- 森田智史ブログ
自律神経シリーズ Vol.005
「酸素は足りていると言われたのに、息が吸えない…」
息苦しさは”呼吸をコントロールする神経が過敏になっている状態”かもしれません
「深呼吸をしても息が吸えない。」
「胸が締め付けられる感じがする。」
「息が詰まりそうで不安になる。」
このような息苦しさで病院を受診しても、肺や心臓には異常が見つからないことがあります。
もちろん、まずは呼吸器や循環器などの重大な病気がないことを確認することが最も重要です。
そのうえで異常が見つからない場合、首から胸にかけての交感神経系の過緊張や、呼吸パターンの変化が関係していることがあります。
今回は、神経科学の視点から息苦しさが起こる仕組みと、オステオパシーでどのように身体を評価しているのかをご紹介します。

息苦しさにはどのような種類があるのでしょうか?
息苦しさといっても感じ方はさまざまです。
例えば、
- 深呼吸ができない
- 空気が最後まで入らない感じがする
- 胸が締め付けられる
- 喉が詰まる感じがする
- 息を何度も吸い直してしまう
- 呼吸を意識しないと苦しい
このような症状は、肺だけではなく、自律神経や呼吸をコントロールする神経の影響でも起こることがあります。
息苦しくなりやすい場面
次のような場面で症状が出やすい方が多くみられます。
① ストレスや疲労が続いているとき
交感神経が優位な状態が続くことで、呼吸は浅く速くなりやすくなります。
② 緊張する場面
仕事中、会議、人前、美容室、歯科医院などでは、一時的に呼吸が浅くなることがあります。
③ パニック発作や強い不安
不安が強くなると、無意識に何度も深呼吸を繰り返し、「息が吸えない」という感覚につながることがあります。
④ 姿勢が崩れているとき
猫背や長時間のデスクワークでは胸郭や横隔膜が動きにくくなり、呼吸効率が低下します。
息苦しさはなぜ起こるのでしょうか?
呼吸は肺だけで行われているわけではありません。
脳幹にある呼吸中枢が、
- 血液中の酸素
- 二酸化炭素
- 呼吸筋
- 自律神経
などの情報を常に受け取りながら調節しています。
また、気管や気管支の周囲には交感神経と副交感神経が分布しており、呼吸のしやすさにも関与しています。
ストレスが続くと、首から胸部へ続く交感神経幹や頸胸移行部(星状神経節周囲)が過緊張となり、喉や胸部周囲の筋緊張が高まりやすくなります。
その結果、
- 喉が締め付けられる感じ
- 深く吸えない感じ
- 胸が広がらない感じ
として感じることがあります。
神経科学からみた息苦しさ
① 扁桃体(Amygdala)
ストレスや不安を感じると扁桃体が活性化し、交感神経を刺激します。
その結果、呼吸は浅く速くなります。
② 呼吸中枢(脳幹)
脳幹は呼吸のリズムを自動的に調節しています。
ストレス状態では、この呼吸リズムが乱れやすくなります。
③ 交感神経系の過緊張
頸部から胸部へ走る交感神経幹や星状神経節周囲の緊張が高まることで、
呼吸補助筋や喉周囲の筋肉が硬くなり、
「息を吸いにくい」
という感覚につながることがあります。
④ 呼吸パターンの変化
不安やストレスでは、
胸だけで呼吸する「胸式呼吸」が続きやすくなります。
その結果、
横隔膜が十分に働かず、
さらに息苦しさを感じやすくなることがあります。
呼吸リハビリテーションや呼吸再教育は、呼吸パターンの改善に役立つことが報告されています。(サイエンスダイレクト)
オステオパシーではどのように考えるのか
オステオパシーでは、息苦しさそのものを治療するものではありません。
まずは医療機関で肺や心臓などに異常がないことを確認することが重要です。
そのうえで、
神経が働きやすい身体環境を整えること
を目的に身体全体を評価します。
特に確認することが多いのは、
- 上部頸椎
- 星状神経節周囲
- 交感神経幹周囲
- 胸椎(T1〜T4)
- 胸郭
- 横隔膜
- 呼吸筋
- 頭蓋
などです。
近年のレビューでは、オステオパシーの手技が自律神経機能や呼吸機能に良い影響を与える可能性が示されていますが、効果には個人差があり、今後さらに研究が必要とされています。(PubMed)
呼吸エクササイズも大切です
施術だけでなく、自宅で呼吸を整えることも重要です。
おすすめは、
鼻から4秒吸う
↓
口から6〜8秒かけてゆっくり吐く
これを5〜10回繰り返します。
ポイントは、
「吸うこと」よりも
しっかり吐くこと。
吐く時間を長くすることで、副交感神経が働きやすくなり、身体の緊張が和らぎやすくなります。
こんな症状がある場合はすぐ受診しましょう
息苦しさがある場合でも、
- 胸の強い痛み
- 安静でも強い呼吸困難
- 唇が紫色になる
- 高熱
- 血痰
- 意識障害
などがある場合は、早急に医療機関を受診してください。
まとめ
息苦しさは、肺や心臓だけが原因とは限りません。
検査で異常が見つからない場合には、
脳・自律神経・呼吸パターン・頸部から胸部にかけての交感神経系の過緊張が関係していることがあります。
まずは医療機関で適切な診断を受け、そのうえで呼吸や姿勢、身体全体の緊張を見直すことも、回復を支える一つの方法になる可能性があります。
自律神経シリーズ バックナンバー
Vol.001
喉のつかえ感・息苦しさ・動悸・不安感…
その不調、自律神経の緊張が関係しているかもしれません
Vol.002
パニック障害とは?
「また発作が起こるかもしれない…」
Vol.003
自律神経失調症とは?
検査では異常がない。でも体調が戻らない…
Vol.004
動悸とは?
心臓は異常ないと言われたのに、ドキドキが止まらない…
Vol.005
息苦しさとは?
酸素は足りていると言われたのに、息が吸えない…
Vol.006
めまいとは?
検査では異常がない。でも、ふわふわ・グルグルする…
Vol.007
不眠とは?
「眠れないのは脳が休めていないからかもしれません」
Vol.008
頭痛とは?
「頭痛は脳だけでなく、首や顎が関係していることもあります」
Vol.009
首こり・肩こり
「筋肉を揉んでも、すぐに戻るのはなぜ?」
Vol.010
食いしばり・歯ぎしり・顎関節とは?
「顎は、全身の影響を受けながらバランスを調節しています」
参考文献
- Guyton AC, Hall JE. Textbook of Medical Physiology.
- Benarroch EE. The Central Autonomic Network.
- Porges SW. The Polyvagal Theory.
- Stępnik J, et al. Effect of manual osteopathic techniques on the autonomic nervous system, respiratory system function and head-cervical-shoulder complex: A systematic review. Front Med. 2024. (PubMed)
- Benjamin JG, et al. The effect of osteopathic manual therapy with breathing retraining on cardiac autonomic measures and breathing symptoms. J Bodyw Mov Ther. 2020. (PubMed)