- 森田智史ブログ
婦人科シリーズ Vol.020
受験・部活動・ストレスが重なり、身体の余裕が失われていることがあります
「受験勉強が本格的になってから、生理が来なくなった」
「クラス委員や部長になり、責任が増えてから周期が乱れ始めた」
「部活動の練習量が多く、休みの日も自主練習をしている」
「ダイエットを始めてから、何カ月も生理が来ていない」
「生理がない方が楽なので、そのままにしている」
「将来、妊娠できるのか不安になってきた」
若い年齢で生理が止まっても、痛みや出血がないため、そのまま過ごしてしまう方は少なくありません。
しかし、生理が来ない状態は、身体が現在のストレスや運動量、食事、睡眠などに対応しきれず、月経を維持する余裕を失っているサインかもしれません。
無月経は、子宮だけの問題ではありません。
身体全体がどのような環境に置かれているのかを確認することが大切です。

無月経とは?
無月経とは、妊娠・授乳・閉経以外の時期に月経がない状態です。
大きく分けると、
- 15歳になっても初潮がない「原発性無月経」
- 以前は生理があったのに、3カ月以上止まっている「続発性無月経」
があります。
生理が3カ月以上来ていない場合や、15歳になっても初潮がない場合は、婦人科での評価が必要です。(Endocrine Society)
無月経の背景には、
- 妊娠
- 急激な体重減少
- 食事制限や摂食障害
- 過度な運動
- 強いストレス
- PCOS
- 甲状腺の異常
- 高プロラクチン血症
- 早発卵巣不全
など、さまざまな原因があります。
「受験のストレスだと思う」「運動のしすぎだと思う」と自己判断せず、最初に婦人科で必要な検査を受けることが大切です。
ストレスが多く、常に気が抜けない
若い女性の無月経では、食事や運動だけでなく、精神的な緊張が長く続いていることがあります。
例えば、
「受験が近づき、勉強していない時間も不安になる」
「クラス委員や生徒会の仕事を任され、失敗できないと感じている」
「部活動でキャプテンになり、後輩やチームのことまで考えている」
「学校では普通に過ごしているけれど、家に帰ると何もできない」
「周囲から期待されているので、つらいと言えない」
といった背景です。
本人は、自分が強いストレスを受けていることに気づいていない場合もあります。
責任感が強く、真面目で、周囲の期待に応えようとする方ほど、疲れていても休まずに頑張ってしまいます。
身体は緊張した状態を維持し続け、睡眠を取っても十分に回復できなくなります。
生理が止まることは、「環境にうまく適応できている」という意味ではありません。
これ以上負担が増えないように、身体が月経機能を一時的に抑えている可能性があります。
スポーツによる異常に多い運動量
部活動や競技スポーツに取り組む女性では、運動量が身体の回復力を大きく上回っていることがあります。
- 朝練と放課後練習がある
- 休日も試合や自主練習をしている
- 休養日がほとんどない
- 疲れていても練習を休めない
- 体重を増やすと動けなくなると思っている
- 競技のために食事量を減らしている
- けがをしても練習を続けている
といった状態です。
ランニング、体操、ダンス、バレエ、フィギュアスケートなどでは、運動量に対して食事や休養が不足しやすくなります。
見た目が極端に痩せていなくても、運動で使う量に対して身体の回復に必要な栄養が不足すれば、月経機能、骨、免疫、代謝などへ影響する可能性があります。(日本臨床腫瘍学会)
無月経を「スポーツを頑張っている証拠」と考えることはできません。
疲労骨折を繰り返す、以前より記録が伸びない、疲れが取れない、けがが治りにくいといった変化がある場合は、身体の余裕が失われている可能性があります。
最優先は「余裕のある身体」を取り戻すこと
無月経の改善で大切なのは、身体が月経を維持できるだけの余裕を取り戻すことです。
余裕のある身体とは、単にリラックスしている状態ではありません。
- 食事から必要な栄養を取れている
- 運動後に十分回復できている
- 睡眠によって疲労が軽減する
- 体温や循環が保たれている
- 緊張したあとに休息へ切り替えられる
- 学校や部活動以外に何もしない時間がある
- 痛みや疲労を我慢し続けていない
という状態です。
そのため、必要に応じて、
- 食事量や栄養内容を見直す
- 運動量や練習時間を調整する
- 完全な休養日をつくる
- 睡眠時間を確保する
- 責任や役割を周囲と分担する
- 体重が増えることへの不安を相談する
- 摂食障害に対する専門的な支援を受ける
といった対応が必要になります。
機能性無月経では、栄養状態の改善、運動量の調整、心理的な支援などによって、身体が利用できる余力を回復させることが基本になります。(Endocrine Society)
生理がない方が楽でも、そのままにしない
「生理痛がなくなって楽になった」
「試合と生理が重ならないので都合がよい」
「今すぐ妊娠する予定はないから大丈夫」
と思う方もいます。
しかし、若い時期は、将来に向けて骨量を増やす大切な時期です。
無月経が続き、女性ホルモンが低い状態になると、骨密度の低下や疲労骨折、将来の骨粗しょう症などにつながる可能性があります。
特に無月経が6カ月以上続いている場合や、栄養不足、疲労骨折が疑われる場合には、骨密度の評価が検討されます。(Endocrine Society)
月経の再開だけではなく、将来の骨や妊娠、身体全体の健康を考えることが重要です。
森田治療室が考える「月経が戻りやすい身体環境」
森田治療室では、生理を直接起こすことを目的にはしていません。
食事、休養、運動量の調整、婦人科での評価を大切にしたうえで、身体が本来の周期を取り戻せる余裕があるかを確認します。
主に評価するのは、
- 自律神経系の緊張
- 胸郭と呼吸
- 横隔膜の動き
- 腰椎上部と仙骨
- 骨盤と股関節
