2026.08.17
  • 森田智史ブログ
自律神経の不調が何年も続くのはなぜ?

自律神経シリーズ Vol.034|

「もう何年も、体調がすっきりしない」

「頭痛が落ち着いたと思ったら、今度は動悸や胃腸の不調が出る」

「病院で検査をしても大きな異常はない」

「薬、運動、食事、いろいろ試したけれど、また調子を崩してしまう」

自律神経に関わるような不調は、数週間で落ち着く方もいれば、何年も続く方もいます。

なぜなのでしょうか。

大切なのは、

「自律神経そのものが壊れてしまった」

と考えないことです。

長く続く不調では、一つの原因が残っているというより、

ストレス・睡眠・痛み・呼吸・身体の緊張・活動量・不安など、複数の負担が重なり、身体が元の状態へ戻るための“余裕”が少なくなっている

ことがあります。


自律神経は常に変化している

自律神経は、

心拍
血圧
体温
発汗
呼吸
消化
血流

など、私たちが意識しなくても身体の状態を調節しています。

緊張すれば心拍が上がる。

運動すれば呼吸が増える。

食事をすれば消化器が働く。

眠るときには身体の状態が変わる。

つまり、自律神経は「一定であること」が正常なのではなく、環境に合わせて変化できることが重要です。

問題になるのは、ストレスに反応することそのものではありません。

反応したあとに、なかなか元の状態へ戻れないこと。

この状態が積み重なると、不調が慢性化する一つの背景になります。


① ストレスが終わっていない

自律神経の不調が長く続く方をみていると、ストレスそのものが現在も続いていることがあります。

例えば、

仕事
人間関係
家庭の問題
子育て
介護
学校
睡眠不足
慢性的な痛み
病気への不安

などです。

ストレスは「精神的な問題」だけではありません。

身体の痛みや睡眠不足、長期間の体調不良そのものも身体にとっては負担です。

慢性的なストレスでは、自律神経だけでなく、内分泌・免疫など複数の調節系が関係します。こうした長期間の適応負荷を「アロスタティック・ロード」という考え方で捉えることもあります。(PubMed)


② 症状そのものが新しいストレスになる

最初は仕事のストレスで動悸が始まった。

しかし数か月すると、

「また動悸が起きたらどうしよう」

という不安が生まれる。

すると、

動悸

不安になる

呼吸が浅くなる

身体が緊張する

心拍をさらに意識する

もっと不安になる

という循環ができることがあります。

これは動悸だけではありません。

頭痛、めまい、腹痛、息苦しさなどでも起こります。

身体内部からの情報を脳が受け取り認識する仕組みを「内受容感覚(interoception)」といいます。

近年の神経科学でも、内受容感覚と自律神経、感情・不安は密接に関係していることが整理されています。(PubMed)

つまり、

症状がある → 不安になる → 身体をさらに注意深く監視する → 小さな変化にも気づく

という状態が続くことがあります。

これは「気にしすぎ」という意味ではありません。

実際の身体感覚と、それを処理する神経系の両方が関係しています。


③ 「身体を守る状態」が長く続いている

体調が悪いとき、人間の身体は自然に身構えます。

肩が上がる。

顎を食いしばる。

背中が硬くなる。

呼吸が浅くなる。

お腹に力が入る。

身体を守るためには必要な反応ですが、これが長期間続けば、

頭痛
肩首こり
食いしばり
呼吸のしにくさ
慢性的な痛み

など、新しい負担が重なることがあります。

慢性疼痛では、痛みの処理に関わる神経系の変化や末梢・中枢の感作など、複数の神経生理学的機序が関係する可能性があります。ただし、慢性痛をすべて「中枢性感作」で説明できるわけではなく、その因果関係には現在も議論があります。(PubMed)

