- 森田智史ブログ
自律神経シリーズ Vol.004
「心臓は異常ないと言われたのに、ドキドキが止まらない…」
動悸は”神経が身体を守ろうと反応しているサイン”かもしれません
突然、胸がドキドキする。
脈が速くなる。
胸が苦しくなり、「心臓の病気ではないか」と不安になる。
動悸は多くの方が経験する症状ですが、その原因は一つではありません。
心臓の病気が原因の場合もあれば、ストレスや睡眠不足、自律神経の乱れによって起こることもあります。
まず大切なのは、循環器内科などで重大な病気がないことを確認することです。
そのうえで異常が見つからない場合には、脳や自律神経の働きが関係している可能性があります。
今回は、神経科学の視点から動悸が起こる仕組みと、オステオパシーでどのように身体を評価しているのかをご紹介します。

動悸にはどのような種類があるの?
動悸といっても感じ方は人それぞれです。
例えば、
心臓が速く打つ
「ドキドキが止まらない」
「脈が速い」
強く打つ
「胸を叩かれているように感じる」
「鼓動が強く響く」
脈が飛ぶ感じ
「一瞬止まったように感じる」
「ドクンと大きく打つ」
これらの症状は、不整脈だけでなく、自律神経の影響でも起こることがあります。
動悸が起こりやすい場面
動悸は、身体や脳が「危険かもしれない」と感じたときに起こりやすくなります。
代表的な場面として、
① ストレスが続いているとき
仕事や人間関係、育児などで交感神経が働き続けると、心拍数が上がりやすくなります。
② 睡眠不足や疲労
睡眠不足では自律神経のバランスが崩れ、身体は興奮しやすい状態になります。
③ 緊張する場面
会議、人前での発表、歯科治療、美容室などでは、一時的に交感神経が優位になります。
④ カフェインやアルコール
コーヒーやエナジードリンク、飲酒なども心拍数へ影響することがあります。
動悸はなぜ起こるのでしょうか?
心拍数は、自律神経によって細かく調節されています。
交感神経
活動するときに働きます。
- 心拍数を増やす
- 心臓の収縮力を高める
- 血圧を上げる
副交感神経(迷走神経)
休息するときに働きます。
- 心拍数を下げる
- 身体を回復させる
このバランスが崩れることで、動悸を感じやすくなることがあります。
神経科学からみた動悸
① 扁桃体(Amygdala)
扁桃体は危険を察知する中枢です。
ストレスや不安が続くと、危険ではない刺激にも敏感に反応しやすくなります。
② 青斑核(Locus Coeruleus)
青斑核はノルアドレナリンを分泌する中枢です。
ここが興奮すると、
- 心拍数の増加
- 発汗
- 呼吸が速くなる
- 筋肉の緊張
などが起こります。
動悸を感じる方では、この反応が強くなっていることがあります。
③ 前頭前野
前頭前野は、
「大丈夫」
「危険ではない」
と判断するブレーキ役です。
しかし慢性的なストレスや睡眠不足では、この働きが低下すると考えられています。
④ HPA軸
ストレスが続くと、
視床下部
↓
下垂体
↓
副腎
というHPA軸が活性化し、コルチゾールなどのストレスホルモンが増加します。
これにより、自律神経が興奮しやすい状態が続くことがあります。
「動悸が気になる」がさらに動悸を強くする理由
一度強い動悸を経験すると、
「また動悸が出た」
「心臓がおかしいのでは」
と不安になります。
すると脳は心拍へ注意を向け続けます。
健康な人でも心拍は常に変化していますが、
その変化を過剰に感じることで、
さらに交感神経が興奮し、
動悸が強くなるという悪循環が起こることがあります。
オステオパシーではどのように考えるのか
オステオパシーでは、動悸そのものを治療するものではありません。
まずは医療機関で心疾患や不整脈などがないことを確認することが重要です。
そのうえで、
身体全体を一つのユニットとして評価し、
神経が働きやすい身体環境を整えることを目的に施術を行います。
特に評価することが多いのは、
- 上部頸椎
- 胸椎(T1〜T4)
- 胸郭
- 横隔膜
- 呼吸
- 頭蓋
- 筋膜の緊張
- 循環・リンパ
などです。
呼吸や胸郭の動きが改善し、身体の緊張が和らぐことで、神経が働きやすい状態を目指します。
※オステオパシーは心疾患や不整脈を治療するものではありません。医療機関での診断・治療を受けたうえで、身体機能の改善をサポートすることを目的としています。
こんな症状がある場合は早めに受診しましょう
動悸がある場合でも、次のような症状を伴うときは早めに医療機関を受診してください。
- 胸の強い痛み
- 失神
- 意識が遠のく
- 強い息苦しさ
- 冷や汗
- 運動中の動悸
- 家族に突然死の既往がある
これらは心臓の病気が隠れている可能性があります。
日常生活でできること
神経が過敏な状態では、
- 睡眠をしっかり取る
- カフェインを摂り過ぎない
- 深い呼吸を意識する
- 軽い運動を取り入れる
- 長時間のストレスを避ける
ことも、自律神経の回復を支える大切な要素です。
まとめ
動悸は、必ずしも心臓の病気だけが原因ではありません。
検査で異常が見つからない場合には、脳・自律神経・ストレス反応が関係していることがあります。
まずは医療機関で適切な診断を受け、そのうえで身体全体の緊張や呼吸、姿勢などを見直すことも、回復を支える一つの方法になる可能性があります。
リンク
Vol.001
喉のつかえ感・息苦しさ・動悸・不安感…
その不調、自律神経の緊張が関係しているかもしれません
Vol.002
パニック障害とは?
「また発作が起こるかもしれない…」
Vol.003
自律神経失調症とは?
検査では異常がない。でも体調が戻らない…
Vol.004
動悸とは?
心臓は異常ないと言われたのに、ドキドキが止まらない…
Vol.005
息苦しさとは?
酸素は足りていると言われたのに、息が吸えない…
Vol.006
めまいとは?
検査では異常がない。でも、ふわふわ・グルグルする…
Vol.007
不眠とは?
「眠れないのは脳が休めていないからかもしれません」
Vol.008
頭痛とは?
「頭痛は脳だけでなく、首や顎が関係していることもあります」
Vol.009
首こり・肩こり
「筋肉を揉んでも、すぐに戻るのはなぜ?」
Vol.010
食いしばり・歯ぎしり・顎関節とは?
「顎は、全身の影響を受けながらバランスを調節しています」
参考文献
- Guyton AC, Hall JE. Textbook of Medical Physiology.
- Benarroch EE. Central Autonomic Network. Mayo Clinic Proceedings.
- Thayer JF, Lane RD. Claude Bernard and the heart-brain connection. Neuroscience & Biobehavioral Reviews.
- Porges SW. The Polyvagal Theory.
- Johnson JA, et al. Osteopathic manipulative treatment and autonomic nervous system: A narrative review.