2026.08.04
  • 森田智史ブログ
眼精疲労・目の奥の痛みとは?

自律神経シリーズ Vol.012

目だけでなく、ピント調節・涙・首・後頭部が関係することがあります

「パソコン作業をすると目の奥が重くなる」

「目を休めても、痛みや頭痛が残る」

「首の付け根を押すと、目の奥まで響く」

このような症状は、一般に眼精疲労としてまとめられることがあります。

しかし、目の疲れや目の奥の痛みは、眼球だけから生じるとは限りません。

長時間の近距離作業によるピント調節、まばたきの減少、ドライアイ、眼球運動の負担に加えて、上部頸椎・後頭下筋群・大後頭神経など、首の後ろから入る痛みの情報が関係している場合があります。

まず眼科で目の病気や視力・眼圧などを確認し、そのうえで首や後頭部との関係を評価することが大切です。



① 眼精疲労とは?

眼精疲労とは、目を使う作業によって生じる不快な症状が、休息だけでは十分に回復しにくい状態です。

代表的な症状には、

  • 目が重い
  • 目の奥が痛い
  • 目がかすむ
  • ピントが合いにくい
  • 目が乾く
  • まぶしく感じる
  • 頭痛
  • 首こり・肩こり
  • 集中力の低下

などがあります。

スマートフォンやパソコンなどの画面作業では、目の症状と首・肩の症状が同時に起こることも少なくありません。日本の事務職員を対象とした研究でも、画面を見る時間の長さや休憩不足は、眼精疲労と首・上肢の症状の両方に関連していました。(PubMed)

ただし、眼精疲労は一つの原因だけで起こるものではありません。

大きく分けると、

  • 目の表面と涙の問題
  • ピント調節と両眼視の問題
  • 首・後頭部などから生じる関連痛

を考える必要があります。


② 画面を見ると、なぜ目が疲れるのでしょうか?

まばたきと涙の膜

目の表面は「涙液膜」という薄い涙の層によって守られています。

画面を集中して見ていると、まばたきの回数が減ったり、まぶたが完全に閉じない不完全なまばたきが増えたりします。

その結果、涙の膜が不安定になり、

  • 乾燥感
  • ヒリヒリ感
  • 異物感
  • 充血
  • かすみ
  • 目を開け続けるつらさ

につながることがあります。

読書条件を比較した研究では、画面を見る状況によって、まばたきの回数や不完全なまばたきの割合が変化することが確認されています。(PubMed)

また、画面作業中にまばたきを促す介入を行った無作為化比較試験では、まばたきの回数とドライアイ関連症状に改善が報告されています。(PubMed)


ピント調節と輻輳

近くを見る時には、眼球の中にある水晶体の厚さを変えてピントを合わせます。

同時に、左右の目を内側へ向ける「輻輳」も行われます。

近距離の画面を長時間見続けると、

  • ピントを近くに合わせ続ける
  • 左右の目を内側へ寄せ続ける
  • 小さな文字を追い続ける
  • 頭と首を固定して視線を安定させる

という複数の作業が続きます。

画面までの距離が近すぎると、ピント調節の要求だけでなく、頭部姿勢や首の症状にも影響する可能性があります。画面距離を変えて比較した研究でも、調節反応・頭の姿勢・目と首の症状の間に関連が報告されています。(PubMed)


③ 大後頭神経から生じる「目の奥の痛み」

目の奥が痛む時、多くの方は眼球に原因があると考えます。

しかし一部では、上部頸椎や後頭部から生じた痛みが、前頭部や目の奥に感じられることがあります。

この関係で重要なのが、大後頭神経です。

大後頭神経とは?

