2026.08.10
  • 森田智史ブログ
天気が悪くなると頭痛やだるさが出るのはなぜ?

自律神経シリーズ Vol.031|

「雨が降る前になると頭が重くなる」

「台風が近づくと頭痛が出る」

「天気が悪い日は、朝から身体がだるい」

「頭痛だけでなく、首こり・眠気・めまいも一緒に出る」

このような症状を経験している方は少なくありません。

「気圧のせい」と言われることもありますが、実際には、

低気圧になれば誰でも頭痛が起こるわけではありません。

重要なのは、気圧そのものよりも、

外部環境が変化したときに、身体の神経系がどのように反応し、元の状態へ戻れるか

という視点です。


気圧と頭痛には、本当に関係がある?

近年はスマートフォンの頭痛記録と気象データを組み合わせた大規模研究も行われています。

2026年に発表された研究では、カナダ・オンタリオ州の7,418人、69,808回の片頭痛発作を解析した結果、気圧の低下や変化、冬季の低温などと片頭痛発作との関連が報告されました。(PubMed)

日本でも、33万件以上の頭痛記録を解析した研究で、

・低い気圧
・気圧の低下
・湿度上昇
・降雨

などと頭痛発生数との関連が確認されています。(PubMed)

一方、2025年のシステマティックレビューでは14研究・2,696人を検討し、気圧低下や急激な変化が片頭痛の頻度に関係する可能性はあるものの、研究結果にはばらつきがあり、頭痛の強さや持続時間との関係は明確ではないとされています。(PubMed Central (PMC))

つまり、

「気圧と頭痛には関係がない」でも、
「低気圧なら必ず頭痛になる」でもありません。

気象変化に反応しやすい人がいる、と考えるのが現在のところ適切です。


「気圧が下がると血管が膨らむから痛い」だけではない

気圧頭痛について、

「低気圧になると血管が膨張して頭痛になる」

と説明されることがあります。

しかし、現在の片頭痛は単純な血管の拡張だけで説明できる病態ではありません。

気圧変化による頭痛の仕組みも完全には解明されていませんが、三叉神経系、脳幹、血管調節、感覚処理など複数の神経機構が関係すると考えられています。(PubMed)

つまり天気は、

頭痛を直接「作る原因」というより、もともと頭痛が起こりやすい神経系に対する一つの刺激

として考えた方が分かりやすいと思います。


頭痛だけでなく「だるい・眠い・首が重い」こともある

天気が悪い日に、

「頭痛になる前から眠い」

「身体が重くて動きたくない」

「首がいつも以上に硬くなる」

という方もいます。

片頭痛では、頭痛が始まる前後に頭痛以外の症状が出ることがあります。

電子日記を用いた研究では、片頭痛の前兆期に、

疲労感、集中しにくさ、首のこわばり

などが多く報告されています。(PubMed)

また頭痛が治まった後にも、疲労感や集中力低下、首のこわばりなどが残る場合があります。120人を追跡した研究では、片頭痛後の症状があった97人のうち、疲労・倦怠感は非常に多くみられました。(PubMed Central (PMC))