- 腹部と骨盤底
- 骨盤内の循環
- 全身の姿勢と負荷の偏り
などです。
食事量を増やしても、常に緊張して眠りが浅く、身体の一部分へ負担が集中していると、十分な回復へつながりにくいことがあります。
神経・呼吸・循環など、人間本来のシステムが協調し、身体が回復に力を使いやすい環境を目指します。
太ももの外側・股関節・骨盤のつながり
スポーツや部活動をしている女性では、股関節や太ももの外側へ強い負担が集中していることがあります。
特に、
- 大腿筋膜張筋が硬い
- 太ももの外側を押すと強く痛む
- 股関節を開きにくい
- 片脚へ体重をかけて立つ
- 左右で股関節の動きが違う
- 腰や鼠径部がいつも張っている
といった状態を確認します。
大腿筋膜張筋や太ももの外側が緊張すると、股関節と骨盤の動きが制限されやすくなります。
走る、跳ぶ、立つ、座るといった動作のたびに、同じ負担が骨盤周囲へ繰り返しかかることもあります。
オステオパシーには、身体表面の反応を内臓機能との関連から評価する「チャップマン反射」という伝統的な考え方があります。
大腿部外側の張りを単なる脚の硬さとして見るのではなく、
大腿部外側
↓
股関節
↓
骨盤
↓
子宮・卵巣を支える組織
↓
循環・神経系
という身体全体のつながりから評価します。
最初の約3回は全体性を整える
無月経に対する施術でも、最初から一つの部位だけを細かく追いかけることはしません。
最初の約3回を一つの目安として、
- 頭頸部と自律神経系
- 胸郭、肋骨、呼吸
- 脊柱と仙骨
- 骨盤と股関節
- 腹部と骨盤底
- 全身の循環と姿勢
を評価し、身体全体の緊張を少しずつ緩めていきます。
まず全体性を整え、身体が緊張から休息へ切り替わりやすく、恒常性が働きやすい状態を目指します。
全身の緊張が落ち着いたあとに、
- 頭頸部や頭蓋の緊張
- 過去のけがや転倒
- 競技動作による身体の左右差
- 手術痕
- 強いストレスを受けた時期から残る身体反応
- 腰椎、骨盤、股関節に残る制限
などを細かく確認します。
原因を最初から一つに決めるのではなく、毎回の身体の反応を見ながら、余裕を失わせている問題を整理していきます。
家族・指導者に知ってほしいこと
無月経になった本人へ、
「もっと食べればいい」
「練習を休めばいい」
「考えすぎではないか」
と伝えるだけでは、本人が責められていると感じることがあります。
競技成績、体重、受験、責任ある立場など、本人にとって簡単には手放せない理由があるからです。
まずは、
「最近、休めている?」
「練習量に対して食事や睡眠は足りている?」
「責任を一人で抱えていない?」
と、身体と生活の両方を一緒に確認することが大切です。
本人の努力を否定するのではなく、長く競技や学校生活を続けるために、回復できる身体をつくるという視点が必要です。
早めに婦人科へ相談してほしい状態
次のような状態がある場合は、若いから、運動をしているからと様子を見続けず、婦人科へ相談してください。
- 15歳になっても初潮がない
- 以前あった生理が3カ月以上来ていない
- 妊娠の可能性がある
- 短期間で体重が大きく減った
- 食べることや体重増加に強い恐怖がある
- めまい、失神、強い冷えがある
- 脈が極端に遅い
- 疲労骨折を繰り返している
- 強い頭痛や視力の変化がある
- 40歳未満で生理が長期間止まっている
無月経は、妊娠やPCOS、甲状腺、卵巣機能などの問題を確認したうえで評価する必要があります。(Endocrine Society)
まとめ
若い年齢で生理が止まる背景には、ダイエットや運動だけでなく、受験ストレス、クラスや部活動での責任、睡眠不足、人間関係などが重なっていることがあります。
特に真面目で責任感の強い女性は、自分の疲れに気づいても、周囲の期待に応えるために頑張り続けてしまいます。
大切なのは、月経だけを起こそうとすることではありません。
食事、休養、運動量、睡眠、心理的な負担を見直し、身体が月経を維持できるだけの**「余裕のある状態」**を取り戻すことです。
森田治療室では、自律神経、呼吸、循環、腰椎、骨盤、股関節、大腿部外側など、身体全体のつながりを評価します。
岡山・倉敷で、受験や部活動の負担が増えてから生理が止まった、運動量が多く何カ月も生理が来ていない、将来の妊娠や骨の健康が不安という方に対して、月経周期を取り戻しやすい身体環境を目指します。
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Vol.018|10代・20代のPMS・PMDDとは?
Vol.019|生理不順とは?
参考文献
- 日本産科婦人科学会.体重減少性無月経および摂食障害に関して.2024.
- Gordon CM, et al. Functional Hypothalamic Amenorrhea: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline. J Clin Endocrinol Metab. 2017.
- Mountjoy M, et al. 2023 International Olympic Committee’s Consensus Statement on Relative Energy Deficiency in Sport. Br J Sports Med. 2023.
- American College of Obstetricians and Gynecologists. Amenorrhea: Absence of Periods.
- American College of Obstetricians and Gynecologists. Primary Ovarian Insufficiency in Adolescents and Young Women.