- 森田智史ブログ
自律神経シリーズ Vol.037|
「朝までは大丈夫だったのに、仕事へ行こうとすると動悸がする」
「家を出ようとすると、お腹が痛くなる」
「学校の日になると頭痛や吐き気が出る」
「休日は比較的元気なのに、会社や学校がある日は身体が動かない」
このような症状が続くと、
「行きたくないから身体に症状が出ているのかな」
「気持ちの問題なのかな」
と思ってしまう方も少なくありません。
しかし、これは単純に「気の持ちよう」で説明できるものではありません。
人の身体は、実際にストレスを受けている最中だけではなく、これから起こることを予測した段階から反応することがあります。

会社や学校に着く前から身体は反応する
私たちの脳は、
「以前ここで体調が悪くなった」
「今日も大変な仕事がある」
「また人間関係で嫌な思いをするかもしれない」
「学校でうまく過ごせるだろうか」
といった過去の経験やこれから起こることを予測しながら、身体を準備しています。
成人を対象とした研究では、仕事の日は休日と比べて起床後のコルチゾール反応が大きく、仕事への予測や慢性的なストレスとの関連が示されています。(PubMed)
つまり、
会社に着いたから身体が反応するのではなく、
「これから会社へ行く」という段階ですでに身体が反応している
ことがあります。
身体は「危険に備える」ために変化する
人が緊張や不安を感じると、身体にはさまざまな変化が起こります。
心拍が上がる。
呼吸が速く浅くなる。
手に汗をかく。
筋肉に力が入る。
胃腸の感覚が変わる。
身体が重く感じる。
こうした反応そのものは、本来は危険や負荷に対応するための正常な反応です。
しかし、
仕事のプレッシャー
人間関係
長時間労働
学校生活
友人関係
勉強や試験
過去に体調を崩した経験
などが長く続くと、身体が「また何か起こるかもしれない」と反応しやすくなることがあります。
「家を出ようとすると症状が出る」という循環
例えば以前、通勤中に強い動悸が起きたとします。
すると次の日から、
会社へ行く準備をする
↓
「昨日みたいになったらどうしよう」
↓
心拍や身体の感覚に意識が向く
↓
少し心拍が上がっていることに気づく
↓
不安になる
↓
呼吸が浅くなる
↓
身体に力が入る
↓
さらに動悸や息苦しさを感じる
という循環になることがあります。
お腹の場合も同じです。
「通勤途中でトイレに行きたくなったらどうしよう」
と思うほど腸の感覚へ注意が向き、腹痛や便意を強く感じることがあります。
だからといって、
「症状は頭の中で作っている」わけではありません。
身体の反応と不安、記憶、予測が互いに影響していると考える方が自然です。
子どもでは「身体の症状」が前面に出ることもある
学校へ行けない子どもでも、
「学校が嫌」
とはっきり言えるとは限りません。
朝になると、
腹痛
吐き気
頭痛
めまい
動悸
身体のだるさ
などが出ることがあります。
不安や抑うつを伴って登校が難しくなった思春期の子どもを調べた研究では、身体症状の中でも自律神経系や消化器系に関係する訴えが多くみられました。(PubMed)
また、地域の子どもを対象にした研究でも、不安を伴う登校困難は、分離不安や抑うつ、睡眠問題、身体症状などと関連していました。(PubMed)
そのため、
「学校に行きたくないだけ」
「甘えている」
と身体症状を軽く扱わないことが大切です。
一方で、学校へ行けない原因は一つではありません。
発達特性、人間関係、学習面、家庭環境、睡眠、精神的な問題、身体疾患などを含めて考える必要があります。
「会社・学校が原因」とも決めつけない
ここも非常に重要です。
会社へ行く日に体調が悪くなるからといって、
「会社のストレスがすべての原因」
とは限りません。
例えば、
睡眠不足
貧血
甲状腺の問題
不整脈
低血圧
起立不耐症
片頭痛
胃腸疾患
感染症後の体調不良
などがあり、そこへ仕事や学校への負荷が重なって症状が強くなっている場合もあります。
特に、
立つと強い動悸やめまいがする
失神する
体重が減っている
発熱が続く
強い胸痛がある
学校や仕事と関係なく症状が悪化している
という場合には、医学的な評価を優先する必要があります。
身体そのものに「余裕」がなくなっていることも
同じ仕事、同じ学校環境でも、毎日同じように反応するわけではありません。
よく眠れた日は比較的大丈夫なのに、
寝不足の日はつらい。
疲労が溜まると動悸が出る。
頭痛や生理前の時期には不安感も強い。
このような経験がある方も多いと思います。
これは、外から受けるストレスだけではなく、そのストレスを受け止める身体側の状態も関係しているということです。
