- 森田智史ブログ
原因は前足です。
「最近、後ろ足をかばって歩くようになった」
「立ち上がる時に痛そう」
「散歩の途中で座り込むことが増えた」
犬のオステオパシーでも、このようなご相談は非常に多くあります。
もちろん股関節形成不全や前十字靱帯損傷、変形性関節症など、後ろ足そのものに原因があることは少なくありません。
しかし、実際には痛みが出ている場所と、本当の原因が一致しないことも多くあります。
オステオパシーでは、「なぜその場所に負担が集まったのか」という視点から全身を評価していきます。
犬は「前足重心」の動物です
人は二足歩行ですが、犬は四足歩行です。
一見すると体重は4本の足へ均等にかかっているように見えますが、実際は違います。
歩行解析の研究では、
前足:約60%
後ろ足:約40%
の割合で体重を支えていることが示されています。
つまり犬は、前足で身体を支えながら歩いている動物なのです。
肩甲骨は犬の重要なショックアブソーバー
犬の肩甲骨は、人間のように鎖骨で骨同士が固定されていません。
筋肉だけで胸郭につながる特殊な構造をしています。
この構造のおかげで、
・着地時の衝撃吸収
・歩幅の確保
・体幹のバランス調整
という重要な役割を担っています。
つまり肩甲骨は、車でいうサスペンションのような働きをしています。
肩甲骨が硬くなると何が起こるのか?
肩甲骨の動きが悪くなると、
前足で吸収するはずだった衝撃を十分に吸収できなくなります。
すると身体は別の場所で補おうとします。
その結果、
・後ろ足で蹴る力が強くなる
・骨盤への負担が増える
・腰の筋肉が過剰に働く
・左右どちらかの後ろ足へ荷重が偏る
といった代償運動が起こります。
歩行解析の研究でも、前肢の機能障害が後肢の運動パターンに影響し、身体全体で代償が起こることが報告されています。
人で例えると分かりやすい話
例えば、
右足首を捻挫した人がいたとします。
右足が痛いため、
左足ばかり使って歩くようになります。
すると今度は、
・左膝
・左股関節
・左腰
まで痛くなってしまうことがあります。
後から痛くなった左膝は、
原因ではなく結果です。
犬でも同じことが起こります。
後ろ足が痛いからといって、
必ずしも後ろ足だけが悪いとは限らないのです。
オステオパシーでは全身を評価します
当院では、
後ろ足だけではなく
・肩甲骨
・前足
・首
・胸郭
・背骨
・横隔膜
・骨盤
・頭蓋
まで確認します。
身体はすべてつながっています。
痛みがある場所だけを治療するのではなく、
「なぜそこへ負担が集中したのか」
を見つけることが重要だと考えています。
シニア犬ほど全身評価が大切です
年齢を重ねると、
筋力低下だけでなく、
関節の可動域や柔軟性も少しずつ低下していきます。
その結果、
肩甲骨の小さな硬さが、
数か月から数年かけて後ろ足への負担となって現れることもあります。
「年だから仕方ない」
と思われる症状の中にも、
身体の使い方を見直すことで改善が期待できるケースがあります。
まとめ
後ろ足の痛みは、
必ずしも後ろ足だけが原因ではありません。
犬は前足重心の動物であり、
肩甲骨は身体全体の動きを支える重要な役割を担っています。
だからこそ、
痛い場所だけを見るのではなく、
全身のつながりを評価することが大切です。
オステオパシーでは、身体全体のバランスから負担の原因を探し、一頭一頭に合わせた施術を行っています。
参考文献
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- Gillette RL, Angle TC. Recent developments in canine locomotor analysis: a review. Veterinary Journal. 2008.
- Fischer MS, Lilje KE. Dogs in Motion. VDH Service GmbH, Dortmund.
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- Voss K, et al. Ground reaction forces in dogs with lameness and compensatory gait adaptations. Veterinary Surgery.