- 近藤健心ブログ
― 症状別に“原因の整理”と“回復の道筋”を示す解説 ―
「腕を上げるとズキッと痛む」「背中に手が回らない(結帯動作がつらい)」という肩の痛みは、日常の動作(着替え・洗髪・車のシートベルトなど)を一気に不自由にします。
このタイプの症状は、
いわゆる凍結肩(フローズンショルダー)、
肩峰下の痛み(肩インピンジメントに代表される状態)、
腱板(ローテーターカフ)の障害など、複数の病態が同じように見えることがあります。
1. 主な症状
肩の痛みが強いと、次のようなサインが出やすくなります。
▼ 動きで痛い(特に上げる・後ろへ回す)
- 腕を上げる動き(バンザイ)がつらい
- 背中に手を回す動きが難しい(結帯動作)
- 動かす角度によって痛みが強くなる(“ある範囲だけ痛い” など)
▼ 夜間痛(寝ている時に痛む)
- 横になるとズキズキして目が覚める
- 寝返りで痛みが出る
(凍結肩でも、肩峰下の痛みでも起こりえます)
2. 原因(よくある3パターン)
「上がらない肩」には、よくある原因の型があります。
① 凍結肩(Frozen shoulder / Adhesive capsulitis)
肩が痛くて動かしにくい状態から始まり、
次第に**固さ(可動域制限)**が前に出てくることがあります。
経過は“段階(freezing/frozen/thawing)”として説明されることが多いです。
② 肩峰下の痛み(いわゆる「肩インピンジメント」など)
腕を上げる動作で痛みが出やすく、夜間に痛むこともあります。
症状が似る原因が複数あるため、評価で整理していくことが大切です。
③ 腱板(ローテーターカフ)の炎症・負担(腱板関連痛/腱板障害)
腱板は肩の安定と動きに深く関わり、負担が続くと「上げると痛い」「力が入りにくい」につながることがあります。
腱板障害については、評価と保存療法の指針がガイドラインとして整理されています。
3. なりやすい傾向
医学的には、次のような背景が重なると「痛み→かばう→動かさない→さらに動かしにくい」という流れが起こりやすくなります。
- 痛みが出てから、無意識に肩を動かさない期間が続いた
- 腕を上げる作業が増えた/急に負荷が上がった
- 夜間痛が続き、睡眠の質が落ちて回復力が落ちている
(凍結肩の段階的経過や、肩峰下痛の特徴として整理されています)
4. 病院での治療
肩の病態により選択肢は変わりますが、一般に“保存療法(手術以外)”が中心です。
- 凍結肩:病期(痛みが強い時期/固さが前の時期など)を見ながら、疼痛管理+理学療法などを段階的に進める考え方が示されています。PMC+2日本理学療法士協会+2
- 腱板障害:評価(問診・所見・必要に応じ画像)を踏まえた上で、保存療法とリハビリの指針がまとめられています。日本理学療法士協会+1
また、感染が疑われる関節、外傷後の脱臼が戻っていない可能性など、緊急性が高いケースでは当日紹介レベルの“レッドフラッグ”が提示されています。
5. オステオパシー的アプローチ
肩が上がらない・後ろに手が回らない時、肩だけに原因があるとは限りません。
実際には、肩甲骨(けんこうこつ)・胸(胸郭)・首などの動きが落ち、結果として肩に負担が集まっているケースが多いです。
森田治療室では、痛いところを強く押すのではなく、肩が無理をしている理由を整理して、負担を分散させる方針で進めます。
STEP1:まず安全確認と「今どの段階か」を見ます
最初に確認するのは2つです。
- 危険なサインがないか
転倒直後の強い痛み、熱っぽさ・赤み・腫れ、急な脱力や強いしびれがある場合は、まず医療機関での評価が優先です。 - 今は“痛みが強い時期”か、“固さが前に出ている時期”か
凍結肩(フローズンショルダー)は経過の中で段階があり、痛みが強い時期に無理をすると悪化しやすいことがあります。
ここを見誤らないことが、回復の近道になります。
STEP2:「肩に負担が集まる理由」を全体から探します
肩を上げるには、肩関節だけでなく
- 肩甲骨がスムーズに動く
- 胸(肋骨・背中)がしなやかに動く
- 首〜背中のつながりが邪魔をしない
