- 森田智史ブログ
―「休んでいるのに疲れが抜けない」その背景にあるもの―
「しっかり寝たのに疲れが残る」「常に緊張している感じが抜けない」「めまいや食欲不振が続く」
――こうした症状の背景に、副交感神経が十分に働かない状態が隠れていることがあります。検査では異常が見つからず、原因が分からないまま悩み続ける方も少なくありません。
本記事では、副交感神経とは何か、なぜ働きにくくなるのか、そして現れる身体のサインについて整理します。最後に、臨床で私たちが用いているオステオパシー的なアプローチにも触れます。

副交感神経とは ― 身体を回復モードに切り替えるスイッチ
自律神経は「交感神経」と「副交感神経」から成り、交感神経が“アクセル”、副交感神経が“ブレーキ・回復”の役割を担っています。
副交感神経が優位なとき、
- 呼吸が深まり
- 内臓の動きが整い
- 心拍が落ち着き
- 筋肉の緊張が和らぎ
- 睡眠の質が上がる
つまり、身体の修復・再生が進むモードになります。
体力の回復、免疫機能の安定、消化吸収の働きなど、多くの“生命のメンテナンス”がこの時間に行われます。

自律神経の最大の敵は「ストレス」
副交感神経が働けない最大の要因は、ストレス(刺激)の過剰な負荷です。
私たちの身体は刺激を受けると交感神経が働き、それが長時間続くとブレーキ役の副交感神経が入りづらくなります。
ストレスは「精神的だけ」ではない
ストレスというと「精神的な負担」をイメージしやすいですが、実際は大きく3つに分けられます。
① 肉体的ストレス
- 長時間の同じ姿勢
- 過去のケガ・手術痕
- 運動不足/過剰な運動
- 背骨・横隔膜の動きの制限
② 精神的ストレス
- 仕事・家庭・人間関係
- 過度な緊張や不安
- 気持ちの切り替えの難しさ
③ 環境的ストレス
- 季節の変化・低気圧
- 気温差
- 騒音・光・スマホ
- 生活リズムの乱れ
- 学校、職場
近年の研究では、自律神経のバランスは精神的負担より“環境負荷”の影響を受けやすいことが示されています。
(例:気温・気圧変化と自律神経活動の関連)
副交感神経が働きにくくなると起こる症状
副交感神経が働かない状態は、さまざまな形で現れます。
- 眠りが浅く、朝から疲れている
- 息が浅く、喉やみぞおちが締め付けられる
- 胃のムカツキ・食欲不振・便秘と下痢の繰り返し
- めまい・耳鳴り・立ちくらみ
- 動悸・息苦しさ・不安
- 筋肉の張りが取れず、肩や背中が重い
- 風邪をひきやすい、回復が遅い
これらは一見バラバラに見えますが、
背景で起きていることは 「回復モードへの切り替え不全」です。

なぜ検査では異常が出ないのか
自律神経の働きは血液検査や画像検査では直接測れません。つまり、身体の機能(働き)の乱れであり、構造(形)の異常ではないことが原因です。
このため「異常はありません」「気のせいでしょう」と言われることが多く、患者さん自身が困惑してしまうケースがよく見られます。
オステオパシーでは副交感神経を「促通する」
オステオパシーでは、
身体構造(骨・筋膜・内臓・呼吸・血流)を調整することで、副交感神経が働きやすい環境を作ることを目的とします。
臨床では特に
- 横隔膜・肋骨・背骨(胸椎)
- 後頭骨まわり(迷走神経の走行部)
- 内臓の動き・緊張
にアプローチし、「促通(働きやすくする)」という方向性で施術します。
実際、背骨や胸郭、みぞおち周囲の緊張が緩み、呼吸が深まることで眠気・内臓の動き・体温の上昇・発汗など、“副交感神経優位のサイン”が現れることは臨床でしばしば確認されます。

まとめ
- 副交感神経は身体の修復と回復を担う
- 最大の敵はストレス しかも精神的・肉体的・環境的に分かれる
- 副交感神経が働かないと 眠れない/疲れが抜けない/胃腸が弱る/不安定さが増す
- 検査では異常が出にくい
- オステオパシーでは 身体構造を整え、副交感神経が働く環境を促通する
「休んでいるはずなのに、回復しない」
――それは心ではなく、身体の機能の問題かもしれません。焦らず、じっくり整えていくことが大切です。
参考文献・関連研究
- Kanazawa, M. et al. Involvement of autonomic nervous system in functional gastrointestinal disorders, J Neurogastroenterol Motil, 2011.
- Thayer, J.F. et al. A meta-analysis of heart rate variability and neuroimaging studies: implications for heart-brain communication, Neurosci Biobehav Rev, 2012.
- Porges, S.W. The Polyvagal Theory: Neurophysiological Foundations of Emotions, 2011.
- Yasuma, F. Respiratory sinus arrhythmia and autonomic nervous system, Clin Auton Res, 2004.
- Tracey, K.J. The inflammatory reflex, Nature, 2002.
- WHO Benchmark for Training in Osteopathy, 2010.
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