そのため、

「天気が悪いから身体がだるい」

と単純に考えるのではなく、頭痛を含めた神経系の反応の一部として倦怠感が現れている場合もあります。


同じ気圧でも、平気な日としんどい日がある

ここが重要です。

同じくらい気圧が下がっていても、

「今日は大丈夫」

という日もあれば、

「今日は頭痛が強い」

という日があります。

違いとして考えられるのは、

睡眠不足
仕事のストレス
生理周期
疲労
首肩の緊張
呼吸状態
すでに頭痛が起こりかけている状態

などです。

つまり身体には、刺激へ対応できる**「余裕」**があります。

余裕が十分にあるときには、多少の環境変化があっても身体は対応できます。

しかし、すでに神経系や筋肉の緊張が強く、痛みに対する感受性が高くなっている状態では、小さな変化も症状として感じやすくなる可能性があります。

フォッサムD.O.の神経学講義でも、末梢から続く侵害受容入力によって神経系の感受性が高まり、痛みの閾値が低下する「感作」が整理されています。

これは「気圧が感作を起こす」という意味ではありません。

もともとの神経系の状態によって、外部刺激への反応の大きさが変わる可能性がある

という考え方です。


首こり・肩こりが一緒にある場合

天気で頭痛が出る方には、

「普段から首が硬い」

「肩が上がっている」

「後頭部がいつも張っている」

「食いしばりも強い」

という方もいます。

この場合、森田治療室では「気圧だけ」を原因として考えません。

後頭部・上部頸椎には頭部の位置や動きを脳へ伝える感覚入力があります。

また首・顎・胸郭が強く緊張していると、それ自体が身体へ入る感覚刺激になります。

痛みの神経生理では、末梢からの入力が増え続けることで、脊髄後角などで痛みの処理が増幅されることがあります。フォッサムD.O.の資料でも、末梢感作から中枢感作へ移行すると、閾値低下や受容野の拡大、交感神経系への波及などが起こり得ると整理されています。


オステオパシーでは「気圧を治す」わけではありません

もちろん、天気を変えることはできません。

そのため森田治療室で目指すのは、

「低気圧にならないようにすること」ではなく、環境が変化しても身体が対応できる余裕をつくること。

評価するのは、

後頭部・頭蓋底

上部頸椎・後頭下筋群

顎・首周囲

胸郭上口・第1肋骨

胸椎・肋骨

横隔膜

腹部・骨盤

などです。

特に、

自律神経
呼吸のバイオメカニクス
循環

は別々ではなく、互いに関係しています。

フォッサムD.O.の講義でも、A=Autonomic Nervous System、B=Biomechanics of Respiration、C=Circulationという「ABC」の視点から、神経・呼吸・循環を統合して考える枠組みが紹介されています。


横隔膜や呼吸も確認する理由

頭痛なのに、

「なぜ横隔膜を見るのですか?」

と思うかもしれません。

呼吸では、横隔膜が動くことで胸腔内の圧力が変化し、静脈還流などにも影響します。

また身体が緊張していると、

呼吸が浅くなる

首や肩の呼吸補助筋を使う

首・後頭部がさらに緊張する

という状態になることもあります。

そのため、

頭だけを施術するのではなく、頭頸部・胸郭・横隔膜・骨盤まで全体を確認する

ことが重要だと考えています。


目標は「天気に反応しない身体」ではない

人間の身体は、環境が変われば反応します。

暑ければ汗をかく。

寒ければ血管を収縮させる。

気圧や湿度が変化すれば、それを身体が感じ取ること自体は不自然ではありません。

大切なのは、

環境が変わる

身体が反応する

必要な調節をする

また元の状態へ戻る

という流れです。

森田治療室では、

「天気が悪くなると必ず頭痛がする」

「雨の前は一日中寝込んでしまう」

という方でも、気圧だけを追いかけるのではなく、

なぜその人の身体が環境変化に対して大きく反応しているのか

を身体全体から考えていきます。

岡山・倉敷で、天気による頭痛・だるさ・めまい・首こりなどが重なっている方にも、

神経・呼吸・循環が環境の変化に適応できる「余裕のある身体」

という視点を知っていただければと思います。

※突然これまでにない激しい頭痛が出た、ろれつが回らない、手足の麻痺・脱力、意識障害、発熱や項部硬直を伴う頭痛などは、気圧の影響と自己判断せず、速やかに医療機関で評価を受けてください。


シリーズバックナンバー

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関連シリーズ
Vol.008|頭痛が繰り返されるのはなぜ?
Vol.003|自律神経失調症とは?
Vol.010|食いしばり・歯ぎしり・顎関節の不調はなぜ起こる?


参考文献

Farah A, et al. Impact of Barometric Pressure Changes on the Severity, Frequency, and Duration of Migraine Attacks: A Systematic Review of the Literature. Cureus. 2025. (PubMed)

Katsuki M, et al. Investigating the effects of weather on headache occurrence using a smartphone application and artificial intelligence. Headache. 2023. (PubMed)

Weather, air pollution, and migraine: A case-time series analysis examining environmental exposures and transient health outcomes recorded via smartphone application. 2026. (PubMed)

Karsan N, Goadsby PJ, et al. Migraine premonitory/postdrome symptom studies. (PubMed Central (PMC))