この“チームプレー”が必要です。
このどこかが固いと、肩関節だけが頑張ることになり、痛みが出やすくなります。
評価では例えば、
- 肩甲骨がついてこない(肩だけで上げようとしている)
- 胸が固くて、上半身が反れない
- 首や鎖骨まわりが硬く、肩が前に巻き込む
などを整理します。
STEP3:施術は「悪化させない順番」で組み立てます
痛みがある肩は、“頑張らせるほど固まる”ことがあります。
そこで、次の順番を大事にします。
- 痛みで固まっている反応を落ち着かせる
痛みが強い時期は、まず過敏になった反応を落ち着かせて、回復しやすい状態に整えます。 - 肩甲骨・胸の動きを戻して、肩の負担を減らす
肩が上がらない人ほど、肩甲骨や胸の動きが小さくなり、肩関節に負担が集中しやすいです。
胸郭(背中・肋骨)へのアプローチが肩の動きや痛みに影響する報告もあります。 - 肩関節は“今の許容量”で少しずつ可動域を戻す
「痛いのに無理に動かす」でも、「怖くて全く動かさない」でも長引きやすい。
今の状態に合った範囲で、段階的に戻していきます(特に凍結肩は段階の見極めが重要です)。 - 腱板(ローテーターカフ)関連が疑われる場合は、負担の偏りを減らす
腱板の問題は「肩の使い方のクセ」や「負荷のかかり方」が影響します。
必要に応じて、医療側の評価・保存療法の流れも踏まえながら進めます。
森田治療室で大切にしていること
- 目標は「その場で無理に上げる」ではなく、
- 肩甲骨+胸+肩が一緒に動ける状態を取り戻し、再発しにくい体の使い方に戻すことです。
まとめ
- 肩が「上がらない」「動かすと痛い」「後ろに手が回らない」という症状は、凍結肩(フローズンショルダー)、肩峰下の痛み(いわゆるインピンジメント)、腱板(ローテーターカフ)関連など、いくつかの状態で起こりえます。
- 大切なのは、肩そのものだけでなく、肩甲骨・胸郭・頚部・呼吸まで含めて「なぜ肩に負担が集まったのか」を整理することです。
- 森田治療室では、
STEP1:安全確認と見立て → STEP2:負担が集中しているポイントの評価 → STEP3:悪化させずに回復方向へ整える
という順番で進め、痛みの強い時期は無理に動かさず、段階に合わせて回復をサポートします。 - なお、強い外傷直後の激痛、発熱・赤み・強い腫れ、急な脱力や強いしびれがある場合は、まず医療機関での評価が優先です。
主に参考となる文献
Desmeules, F., et al. (2025). Rotator Cuff Tendinopathy: Diagnosis, Nonsurgical Medical Care, and Rehabilitation (JOSPT CPG).Kelley, M. J., et al. (2013). Shoulder Pain and Mobility Deficits: Adhesive Capsulitis (JOSPT CPG). 日本理学療法士協会
Orthopaedic Section / APTA. (2017). Adhesive Capsulitis Decision Tree and Components. APTA Orthopedics
Kirker, K., et al. (2023). Manual therapy and exercise for adhesive capsulitis: systematic review & meta-analysis.PMC
Strunce, J. B., et al. (2009). Thoracic spine and rib manipulation: immediate effects on shoulder pain and motion.PMC
Robles-Pérez, R., et al. (2025). Thoracic manual therapy ± exercise for subacromial pain syndrome: systematic review. MDPI
住所〒710-0061
岡山県倉敷市浜ノ茶屋1丁目162
休診日不定休・研修日