2025.12.25
  • 森田智史ブログ
副交感神経が働かない身体のサインとは?

―「休んでいるのに疲れが抜けない」その背景にあるもの―

「しっかり寝たのに疲れが残る」「常に緊張している感じが抜けない」「めまいや食欲不振が続く」

――こうした症状の背景に、副交感神経が十分に働かない状態が隠れていることがあります。検査では異常が見つからず、原因が分からないまま悩み続ける方も少なくありません。

本記事では、副交感神経とは何か、なぜ働きにくくなるのか、そして現れる身体のサインについて整理します。最後に、臨床で私たちが用いているオステオパシー的なアプローチにも触れます。


副交感神経とは ― 身体を回復モードに切り替えるスイッチ

自律神経は「交感神経」と「副交感神経」から成り、交感神経が“アクセル”、副交感神経が“ブレーキ・回復”の役割を担っています。

副交感神経が優位なとき、

  • 呼吸が深まり
  • 内臓の動きが整い
  • 心拍が落ち着き
  • 筋肉の緊張が和らぎ
  • 睡眠の質が上がる

つまり、身体の修復・再生が進むモードになります。

体力の回復、免疫機能の安定、消化吸収の働きなど、多くの“生命のメンテナンス”がこの時間に行われます。


自律神経の最大の敵は「ストレス」

副交感神経が働けない最大の要因は、ストレス(刺激)の過剰な負荷です。

私たちの身体は刺激を受けると交感神経が働き、それが長時間続くとブレーキ役の副交感神経が入りづらくなります


ストレスは「精神的だけ」ではない

ストレスというと「精神的な負担」をイメージしやすいですが、実際は大きく3つに分けられます。

① 肉体的ストレス

  • 長時間の同じ姿勢
  • 過去のケガ・手術痕
  • 運動不足/過剰な運動
  • 背骨・横隔膜の動きの制限

② 精神的ストレス

  • 仕事・家庭・人間関係
  • 過度な緊張や不安
  • 気持ちの切り替えの難しさ

③ 環境的ストレス

  • 季節の変化・低気圧
  • 気温差
  • 騒音・光・スマホ
  • 生活リズムの乱れ
  • 学校、職場

近年の研究では、自律神経のバランスは精神的負担より“環境負荷”の影響を受けやすいことが示されています。

例:気温・気圧変化と自律神経活動の関連


副交感神経が働きにくくなると起こる症状

副交感神経が働かない状態は、さまざまな形で現れます。

  • 眠りが浅く、朝から疲れている
  • 息が浅く、喉やみぞおちが締め付けられる
  • 胃のムカツキ・食欲不振・便秘と下痢の繰り返し
  • めまい・耳鳴り・立ちくらみ
  • 動悸・息苦しさ・不安
  • 筋肉の張りが取れず、肩や背中が重い
  • 風邪をひきやすい、回復が遅い

これらは一見バラバラに見えますが、

背景で起きていることは 「回復モードへの切り替え不全」です。


なぜ検査では異常が出ないのか

自律神経の働きは血液検査や画像検査では直接測れません。つまり、身体の機能(働き)の乱れであり、構造(形)の異常ではないことが原因です。

このため「異常はありません」「気のせいでしょう」と言われることが多く、患者さん自身が困惑してしまうケースがよく見られます。


オステオパシーでは副交感神経を「促通する」

オステオパシーでは、

身体構造(骨・筋膜・内臓・呼吸・血流)を調整することで、副交感神経が働きやすい環境を作ることを目的とします。

臨床では特に

  • 横隔膜・肋骨・背骨(胸椎)
  • 後頭骨まわり(迷走神経の走行部)
  • 内臓の動き・緊張

にアプローチし、「促通(働きやすくする)」という方向性で施術します。

実際、背骨や胸郭、みぞおち周囲の緊張が緩み、呼吸が深まることで眠気・内臓の動き・体温の上昇・発汗など、“副交感神経優位のサイン”が現れることは臨床でしばしば確認されます。


まとめ

  • 副交感神経は身体の修復と回復を担う
  • 最大の敵はストレス  しかも精神的・肉体的・環境的に分かれる
  • 副交感神経が働かないと  眠れない/疲れが抜けない/胃腸が弱る/不安定さが増す
  • 検査では異常が出にくい
  • オステオパシーでは  身体構造を整え、副交感神経が働く環境を促通する

「休んでいるはずなのに、回復しない」

――それは心ではなく、身体の機能の問題かもしれません。焦らず、じっくり整えていくことが大切です。


参考文献・関連研究

  • Kanazawa, M. et al. Involvement of autonomic nervous system in functional gastrointestinal disorders, J Neurogastroenterol Motil, 2011.
  • Thayer, J.F. et al. A meta-analysis of heart rate variability and neuroimaging studies: implications for heart-brain communication, Neurosci Biobehav Rev, 2012.
  • Porges, S.W. The Polyvagal Theory: Neurophysiological Foundations of Emotions, 2011.
  • Yasuma, F. Respiratory sinus arrhythmia and autonomic nervous system, Clin Auton Res, 2004.
  • Tracey, K.J. The inflammatory reflex, Nature, 2002.
  • WHO Benchmark for Training in Osteopathy, 2010.


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