2026.08.10
  • 森田智史ブログ
手足が冷えるのに顔だけほてるのはなぜ?

自律神経シリーズ Vol.029|

「足先は冷たいのに、顔だけ熱い」

「布団に入っても足がなかなか温まらない」

「緊張すると顔はほてるのに、手は冷たくなる」

「生理痛が強い時期は、下腹部が重く手足も冷える」

このような「冷え」と「ほてり」が同時に起こる状態では、単純に身体全体の体温が低いわけではありません。

大切なのは、身体のどこで熱がつくられ、血流によってどこへ運ばれ、どこから熱を逃がしているのかという視点です。


「体温をつくる=筋肉」だけではありません

体温をつくるというと、

「筋肉量が少ないから冷える」

と説明されることがあります。

もちろん筋肉は重要です。

しかし、安静時のエネルギー消費を見ると、骨格筋が占める割合はおよそ20〜30%程度です。

一方、体重のわずか数%しかない脳・肝臓・心臓・腎臓などの代謝が活発な臓器だけで、安静時エネルギー消費の約60〜70%を占めると報告されています。(PubMed Central (PMC))

つまり、

安静にしているときの熱産生では、筋肉だけでなく内臓の代謝活動が非常に重要

ということです。

ここでいう熱は「臓器同士がこすれて生じる摩擦熱」ではなく、細胞が生命活動を続けるためにエネルギーを使うことで生じる代謝熱です。肝臓・脳・心臓・腎臓は、筋肉よりも単位重量あたりの代謝率が非常に高いことが知られています。(PubMed)


では、なぜ手足だけ冷たくなるのか?

身体でつくられた熱は、血液によって全身へ運ばれます。

しかし寒さや緊張が加わると、自律神経の働きによって末梢の血管が収縮し、身体の中心部から熱が逃げすぎないように調節します。

その結果、

身体の中心はそれほど冷えていないのに、手足だけ冷たい

という状態が起こります。

一方で顔では血管が広がり、

「顔だけ熱い」

「頬が赤くなる」

「頭や胸から上だけほてる」

という反応が同時に起こることもあります。

自律神経は全身の血管をすべて同じように動かしているわけではありません。

そのため、手足は冷たいのに顔はほてるという一見矛盾した状態も起こり得ます。


生理痛が強い人では骨盤周囲も確認します

女性の場合、

「生理前になると足が冷える」

「生理痛が強いと下腹部が硬く感じる」

「腰や骨盤まで緊張している」

という方もいます。

生理痛の代表的な仕組みの一つとして、プロスタグランジンの増加によって子宮筋の収縮や血管収縮が強くなり、子宮への血流が低下して痛みにつながることが知られています。(PubMed Central (PMC))

ただし、

「子宮周囲が硬いから熱をつくれず、そのため手足が冷える」

という直接的な因果関係まで医学的に証明されているわけではありません。

森田治療室ではここを少し違う視点で考えます。

生理痛があり、

・下腹部や骨盤周囲の緊張が強い
・腰仙部の動きが小さい
・呼吸と骨盤底の協調が乏しい
・身体全体の緊張が強い

という方では、骨盤だけの問題ではなく、呼吸・循環・自律神経を含めた全身の調節状態を確認します。

「子宮を温めれば手足が温まる」という話ではありません。

骨盤内でも十分な血流が保たれ、身体全体で循環を調節しやすい環境になっているかを見る、という考え方です。


オステオパシーでは身体の「中心から末端」までみる

森田治療室では、冷たい手足だけを触って終わるわけではありません。

確認するのは、

後頭部・上部頸椎

胸郭上口・第1肋骨

胸椎・肋骨

横隔膜

腹部

骨盤・骨盤隔膜

下肢

という身体全体です。

特に呼吸では、

小脳テント
胸郭上口・胸膜上膜
呼吸横隔膜
骨盤隔膜

などの「隔膜」が協調して動けているかも確認します。

これはオステオパシーの臨床モデルですが、呼吸横隔膜・腹壁・骨盤底が呼吸や腹腔内圧の変化に合わせて協調することは生理学的にも知られています。


目標は「いつも身体を温めること」ではない

身体に必要なのは、

ずっと血管を広げておくことでも、

常に手足を温かくしておくことでもありません。

寒ければ末梢の血流を減らして熱を守る。

暑ければ皮膚へ血流を送り熱を逃がす。

活動するときには代謝を上げる。

休むときには落ち着く。

この調節が状況に合わせて行えることが重要です。

森田治療室では、

「冷えをなくす」ことだけではなく、身体が必要に応じて熱・血流・呼吸・自律神経をコントロールできる状態

を目指して身体全体を評価しています。

岡山・倉敷で、

手足の冷えと顔のほてりが一緒にある。

生理痛やPMSも強い。

動悸や発汗なども重なっている。

という方では、一つひとつを別の症状として見るのではなく、身体全体の調節という視点から考えてみることも大切です。

※指先が白色・紫色に変化する、強い痛みやしびれ、著しい左右差、強い動悸、急な体重変化などがある場合は、レイノー現象、甲状腺疾患、貧血なども含め医療機関での評価を優先してください。


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Vol.003|自律神経失調症とは?
Vol.019|生理不順とは?
Vol.027|息を深く吸えない・ため息が増えるのはなぜ?


参考文献

Wang Z, et al. Brain and high metabolic rate organ mass: contributions to resting energy expenditure beyond fat-free mass. 高代謝臓器と骨格筋の安静時エネルギー消費への寄与を検討。(PubMed Central (PMC))

Wang Z, et al. Specific metabolic rates of major organs and tissues across adulthood. 肝臓、脳、心臓・腎臓、骨格筋などの組織別代謝率を検討。(PubMed)

Primary Dysmenorrhea: Assessment and Treatment. 月経痛におけるプロスタグランジン、子宮収縮、血流低下・虚血の関係を解説。(PubMed Central (PMC))