臨床現場と家庭環境の両面から、発達を包括的に支援することが可能となります。
このようにオステオパシーは、体位性斜頭症を「局所的な形態異常」ではなく、全身性・発達的課題の一部と捉える点に独自性があります。そのため、医師による診断(頭蓋縫合早期癒合症との鑑別)を前提に、必要に応じてヘルメット療法や理学療法と併用しながら、全体性を考慮した統合的アプローチとして位置づけることが望ましいと考えられます。

注意点(安全・見逃し防止)
- まず医師の診断:早期癒合症などの病的要因を除外
- 変形部位が2か所以上、触ると縫合の段差(隆起)、頭囲の停滞などは早期癒合症の可能性 → 形成外科/脳神経外科を早期受診
- 手術適応:早期癒合症では外科的治療が検討されます
- 開始時期:方針決定は生後4〜6か月が目安(1か月からでも可能。早ければ早いほど良い)。1歳以降は矯正効率が低下するため、評価は早めに。
- タイムライン:施設により見解差はありますが、実臨床では〜12か月(遅くとも〜18か月)を一つの目安に、早期からの介入が推奨されます。
当院での施術について(斜頭症)
- 評価:全身(頸部〜体幹)と頭形を総合評価
- 施術:やさしい手技で頸部の可動性・筋緊張・姿勢バランスを整え、抱っこ・授乳・寝かせ方を具体的に指導
- 通院頻度:はじめの数回は1〜2週に1回、以降は経過に応じて月1回(目安は1歳半まで)

参考とエビデンス(主要ソース)
- ヘルメット vs 自然経過 RCT(中等度例で差なし、副作用多い): van Wijk ら, BMJ 2014.
- 早期開始(5–6か月)で効果高い:Kluba ら, 2011;総説・病院解説。
- ヘルメット有効とする報告(重症・早期開始で):最新レビュー・メタ解析。
- AAP・小児関連:予防/管理、保護者向けFAQ(遅い開始は装着期間長く効果減)。
- 重症度評価(CVAI、CVA、Argenta)、診療の基本:レビュー。
- 日本の費用相場(自費 30〜60万円、控除可の例):各医療機関案内。
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