慢性的な疲労。
睡眠不足。
浅い呼吸。
食いしばり。
首や肩の緊張。
胸郭の硬さ。
慢性的な痛み。
こうした身体的な負担が重なっていれば、同じ刺激に対しても余裕が少なくなります。
オステオパシーでは身体全体から考える
森田治療室では、
「会社へ行くと不安になるから自律神経を整える」
「学校へ行けないから精神的な問題」
と単純には考えません。
まず身体全体を確認します。
後頭部・上部頸椎
↓
顎・頸部
↓
胸郭上口・肋骨
↓
胸椎
↓
横隔膜
↓
腹部
↓
腰椎
↓
骨盤・仙骨
↓
下肢
呼吸はしやすいのか。
胸郭は十分動くのか。
身体に力が入り続けていないか。
過去の外傷や手術の影響はないか。
痛みそのものが継続的な負担になっていないか。
まず全体を確認し、そこから残っている具体的な問題をみていきます。
オステオパシーの神経学セミナーでも、局所的な問題へ進む前に、身体全体を整える「プラットフォーム」をつくる臨床的な考え方が示されています。
これは、
「身体を施術すれば会社や学校へ行けるようになる」
という意味ではありません。
オステオパシーでは、身体全体を評価し、神経・呼吸・循環・関節・筋膜などが働きやすい身体環境を整えることを目的としています。
環境を変えることが必要な場合もある
身体を整えることだけですべて解決するわけではありません。
過度な仕事量。
ハラスメント。
いじめ。
強い人間関係のストレス。
発達特性と環境のミスマッチ。
精神的に大きく消耗している状態。
こうした場合には、
「ストレスに耐えられる身体をつくればいい」
という話ではありません。
休養や環境調整、医療機関、心理職、学校、職場などとの連携が必要な場合もあります。
身体側へのアプローチと、環境への対応は別々ではなく、必要に応じて両方を考えることが大切です。
目指すのは「我慢して行ける身体」ではない
森田治療室が目指しているのは、
会社や学校がどれだけつらくても我慢できる身体ではありません。
ストレスをゼロにすることでもありません。
必要な場面では反応する。
緊張することがあってもいい。
少し体調を崩しても、そこからまた戻ることができる。
そのための
「身体の余裕」
を取り戻していくことを大切にしています。
「行こうとすると身体がしんどくなる」という反応には、何らかの背景があります。
その反応を無理に押さえ込むのではなく、
なぜ身体がそこまで反応しているのかを、心と身体の両方から整理していくこと。
それが最初の一歩だと考えています。
岡山・倉敷で、会社や学校へ行こうとすると体調が悪くなる方へ
「仕事の日になると動悸や吐き気が出る」
「家を出ようとするとお腹が痛くなる」
「子どもが学校の日だけ頭痛や腹痛を訴える」
「病院では大きな異常がないけれど、症状を繰り返している」
このような場合もご相談いただいています。
森田治療室では、症状だけではなく、これまでの経過、睡眠、呼吸、過去の外傷、身体の緊張などを含めて身体全体を確認します。
「このような症状でも相談できますか?」
というお問い合わせだけでも大丈夫です。
シリーズバックナンバー
関連シリーズ
Vol.003|自律神経失調症とは?
Vol.033|自律神経の乱れはなぜ起こる?
Vol.034|自律神経の不調が何年も続くのはなぜ?
参考文献
Kunz-Ebrecht SR, Kirschbaum C, Marmot M, Steptoe A. Differences in cortisol awakening response on work days and weekends in women and men from the Whitehall II cohort. Psychoneuroendocrinology. 2004. (PubMed)
Bernstein GA, et al. Somatic symptoms in anxious-depressed school refusers. J Am Acad Child Adolesc Psychiatry. 1997. (PubMed)
Egger HL, Costello EJ, Angold A. School refusal and psychiatric disorders: a community study. J Am Acad Child Adolesc Psychiatry. 2003. (PubMed)
※本記事は情報提供を目的としており、医学的な診断や治療の代わりとなるものではありません。症状が強い場合や長く続く場合には、必要に応じて医療機関での評価を受けてください。