- 森田智史ブログ
自律神経シリーズ Vol.021|
「朝起きると、胃がムカムカする」
「仕事へ行こうとすると気持ち悪くなる」
「お腹は空いているのに、食べ始めるとすぐに気持ち悪くなる」
「胃カメラでは異常がないと言われたのに、ずっと胃の調子が悪い」
「緊張すると吐き気が出る」
「食事をすると胃が重くなり、横になりたくなる」
胃の不調というと「胃酸が多い」「胃が荒れている」と考えがちですが、胃カメラや血液検査で大きな異常が見つからなくても、ムカムカ・吐き気・胃もたれが続く方は少なくありません。
こうした症状では、胃だけではなく、自律神経、呼吸、横隔膜、胸郭、脊柱、睡眠、ストレスなど身体全体の状態を考えることが重要です。
今回は「胃がムカムカする・吐き気が続く」という症状を、胃と身体全体のつながりから考えていきます。

胃が悪いから吐き気が出るとは限りません
吐き気は、「吐きそう」という不快な感覚です。
胃炎や胃潰瘍、感染症など胃そのものの病気でも起こりますが、それだけではありません。
例えば、
・機能性ディスペプシア
・片頭痛
・めまい
・薬の副作用
・妊娠
・強いストレスや不安
・睡眠不足
などでも吐き気は起こります。
慢性的な胃もたれ、早期満腹感、みぞおちの不快感、吐き気などがあり、検査で症状を説明できる病気が見つからない場合には、機能性ディスペプシアなどの「脳と消化管の相互作用」が関係する状態が考えられます。現在ではこうした状態は「消化管だけの問題」ではなく、消化管の運動、内臓の知覚、脳での情報処理などが相互に関係するものとして捉えられています。(糖尿病・消化器系・腎臓病研究所)
「緊張すると胃がムカムカする」には理由があります
「プレゼンの前になると吐き気がする」
「仕事が忙しくなると胃が痛くなる」
「嫌なことを考えると急に食欲がなくなる」
このような経験がある方も多いと思います。
これは決して「気のせい」という意味ではありません。
胃は、自律神経の影響を強く受ける臓器です。
私たちは食事をすると、
胃が広がる
↓
食べ物を受け入れる
↓
適切に攪拌する
↓
少しずつ十二指腸へ送る
という動きをしています。
その調節には自律神経を含む神経系が関係しています。
一方で、仕事、人間関係、不安、痛み、睡眠不足などが続き、身体が長時間「緊張モード」になっていると、消化管の動きや内臓からの感覚の受け取り方が変化することがあります。
その結果、
「少ししか食べていないのに満腹」
「胃の中に食べ物が残っている感じ」
「みぞおちが張る」
「吐き気がする」
といった症状として感じることがあります。
現在、機能性ディスペプシアなどは「脳‐腸相関」の異常を含む消化管と脳の相互作用の問題として理解されています。(The Rome Foundation)
胃カメラで異常がないのに、なぜこんなにつらいのか
患者さんからよく聞くのが、
「胃カメラではきれいと言われました」
「異常がないなら、この気持ち悪さは何なんでしょうか」
という言葉です。
検査で異常がないことは、とても大切な情報です。
しかし、
「異常がない=症状が存在しない」
ということではありません。
例えば胃が食事を受け入れる能力、胃から腸へ送り出す運動、胃が膨らんだときの感じ方などは、通常の胃カメラでそのすべてを評価できるわけではありません。
機能性ディスペプシアでは、
・食後の胃もたれ
・少量ですぐ満腹になる
・みぞおちの痛みや灼熱感
などが中心症状ですが、膨満感、げっぷ、吐き気を伴うこともあります。(糖尿病・消化器系・腎臓病研究所)
形を見る検査だけではなく、胃がどのように働いているかという視点も必要になります。
胃だけではなく「呼吸」も確認します
森田治療室で胃の不調がある方をみていると、呼吸が浅くなっている方が少なくありません。
「息を吸っても胸の上だけが動く」
「みぞおちがいつも硬い」
「無意識にお腹へ力を入れている」
「ため息が多い」
「緊張すると息を止めている」
といった状態です。
胃のすぐ上には横隔膜があります。
横隔膜は呼吸のたびに上下し、胸腔と腹腔の圧力変化にも関係します。
そのためオステオパシーでは、胃の症状があっても胃だけを見るのではなく、
胸郭 → 横隔膜 → 腹部
が呼吸に合わせて動けているかを確認します。
長時間のデスクワークで胸郭が硬くなり、横隔膜周囲にも緊張が続いている方では、まず呼吸が楽にできる身体環境をつくることが重要だと考えています。
首や胸の緊張と胃の症状
胃と自律神経を考えるうえで、もう一つ重要なのが神経系です。
消化管には迷走神経をはじめとした自律神経が関係しています。
そのため森田治療室では、
・頭頸部
・首の付け根
・胸郭
・胸椎
・肋骨
・横隔膜
・上腹部
などを一つのつながりとして評価します。
例えば、
「胃が悪いと思っていたけれど、首もずっと硬い」
「胃の調子が悪い時期は肩こりも強くなる」
「忙しくなると食いしばり、呼吸が浅くなり、胃もムカムカする」
という方もいます。
これは「首を緩めれば胃が治る」という単純な話ではありません。
神経・呼吸・循環・消化が協調して働ける身体になっているか
を見ることが大切です。
