- 森田智史ブログ
自律神経シリーズ Vol.006
「検査では異常がない。でも、ふわふわ・グルグルする…」
めまいは”平衡感覚をコントロールするシステム”のバランスが乱れている状態かもしれません
「天井が回るように感じる。」
「身体がふわふわ浮いている感じがする。」
「歩くとフラフラする。」
めまいは非常に多くの方が経験する症状ですが、その原因は一つではありません。
耳の病気、脳の病気、薬の影響、血圧の変化など、さまざまな原因があります。
まず大切なのは、耳鼻咽喉科や脳神経外科などで重大な病気がないことを確認することです。
そのうえで検査に異常が見つからない場合には、内耳・脳・首から送られる情報のバランスや、身体全体の循環環境が関係している可能性があります。
今回は、神経科学と解剖学の視点から、めまいが起こる仕組みとオステオパシーの考え方をご紹介します。

めまいにはどのような種類があるのでしょうか?
めまいは大きく3つに分けられます。
回転性めまい
「景色がグルグル回る」
内耳(前庭・三半規管)の異常で起こることが多くみられます。
浮動性めまい
「身体がふわふわする」
「船に乗っている感じ」
自律神経や頸部、脳の情報処理が関係することがあります。
平衡障害
「歩くとフラつく」
「真っすぐ歩けない」
小脳や前庭系、筋力低下などが関係することがあります。
めまいはなぜ起こるのでしょうか?
私たちは身体の位置を、
- 内耳(前庭・三半規管)
- 目(視覚)
- 首の深部感覚(固有受容感覚)
この3つの情報を脳で統合することで認識しています。
これらの情報は、
前庭神経
↓
脳幹
↓
小脳
へ送られます。
どこか一つでも情報が乱れると、
脳は身体の位置を正確に判断できなくなり、
「回る」
「揺れる」
「フワフワする」
というめまいとして感じることがあります。
内耳ではリンパ液が重要な役割をしています
内耳には、
内リンパ液(Endolymph)
外リンパ液(Perilymph)
という2種類の液体があります。
頭を動かすと、この液体が流れ、
前庭や三半規管の感覚細胞が刺激されます。
その刺激が神経を通って脳へ伝わることで、
私たちは身体の傾きや回転を感じています。
例えばメニエール病では、
内リンパ液が過剰に貯留する内リンパ水腫が原因と考えられています。
つまり、
リンパ様液体の循環は平衡感覚にとても重要なのです。
首が硬くなると、なぜめまいが起こるのでしょうか?
首には、
- 椎骨動脈
- 内頸静脈
- 深頸リンパ節
- 深頸筋群
- 後頭下筋群
- 頸神経
など、多くの重要な組織があります。
首や後頭部の筋肉が硬くなると、
静脈やリンパの流れが低下し、
頭部周囲の循環環境へ影響する可能性があります。
また、
後頭下筋群には身体の位置を感じる**固有受容器(筋紡錘)**が非常に多く存在しています。
この情報が乱れることで、
内耳や目から送られる情報とのズレが生じ、
めまいを感じることがあります。
このような状態は**頸性めまい(Cervicogenic Dizziness)**として研究されています。
神経科学からみためまい
① 前庭(Vestibular System)
身体の回転や傾きを感じるセンサーです。
内耳から脳幹へ情報を送っています。
② 脳幹
前庭からの情報を整理し、
眼球運動や姿勢をコントロールしています。
③ 小脳
姿勢やバランスを調整する中枢です。
前庭・視覚・首からの情報を統合しています。
④ 自律神経
ストレスや不安が続くと、
交感神経が優位になり、
呼吸や血流が変化します。
その結果、
ふわふわするめまいや浮遊感が強くなることがあります。
オステオパシーではどのように考えるのか
オステオパシーでは、
めまいそのものを治療するものではありません。
まずは耳鼻咽喉科や脳神経外科などで重大な病気がないことを確認することが重要です。
そのうえで、
身体全体を一つのユニットとして評価し、
神経・血液・リンパ・呼吸・筋膜のバランスを整えることを目的に施術を行います。
特に評価することが多いのは、
- 上部頸椎
- 後頭下筋群
- 頭蓋底
- 側頭骨
- 頸部リンパ・静脈還流
- 胸郭
- 横隔膜
- 呼吸
- 全身の筋膜
などです。
首や胸郭の可動性が改善し、
呼吸や静脈・リンパの循環が円滑になることで、
身体が本来の機能を発揮しやすい状態を目指します。
※オステオパシーは、めまいそのものを治療するものではなく、身体機能の改善を通して回復をサポートすることを目的としています。
日常生活で気を付けたいこと
めまいが続く方は、
- 睡眠不足
- 強いストレス
- 長時間のスマートフォン操作
- 猫背などの不良姿勢
- 首や肩の緊張
- 運動不足
などが症状に影響することがあります。
また、
軽い首や肩のストレッチや、
深い呼吸を意識することも、
身体の緊張を和らげる助けになります。
こんな症状がある場合は早めに受診しましょう
次のような症状がある場合は、
速やかに医療機関を受診してください。
- 激しい頭痛を伴うめまい
- 手足のしびれや麻痺
- ろれつが回らない
- 意識障害
- 激しい難聴
- 繰り返す嘔吐
これらは脳卒中など重大な病気が隠れている可能性があります。
まとめ
めまいは耳だけの問題ではありません。
内耳・脳幹・小脳・首の深部感覚・自律神経が連携して働くことで、私たちは身体のバランスを保っています。
また、オステオパシーでは、頸部の筋緊張や頭部周囲の静脈・リンパ還流、呼吸や胸郭の動きなど、身体全体の循環環境も評価の対象とします。
まずは医療機関で適切な診断を受け、そのうえで身体全体の状態を見直すことも、回復を支える一つの方法になる可能性があります。
自律神経シリーズ バックナンバー
Vol.001
喉のつかえ感・息苦しさ・動悸・不安感…
その不調、自律神経の緊張が関係しているかもしれません
Vol.002
パニック障害とは?
「また発作が起こるかもしれない…」
Vol.003
自律神経失調症とは?
検査では異常がない。でも体調が戻らない…
Vol.004
動悸とは?
心臓は異常ないと言われたのに、ドキドキが止まらない…
Vol.005
息苦しさとは?
酸素は足りていると言われたのに、息が吸えない…
Vol.006
めまいとは?
検査では異常がない。でも、ふわふわ・グルグルする…
Vol.007
不眠とは?
「眠れないのは脳が休めていないからかもしれません」
Vol.008
頭痛とは?
「頭痛は脳だけでなく、首や顎が関係していることもあります」
Vol.009
首こり・肩こり
「筋肉を揉んでも、すぐに戻るのはなぜ?」
Vol.010
食いしばり・歯ぎしり・顎関節とは?
「顎は、全身の影響を受けながらバランスを調節しています」
参考文献
- Guyton AC, Hall JE. Textbook of Medical Physiology.
- Bronstein AM, et al. Oxford Textbook of Vertigo and Imbalance.
- Brandt T. Vertigo: Its Multisensory Syndromes.
- Wrisley DM, et al. Cervicogenic dizziness: a review of diagnosis and treatment.
- Benarroch EE. The Central Autonomic Network.
- Porges SW. The Polyvagal Theory.