- 森田智史ブログ
自律神経シリーズ Vol.024|
「寝つきは悪くないのに、夜中に2〜3回目が覚める」
「3時ごろに目が覚めると、そのあと眠れない」
「物音で目が覚めると、そこから頭が働き始める」
「夜中に目が覚めた瞬間、仕事のことを考えてしまう」
「朝まで寝ているはずなのに、熟睡した感じがない」
このような方は少なくありません。
今回考えたいのは、単に「眠りが浅い」ということではなく、
身体がいったん眠りに入っても、休息状態を維持できているか
という問題です。

「眠れるけれど、眠り続けられない」
不眠には、
・なかなか寝つけない
・夜中に何度も目が覚める
・早朝に目が覚めてしまう
など、いくつかのパターンがあります。
夜中に目が覚めても、すぐ再び眠れるのであれば必ずしも問題ではありません。
しかし、
「何度も目が覚める」
「目が覚めるたびに頭が冴える」
「翌日に疲労や集中力低下が残る」
状態が続く場合は、睡眠を維持する仕組みに負担がかかっている可能性があります。
慢性不眠では、睡眠中にも覚醒レベルが十分に下がらない「hyperarousal(過覚醒)」という考え方があります。
2024年の研究でも、不眠症では夜だけでなく24時間を通した皮質の過覚醒が示唆されています。(PubMed)
「頭は寝たいのに、身体が起きている」
患者さんからよく聞くのが、
「眠いのに身体が落ち着かない」
「夜中に目が覚めると心臓がドキドキする」
「歯を食いしばっている」
「首や肩に力が入っている」
という訴えです。
不眠の過覚醒は、単に考え事が多いという意味ではありません。
脳の覚醒、ストレス反応、内分泌、自律神経など、複数のシステムが関係すると考えられています。
一方で、自律神経、とくに「交感神経が高いから不眠になる」と単純に言い切れるほど研究結果は一貫していません。
現在は、認知・脳・身体を含めた多面的な過覚醒として考える方が適切です。(PubMed)
森田治療室では「寝ているときの身体の緊張」をみます
夜中に何度も目が覚める方では、
・朝から顎が疲れている
・後頭部や首が硬い
・胸郭が動きにくい
・みぞおちに力が入っている
・呼吸が浅い
・寝返りのたびに身体が目覚める
といった状態がないか確認します。
特に注目するのが、
頭頸部 → 胸郭 → 横隔膜 → 脊柱・骨盤
という身体全体のつながりです。
眠っている間も呼吸は続きます。
胸郭や肋骨が硬く、横隔膜が十分に動けず、首の筋肉を使った呼吸になっていると、身体は睡眠中も余計な筋活動を続けることになります。
これが直接「中途覚醒の原因」と証明されているわけではありませんが、夜間に身体が脱力しやすい環境になっているかを考えるうえで重要なポイントです。
首・顎・後頭部が緩めない人
夜中に目が覚める方では、頭頸部も丁寧に確認します。
食いしばりが強いと、
顎
↓
側頭部
↓
後頭部
↓
上位頸椎
へ緊張が続きます。
また、仕事や人間関係のストレスが続いている人では、布団に入っても肩が上がり、顎を噛み締めたまま眠っていることがあります。
身体は横になっている。
目も閉じている。
しかし、身体の緊張システムは完全にはOFFになっていない。
この状態を改善できないかという視点で身体を評価します。
呼吸と自律神経の関係
呼吸は、自律神経と身体の状態をつなぐ重要な要素です。
223研究をまとめた2022年のメタ解析では、ゆっくりした呼吸によって迷走神経性の心拍変動指標が増加することが報告されています。
つまり呼吸パターンと自律神経活動には、明確な生理学的関連があります。
ただし、
「横隔膜を緩めれば不眠が治る」
という意味ではありません。
森田治療室では、
・胸郭が十分広がるか
・肋骨が呼吸に合わせて動くか
・横隔膜の左右差がないか
・首の補助呼吸筋を使いすぎていないか
を確認し、少ない力で呼吸できる身体環境を目指します。
オステオパシーでは最初に全体を整える
夜中に目が覚めるからといって、
「自律神経を直接調整する」
という単純な施術ではありません。
まず、
・頭頸部、後頭部
・顎
・胸郭上口
・肋骨、胸椎
・横隔膜
・脊柱
・仙骨、骨盤
・全身の筋膜
を確認します。
最初の数回では、細かな問題を追いかけるよりも、身体全体の緊張を落とし、神経・呼吸・循環が協調しやすい状態をつくることを優先します。
その後、
「上位頸椎に強い制限が残る」
「片側の胸郭だけ動かない」
「過去の交通事故以降、首の緊張が続いている」
「食いしばりが非常に強い」
など、その人に残っている問題を細かく評価します。
オステオパシーと自律神経の研究
オステオパシーによる自律神経への影響についても研究されています。
2019年のシステマティックレビューでは、いくつかのオステオパシー手技後に自律神経関連指標の変化が報告されていますが、研究規模が小さく、手技による違いも大きいため、まだ確立した結論には至っていません。(PubMed)
また2023年には、健康成人35名を対象にCV4やrib raising後の心拍変動を評価した研究もあります。(PubMed)
これらは**「オステオパシーで不眠が治る」という根拠ではありません。**
一方で、身体への手技刺激と自律神経活動の関係を科学的に検討する研究は少しずつ進んでいます。
森田治療室では、こうした研究と臨床での身体評価を組み合わせて考えています。
夜中に目が覚める原因は自律神経だけではありません
次のような場合には、睡眠の専門的な評価も重要です。
・大きないびきがある
・睡眠中に呼吸が止まる
・夜中に何度も尿意で起きる
・脚がムズムズして眠れない
・強い痛みで目が覚める
・更年期のほてりや発汗が強い
・日中に強烈な眠気がある
慢性的な不眠では、現在もCBT-I(不眠症に対する認知行動療法)が中心的な治療として推奨されています。AASMも2025年時点でCBT-Iを重要な治療選択肢として位置づけています。(睡眠医学アカデミー)
「眠る力」だけでなく「眠り続けられる身体」へ
寝つくことはできる。
でも、身体が小さな刺激に反応して何度も目覚めてしまう。
そんな方では、
「どうしたら眠れるか」だけでなく、
「夜の間、身体が休息状態を維持できているか」
を見ることが大切です。
岡山・倉敷の森田治療室では、
頭頸部、顎、胸郭、横隔膜、脊柱、骨盤、自律神経などを身体全体から評価し、
夜間に余計な緊張を続けず、朝まで回復しやすい身体環境
を目指します。
シリーズバックナンバー
関連シリーズ
Vol.003|自律神経失調症とは?
Vol.013|朝から疲れる・寝ても疲れが取れないのはなぜ?
Vol.023|朝起きた瞬間から身体が重いのはなぜ?
参考文献
- Rösler L, et al. Hyperarousal dynamics reveal an overnight increase boosted by insomnia. J Psychiatr Res. 2024.
- Dai Y, et al. Insomnia disorder is associated with 24-hour cortical hyperarousal. Sleep Med. 2024.
- Riemann D, et al. Hyperarousal in insomnia disorder: Current evidence and potential mechanisms. 2023.
- Zhang S, et al. Effects of sleep deprivation on heart rate variability: a systematic review and meta-analysis. 2025.
- Effectiveness of an osteopathic treatment on the autonomic nervous system: a systematic review of the literature. 2019.
- Stępnik J, et al. Effects of the Fourth Ventricle Compression Technique and Rib Raising Osteopathic Technique on Autonomic Nervous System Activity. 2023.