- 森田智史ブログ
婦人科シリーズ Vol.017
生理前のイライラ・腹痛・腰痛と、骨盤内の循環・自律神経の関係
「生理前になると、家族に強く当たってしまう」
「理由もなく不安になり、気分が落ち込む」
「下腹部や腰が重く、身体がむくむ」
「生理が始まると、少しずつ元の自分に戻る」
30代・40代では、仕事、家事、育児などが重なり、自分の体調を後回しにしてしまうことがあります。
普段は何とか対応できていても、生理前になると心身の余裕がなくなり、イライラ、疲労、腹痛、腰痛、頭痛などが一気に強くなる方も少なくありません。
このような月経前の不調には、PMSやPMDDが関係していることがあります。

PMS・PMDDとは?
PMSは、生理前の3〜10日ほどに心と身体の症状が現れ、生理が始まると軽くなっていく状態です。
特にイライラ、不安、気分の落ち込み、感情の不安定さなどが強く、仕事や家庭生活に大きな支障が出る場合は、PMDDと呼ばれます。
代表的な症状には、次のようなものがあります。
心の症状
・イライラする
・気分が落ち込む
・不安や緊張が強くなる
・感情を抑えにくくなる
・集中力が低下する
・人と会いたくなくなる
・眠れない、または強く眠くなる
身体の症状
・下腹部痛
・腰痛
・頭痛
・乳房の張り
・むくみ
・お腹の張り
・便秘
・食欲の変化
・強い疲労感
大切なのは、症状が毎月、生理前に強くなり、生理が始まると軽くなるという周期性です。
ホルモンの量より「変化への反応」が関係する
PMS・PMDDは、単純に女性ホルモンが多すぎる、少なすぎることで起こるわけではありません。
排卵後から生理前にかけて、エストロゲンとプロゲステロンは大きく変動します。
このホルモン変化に対して、脳や神経系が敏感に反応すると、イライラ、不安、落ち込み、不眠などが起こりやすくなると考えられています。
さらに、
・睡眠不足
・慢性的な疲労
・仕事の負担
・育児や家事
・人間関係
・身体の痛み
などが重なると、生理前の変化へ対応する余裕が低下します。
ホルモンの変化だけではなく、変化を受け止める身体と神経系の状態も重要です。
30代・40代では不調が複雑になりやすい
30代・40代は、仕事、家事、育児、介護など、複数の役割が重なりやすい時期です。
自分の休息時間が少なくなり、身体の回復が追いついていない方も少なくありません。
また、
・長時間の座り姿勢
・抱っこや授乳による身体的負担
・慢性的な腰痛や肩こり
・運動不足
・食事時間の乱れ
・睡眠不足
などが続くと、骨盤や股関節、腰仙部の柔軟性が低下し、生理前の身体症状が強く現れることがあります。
40代では月経周期が以前より不規則になり、PMSと更年期の症状が重なって見えることもあります。
症状が生理前だけではなく、生理が終わっても続いている場合は、更年期への移行も含めて婦人科へ相談することが大切です。
骨盤内の循環とPMS
森田治療室では、腹痛や腰痛、下腹部の張りが強い方に、骨盤内の循環が働きにくい身体状態が重なっているケースを多くみます。
例えば、
・骨盤や股関節の動きが小さい
・腰や仙骨の周囲が硬い
・腹部や骨盤底に力が入り続けている
・呼吸が浅い
・長時間座ったまま過ごしている
といった状態です。
骨盤内には子宮、卵巣、膀胱、直腸があり、その周囲を血管、リンパ管、自律神経が通っています。
歩く、呼吸する、股関節を動かすといった日常的な動きは、骨盤や腹部の組織にも伝わります。
しかし、股関節や骨盤の動きが小さくなると、骨盤内の組織も動きにくくなり、下腹部の重さ、むくみ、腰痛などが強く感じられることがあります。
子宮支持靱帯と腹痛・腰痛
子宮は、骨盤の中に単独で浮いているわけではありません。
子宮からは、骨盤の前方、後方、左右へ向かって複数の支持組織が伸びています。
代表的なものには、
・仙骨子宮靱帯
・基靱帯
・子宮円靱帯
などがあります。
これらは子宮を支えながら、骨盤、仙骨、鼠径部周囲の組織とつながっています。
骨盤や股関節の動きが低下すると、子宮周囲の支持組織にも張力が集中しやすくなります。
そのため、
・下腹部の引きつり
・鼠径部のつっぱり
・腰や仙骨周囲の痛み
・骨盤の奥の重さ
・股関節の動かしにくさ
として感じることがあります。
腹痛と腰痛が同時に現れる場合は、子宮だけでなく、子宮を支える靱帯と、その周囲にある骨盤・仙骨・股関節を含めて考える必要があります。
最初に子宮ではなく、身体全体を整える
PMS・PMDDに対するオステオパシーでは、最初から子宮周囲だけを施術するわけではありません。
まずは身体全体を確認します。
森田治療室では、
・頭頸部と自律神経系
・胸郭と肋骨
・横隔膜と呼吸
・腰椎と仙骨
・骨盤と股関節
・腹壁と骨盤底
・姿勢と全身の負荷分散
などを評価します。
PMS・PMDDに対する最初の段階では、内臓を直接調整するというより、まず外側にある骨格、関節、筋肉、筋膜を整えます。
