- 森田智史ブログ
自律神経シリーズ Vol.007
「眠れないのは脳が休めていないからかもしれません」
睡眠は脳を修復し、老廃物を排出する大切な時間です
不眠とは?
不眠とは、「十分な睡眠時間を確保しているにもかかわらず、睡眠に満足できない状態」を指します。
代表的な症状は次の4つです。
- 寝つけない(入眠障害)
- 夜中に何度も目が覚める(中途覚醒)
- 朝早く目が覚める(早朝覚醒)
- 十分眠った感じがしない(熟眠障害)
日本では成人の約5人に1人が睡眠に悩みを抱えているといわれています。
※睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群、うつ病、甲状腺疾患などが原因となる場合もあるため、症状が続く場合は医療機関での評価が重要です。

なぜ眠れないの?
私たちは眠っている間に、身体だけではなく脳そのものをメンテナンスしています。
睡眠中には、
✅ 記憶の整理
✅ 神経細胞の修復
✅ シナプスの再構築
✅ ホルモンバランスの調整
✅ 脳内の老廃物の排出
などが行われています。
つまり睡眠は、
「脳を休ませ、翌日に備えるための時間」
なのです。
睡眠不足が続くと、
集中力や判断力の低下だけでなく、
疲労感・自律神経の乱れ・免疫機能への影響なども起こりやすくなります。
神経科学からみた不眠
近年の神経科学では、
睡眠は**「脳のクリーニングタイム」**であることが分かってきました。
グリンパティックシステム
2012年、Iliffらは、
睡眠中に**脳脊髄液(CSF)**が脳内へ流れ込み、
神経細胞の周囲に蓄積した老廃物を排出する仕組みを報告しました。
これを
グリンパティックシステム(Glymphatic System)
と呼びます。
さらに近年では、
脳の周囲には髄膜リンパ管が存在し、
脳内で回収された老廃物がリンパ系へ排出される経路があることも明らかになってきました。
睡眠不足では、
この排出効率が低下すると考えられており、
アミロイドβやタウタンパクなど、神経変性疾患との関連が研究されているタンパク質の排出にも関与すると報告されています。
また、睡眠不足は神経炎症や自律神経機能の変化とも関連することが報告されています。
※現在のところ、これらが不眠の直接的な原因であることや、特定の徒手療法によって改善できることを示す十分な臨床エビデンスはありません。
オステオパシーではどう考える?
オステオパシーでは、
身体は一つのユニットとして機能すると考えます。
そのため、
睡眠だけを見るのではなく、
- 頭蓋
- 上部頸椎
- 後頭下筋群
- 胸郭
- 横隔膜
- 呼吸運動
- 静脈還流
- リンパ循環
- 筋膜の連続性
などを総合的に評価します。
これらは、
呼吸や循環、神経系が働きやすい身体環境を支える重要な要素です。
森田治療室では、
身体全体の可動性や循環環境を評価し、
神経が本来の働きを発揮しやすい身体環境を整えることを目的として施術を行っています。
※オステオパシーがグリンパティックシステムや脳脊髄液循環を改善することを示す十分な臨床エビデンスは現時点では確立されていません。
日常生活でできること
睡眠の質を高めるためには、
✅ 毎朝決まった時間に起きて朝日を浴びる
✅ 就寝前1時間はスマートフォンやパソコンを控える
✅ 軽い運動やストレッチを取り入れる
✅ カフェイン・アルコールの摂りすぎに注意する
✅ 深い呼吸を意識して心身をリラックスさせる
といった生活習慣も大切です。
まとめ
✔ 睡眠は脳を修復し、老廃物を排出する大切な時間
✔ 睡眠中にはグリンパティックシステムが活発に働く
✔ 睡眠不足は神経炎症や自律神経機能にも影響する可能性がある
✔ オステオパシーでは身体全体の循環環境と可動性を評価する
✔ 睡眠障害が続く場合は医療機関で原因を確認することも重要
自律神経シリーズ バックナンバー
Vol.001
喉のつかえ感・息苦しさ・動悸・不安感…
その不調、自律神経の緊張が関係しているかもしれません
Vol.002
パニック障害とは?
「また発作が起こるかもしれない…」
Vol.003
自律神経失調症とは?
検査では異常がない。でも体調が戻らない…
Vol.004
動悸とは?
心臓は異常ないと言われたのに、ドキドキが止まらない…
Vol.005
息苦しさとは?
酸素は足りていると言われたのに、息が吸えない…
Vol.006
めまいとは?
検査では異常がない。でも、ふわふわ・グルグルする…
Vol.007
不眠とは?
「眠れないのは脳が休めていないからかもしれません」
Vol.008
頭痛とは?
「頭痛は脳だけでなく、首や顎が関係していることもあります」
Vol.009
首こり・肩こり
「筋肉を揉んでも、すぐに戻るのはなぜ?」
Vol.010
食いしばり・歯ぎしり・顎関節とは?
「顎は、全身の影響を受けながらバランスを調節しています」
参考文献
- Iliff JJ, et al. A paravascular pathway facilitates CSF flow through the brain parenchyma and the clearance of interstitial solutes. Sci Transl Med. 2012.
- Xie L, et al. Sleep drives metabolite clearance from the adult brain. Science. 2013.
- Louveau A, et al. Structural and functional features of central nervous system lymphatic vessels. Nature. 2015.
- Nedergaard M, Goldman SA. Glymphatic failure as a final common pathway to dementia. Science. 2020.
- Besedovsky L, Lange T, Haack M. The Sleep-Immune Crosstalk in Health and Disease. Physiol Rev. 2019.