背中の硬さも胃と一緒に確認します
胃がムカムカする方に、
「背中も張りませんか?」
と聞くと、
「そういえば、みぞおちの裏側がいつも硬いです」
と言われることがあります。
特に上腹部と同じ高さの胸椎や肋骨周囲が硬くなっているケースがあります。
胃を含む上部消化管に関係する自律神経系は、胸部の神経系とも関係します。
そのため、
・背中を反らしにくい
・肋骨が広がりにくい
・片側の背中だけ張る
・長時間座るとみぞおちの裏が苦しい
といった状態も確認します。
胃を前側からだけ見るのではなく、
前側の腹部
+横隔膜
+肋骨
+背中
まで含めて立体的に考えることがポイントです。
「胃が悪い」ではなく、身体全体が緊張していることもある
実際には、
胃のムカムカ
+首こり
+肩こり
+頭痛
+食いしばり
+眠りが浅い
+動悸
というように、胃以外の症状をいくつも抱えている方も珍しくありません。
こうなると、胃だけを個別に考えるより、
身体全体が常に緊張し、休息へ切り替わりにくい状態になっていないか
を見る方が重要になります。
「胃薬を飲むと少し楽になるけれど、仕事が忙しくなるとまた悪くなる」
という場合にも、胃だけでなく、生活と身体全体の状態を振り返る価値があります。
オステオパシーでは最初に「全体性」を整えます
森田治療室では、吐き気や胃の不調があるからといって、最初から胃周囲だけを細かく施術するわけではありません。
まず、
・頭頸部と自律神経系
・胸郭と肋骨
・横隔膜と呼吸
・脊柱
・骨盤
・全身の筋膜
・循環
・身体の左右差
などを確認します。
最初の数回は、身体全体の緊張を緩め、
神経・呼吸・循環・消化が協調しやすい身体環境
をつくることを優先します。
全体が落ち着いてくると、
「首の緊張が残っている」
「横隔膜の片側が動きにくい」
「過去の手術やけがの影響が残っている」
「胸郭の動きに左右差がある」
など、本当に残っている問題が分かりやすくなってきます。
そこから個別の問題を一つずつ確認していきます。
オステオパシーでは身体全体を評価し、神経・呼吸・循環・関節・筋膜などが働きやすい身体環境を整えることを目的としています。
「朝だけ気持ち悪い」場合も身体全体から考える
「夕食は普通に食べられるのに、朝だけ吐き気がある」
という方もいます。
この場合も、
・睡眠の質
・起床時の自律神経の切り替え
・夜遅い食事
・食いしばり
・呼吸の浅さ
・仕事や学校へ向かう緊張
など複数の要素が関係していることがあります。
特に、
休日は比較的楽なのに、仕事や学校がある朝だけ気持ち悪い
という場合は、生活環境と身体の緊張の関係も一緒に確認する必要があります。
「胃が弱い体質だから」と決めつけず、どの時間帯、どんな場面、どんな身体状態で症状が強くなるのかを見ていくことが大切です。
こんな吐き気は医療機関へ
吐き気がすべて自律神経の問題というわけではありません。
次のような症状がある場合は、消化器内科など医療機関での評価を優先してください。
・何度も嘔吐する
・吐血、コーヒーかすのような嘔吐物がある
・黒い便が出る
・体重が意図せず減っている
・食欲が大きく低下している
・強く持続する腹痛がある
・飲み込みにくい、飲み込むと痛い
・黄疸がある
・強い胸痛や息苦しさを伴う
こうした症状は胃潰瘍や消化管出血など、別の病気が隠れている可能性があります。(糖尿病・消化器系・腎臓病研究所)
また、妊娠の可能性がある女性では、まず妊娠の確認も必要です。
まとめ
胃がムカムカする。
吐き気が続く。
食べるとすぐ胃が重くなる。
胃カメラでは異常がないのに、胃の調子だけがずっと悪い。
こうした症状では、胃だけを見続けても答えが見つからないことがあります。
胃は、自律神経、脳、呼吸、横隔膜、胸郭、脊柱など、身体全体の働きの中で動いている臓器です。
そのため森田治療室では、
「胃の症状だから胃を見る」のではなく、
「なぜ今、この身体で胃の症状が出ているのか」
という視点から評価します。
岡山・倉敷で、胃のムカムカ、吐き気、胃もたれ、食欲低下などが続き、検査では大きな異常がないと言われた方に対して、身体全体と自律神経のつながりから状態を確認しています。
シリーズバックナンバー
関連シリーズ
Vol.003|自律神経失調症とは?
Vol.014|機能性ディスペプシアとは?
Vol.001|喉のつかえ・息苦しさ・動悸・不安感
参考文献
- Rome Foundation. Disorders of Gut-Brain Interaction / Functional Dyspepsia.
- National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases. Indigestion (Dyspepsia): Symptoms & Causes.
- National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases. Diagnosis of Indigestion.
- 日本消化器病学会.機能性消化管疾患診療ガイドライン2021―機能性ディスペプシア(FD).