骨盤や股関節の柔軟性が改善すると、子宮支持靱帯へ集中していた張力が分散されやすくなります。
また、横隔膜、腹部、骨盤底が呼吸に合わせて動きやすくなることで、骨盤内の循環も働きやすくなります。
目標は、生理前の症状をその場だけ抑えることではありません。
仕事、育児、睡眠不足、ホルモン変化などの負荷が重なっても、身体が過剰に反応しにくい「余裕のある状態」を目指します。
日常生活でできること
月経周期と症状を記録する
少なくとも2周期ほど、生理日と症状を記録してみてください。
イライラや気分の落ち込みだけでなく、
・腹痛
・腰痛
・頭痛
・むくみ
・睡眠時間
・便通
・食欲
・仕事や育児の負担
なども一緒に記録すると、自分の症状が強くなる時期や条件が分かりやすくなります。
股関節のエクササイズを3週間続ける
下腹部痛や腰痛、骨盤の重さがある方には、股関節のエクササイズがおすすめです。
股関節を動かすと、その動きは、
股関節
↓
骨盤
↓
子宮を支える靱帯
↓
子宮周囲の組織
という流れで伝わります。
股関節や骨盤の動きが広がることで、子宮を支える靱帯系に集中していた緊張が分散され、骨盤内の組織も動きやすくなります。
YouTubeで「股関節ストレッチ」と検索して、難しすぎず、無理なく続けられそうな動画を一つ選んでください。
いろいろな運動を毎日変えるよりも、同じ動画を見ながら、まず3週間続けてみることをおすすめします。
毎日同じ動きを続けることで、少しずつ股関節や骨盤の変化を感じやすくなります。
強く伸ばしたり、痛みを我慢したりする必要はありません。
生理前に痛みが強い日は無理をせず、動かせる範囲を小さくして行ってください。運動中に強い腹痛、股関節痛、出血などが起こる場合は中止してください。
睡眠を削り続けない
生理前は眠気が強くなる方もいれば、反対に眠れなくなる方もいます。
夜にすべての家事を終わらせようとせず、生理前だけでも予定や負担を減らすことは、身体の回復にとって重要です。
婦人科へ相談してほしい症状
PMS・PMDDは、生活習慣だけで我慢し続ける必要はありません。
次のような場合は、婦人科、精神科、心療内科などへ相談してください。
・仕事や家事ができない
・家族関係に大きな影響が出ている
・生理が始まっても不安や落ち込みが続く
・強い腹痛や腰痛がある
・経血量が増えている
・月経周期が大きく変化した
・自分を傷つけたい、消えたいと感じる
強い月経痛や症状の悪化には、子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫などが隠れている場合があります。
まとめ
PMS・PMDDは、女性ホルモンの量だけで起こるものではありません。
ホルモン変化に対する脳や神経系の感受性に、睡眠不足、疲労、仕事や育児の負担などが重なって症状が現れます。
腹痛や腰痛、下腹部の張りが強い方では、骨盤内の循環、子宮支持靱帯、腰仙部、股関節、骨盤底などの身体的な負担も重要です。
森田治療室では、最初から子宮だけを調整するのではなく、骨格、呼吸、姿勢、自律神経などの全体性を整え、子宮や骨盤内組織へかかる負担を減らしていきます。
岡山・倉敷で、生理前のイライラ、腹痛、腰痛、疲労などにお悩みの30代・40代女性に対して、月経前の変化へ適応しやすい身体環境を目指します。
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参考文献
- 日本産科婦人科学会.月経前症候群(PMS)
- American College of Obstetricians and Gynecologists. Management of Premenstrual Disorders. Clinical Practice Guideline No.7. 2023.
- Sun W, et al. Role of allopregnanolone-mediated GABA-A receptor sensitivity in the pathogenesis of premenstrual dysphoric disorder. Front Psychiatry. 2023.
- Ramanah R, et al. Anatomy and histology of apical support: a literature review concerning cardinal and uterosacral ligaments. Int Urogynecol J. 2012.
- Butler-Manuel SA, et al. The uterosacral complex: ligament or neurovascular pathway? J Obstet Gynaecol. 2008.