大後頭神経は、主に第2頸神経の後枝から分かれる感覚神経です。

後頭部の深い場所から上方へ走り、後頭部から頭頂部付近の皮膚感覚に関係します。

大後頭神経は、

  • 下頭斜筋周囲
  • 頭半棘筋
  • 僧帽筋腱膜
  • 後頭動脈周囲

などを通過しながら頭皮へ向かいます。

解剖研究では、大後頭神経が下頭斜筋周囲の筋膜と密接に接することや、頭半棘筋・僧帽筋周辺などに複数の圧迫を受け得る部位が存在することが報告されています。(PubMed)


大後頭神経は、目まで直接伸びているわけではありません

ここは解剖学的に正確に理解する必要があります。

大後頭神経そのものが、後頭部から眼球の奥まで直接走行しているわけではありません。

大後頭神経から入った上位頸髄の痛みの情報は、脳幹・上位頸髄にある三叉神経頸髄複合体で、顔や目の周囲から入る感覚情報と接点を持ちます。

そのため、首や後頭部から生じた痛みを、脳が

  • こめかみ
  • 眼窩周囲
  • 目の奥

の痛みとして認識することがあります。

国際頭痛分類でも、後頭神経痛の痛みは、三叉神経系との神経接続を介して前頭部や眼窩部まで広がることがあると説明されています。(ICH-D3)

つまり、

大後頭神経が直接目まで伸びているのではなく、上部頸椎と顔面の感覚情報が神経系で合流するため、後頭部の問題が目の奥の痛みとして感じられる

と考える方が正確です。


首が関係している可能性を考える特徴

次のような場合には、眼球そのものだけでなく、上部頸椎や大後頭神経周囲の関与を確認します。

  • 首の付け根から目の奥へ痛みが広がる
  • 後頭部を押すと目の周囲まで響く
  • 首を動かすと目の奥の痛みが変化する
  • 左右どちらか一方に症状が強い
  • 目の奥の痛みと首こり・後頭部痛が同時に起こる
  • 長時間のパソコン作業後に悪化する
  • 頭痛と目の奥の痛みが一緒に起こる

ただし、これらの特徴だけで原因を大後頭神経と断定することはできません。

後頭神経痛、頸性頭痛、片頭痛、緊張型頭痛、眼科疾患などを区別して考える必要があります。


④ 後頭下筋群と上部頸椎

後頭骨と上位頸椎の間には、

  • 大後頭直筋
  • 小後頭直筋
  • 上頭斜筋
  • 下頭斜筋

などからなる後頭下筋群があります。

これらの筋肉は、大きな動きをつくるだけでなく、頭部の位置を細かく感知し、目・頭・首を協調させる役割に関係しています。

画面を凝視して頭を長時間固定すると、後頭下筋群は視線と頭部を安定させるために持続的に活動します。

さらに、大後頭神経は下頭斜筋や頭半棘筋などの周囲を走行するため、筋膜の緊張、外傷後の組織変化、持続的な伸張や圧迫が神経の刺激に関係する可能性があります。(PubMed)

その結果、

後頭下部の緊張

上位頸髄・後頭神経からの感覚入力の増加

三叉神経頸髄複合体での情報統合

後頭部・前頭部・目の奥に痛みを感じる

という経路が考えられます。


⑤ 後頭骨の「圧縮」とは?

オステオパシーでは、後頭骨と上部頸椎の境界で、

  • 組織が硬く感じられる
  • 頭部と頸椎の微細な動きが少ない
  • 後頭下筋群の緊張が強い
  • 左右の動きに差がある
  • 頭蓋底周囲に持続的な圧迫感がある

といった状態を、機能的に「後頭部の圧縮」と表現することがあります。

ただし、これは画像検査で確認される眼科的・整形外科的な診断名ではありません。

また、「後頭骨が圧縮されることで眼精疲労が生じる」という直接的な因果関係や、頭蓋への施術によって眼球や視力が改善することを示す十分な臨床研究は確立されていません。

医学的には、後頭骨そのものが眼精疲労を起こすというよりも、

  • 上部頸椎の可動性
  • 後頭下筋群の緊張
  • 大後頭神経周囲の刺激
  • 頭部を固定し続ける姿勢
  • 頸部由来の関連痛

を総合的に評価することが重要です。


⑥ オステオパシーではどう考える?

森田治療室では、眼精疲労や目の奥の痛みがある場合、眼球そのものを施術によって治療するとは考えません。

まず眼科的な問題がないことを確認したうえで、主に次のような身体機能を評価します。

  • 後頭骨と上部頸椎の関係
  • 後頭下筋群
  • 大後頭神経周囲の軟部組織
  • 頸椎の回旋・屈曲・伸展
  • 頭と目の協調運動
  • 胸椎・肋骨・肩甲帯
  • 横隔膜と呼吸
  • 顎関節・食いしばり
  • デスク環境と視線の位置
  • 痛みが変化する姿勢や動作

特に、

  • 首の付け根から目の奥へ痛みが広がる
  • 上部頸椎の動きが悪い
  • 後頭部を押すと症状が再現される
  • 首を動かすことで痛みが変化する

といった場合には、頸部由来の関連痛を考慮します。

上部頸椎への徒手療法や運動療法を検討した無作為化比較試験では、頸性頭痛のある人において、頭痛の頻度・強さ・持続時間や頸部可動域の改善が報告されています。(PubMed)

2026年に発表されたオステオパシー施術の無作為化比較試験でも、頸性頭痛患者の頸部機能障害と上部頸椎回旋に改善が報告されました。(PubMed)

ただし、これらは主に頸性頭痛を対象とした研究であり、「眼精疲労」やすべての目の奥の痛みに有効であることを示すものではありません。

森田治療室では、身体全体を評価し、神経・関節・筋肉・呼吸などが働きやすい身体環境を整えることを目的としています。


⑦ 日常生活でできること

意識してまばたきをする

画面を見ている時は、時々ゆっくり目を閉じ、まぶたを完全に閉じるようにします。

乾燥感が強い場合は、眼科でドライアイの有無を確認してください。

定期的に遠くを見る

近距離にピントを固定し続けず、一定時間ごとに画面から目を離します。

遠くをぼんやり見ることで、近見作業を一時的に中断できます。

画面を近づけすぎない

文字が小さくて顔を画面へ近づけている場合は、文字サイズを大きくします。

頭を前方へ突き出さずに読める距離へ調整してください。

首を強く揉みすぎない

後頭部を強く押したり、大きく首を回したりすると、痛みや神経症状が悪化することがあります。

痛みのない範囲で、首を小さくゆっくり動かします。

顎の力を抜く

画面へ集中すると、無意識に食いしばっていることがあります。

唇は軽く閉じ、上下の歯は離しておきます。


早めに眼科を受診してほしい症状

次のような症状は、単なる眼精疲労として判断せず、眼科での評価を優先してください。

  • 急に視力が低下した
  • 強い眼痛と充血がある
  • 光を見ると強く痛む
  • 物が二重に見える
  • 視野が欠ける
  • 光が走る
  • 黒い点や浮遊物が急に増えた
  • カーテンのような影が見える
  • 吐き気を伴う強い眼痛がある

突然増えた飛蚊症、光が走る症状、視野を覆う影は網膜剝離の可能性があり、速やかな眼科受診が必要です。また、強い眼痛・充血・かすみ・吐き気は急性閉塞隅角緑内障でもみられるため、緊急の評価が必要です。(国立眼科研究所)


まとめ

✔ 眼精疲労には、涙・まばたき・ピント調節・両眼視などが関係する

✔ 長時間の画面作業では、目だけでなく頭と首も固定されやすい

✔ 大後頭神経は後頭部から頭頂部へ分布し、眼球まで直接走る神経ではない

✔ 上位頸髄の痛みは、神経系の接続を介して目の奥へ関連痛を起こすことがある

✔ 後頭下筋群や上部頸椎の緊張が、後頭神経周囲の刺激に関係する可能性がある

✔ 上部頸椎への徒手療法は、一部の頸性頭痛には役立つ可能性があるが、すべての眼精疲労への効果が確立されているわけではない

✔ 急な視力低下、強い眼痛、視野異常などがある場合は、眼科での評価を優先する


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Vol.006
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Vol.008 
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参考文献

  • International Headache Society. 13.4 Occipital neuralgia. International Classification of Headache Disorders, 3rd edition.
  • Janis JE, et al. The anatomy of the greater occipital nerve: Part II. Compression point topography. Plast Reconstr Surg. 2010.
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  • Ashwini DL, et al. Efficacy of blink software in improving blink rate and dry eye symptoms in visual display terminal users. Indian J Ophthalmol. 2021.
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