だからこそ、長く続く不調では、

「最初の原因は何だったのか」だけではなく、「現在も身体にどのような負担が残っているのか」

を見る必要があります。


④ 睡眠・呼吸・活動量も影響する

何年も体調が悪いと、

眠れない

疲れる

身体を動かさなくなる

体力が落ちる

少し動くだけで動悸や息切れを感じる

さらに動くのが怖くなる

という循環になることもあります。

特に立ったときの動悸・めまい・倦怠感などが長く続く場合には、単に「自律神経の乱れ」で片づけず、起立不耐症やPOTS、起立性低血圧などを含めた医学的評価が必要になることがあります。

現在の研究でも、起立不耐症は一つの原因で起こるものではなく、循環血液量、静脈還流、自律神経調節など複数の生理学的要因を含む不均一な状態として考えられています。(PubMed)


「交感神経が高いから」だけでは説明できない

自律神経の不調というと、

「交感神経が優位になっている」

「副交感神経が弱くなっている」

と説明されることがあります。

分かりやすい表現ですが、慢性的な不調をこれだけで説明するのは十分ではありません。

自律神経は時間帯、姿勢、呼吸、運動、食事、感情などによって絶えず変化しています。

そのため森田治療室では、

交感神経を下げること自体を目的にはしていません。

必要なときには身体が緊張できる。

そして必要がなくなれば、自然に戻る。

この反応と回復の柔軟性を大切にしています。


オステオパシーでは「どこが悪いか」より全体から確認する

症状が何年も続いている方では、

頭痛だから頭だけ。

動悸だから胸だけ。

腹痛だからお腹だけ。

という見方では十分でないことがあります。

森田治療室では、まず身体全体を評価します。

例えば、

後頭部・上部頸椎

胸郭上口・第1肋骨

胸椎・肋骨

呼吸横隔膜

腹部

腰椎・骨盤・仙骨

下肢

などを確認します。

見るのは「骨のズレ」だけではありません。

呼吸がしやすいか。

胸郭が十分に動いているか。

身体に常に力が入っていないか。

関節や筋膜に強い制限がないか。

過去の外傷や手術痕が残っていないか。

痛みなど身体からの刺激が持続していないか。

こうした身体側の負担を一つずつ整理します。

オステオパシーで自律神経そのものを直接「正常化する」という意味ではありません。

神経・呼吸・循環・関節・筋膜などが働きやすい身体環境をつくることを目的としています。


最初から細かい場所だけを追いかけない

長く不調が続いている方ほど、身体には複数の問題が重なっていることがあります。

そのため森田治療室では、最初から一つの臓器や一つの関節だけを原因と決めるのではなく、

まず身体全体の緊張や動きを確認し、全体性を調節していきます。

そのうえで、

頭頸部

過去の交通事故
手術痕
古い捻挫
腰や骨盤
腹部

など、残っている具体的な問題をさらにみていきます。

「一つの悪いところを探す」のではなく、身体の余裕を奪っているものを少しずつ減らしていく。

これが長く続く不調では特に重要だと考えています。


何年も続いていても「もう戻らない」とは限らない

症状が3年、5年、10年と続いていると、

「もうこの身体は元に戻らないのでは」

と思ってしまう方もいます。

しかし「長く続いている」ということと、「身体が永久に壊れている」ということは同じではありません。

一方で、何年も続く症状をすべて「自律神経」や「ストレス」で説明することもできません。

甲状腺疾患、貧血、不整脈、睡眠障害、神経疾患、起立性の循環障害など、医学的に確認すべき原因が隠れていることもあります。

必要な検査や治療を受けながら、

睡眠・痛み・呼吸・身体の緊張・活動量・ストレスなど、今の身体に残っている負担を整理していくこと

が大切です。


目指すのは「自律神経が乱れない身体」ではない

生きていれば、ストレスはあります。

仕事で緊張することもある。

家族のことで悩むこともある。

体調を崩すこともあります。

だから目標は、

一切反応しない身体をつくることではありません。

緊張するときには緊張する。

心拍が上がるときには上がる。

でも、その必要がなくなればまた戻れる。

そして多少体調を崩しても、自分自身で回復できる。

森田治療室では、そのような**「余裕のある身体」**を目指しています。


岡山・倉敷で、何年も続く不調に悩んでいる方へ

「いろいろな病院へ行った」

「薬も試した」

「食事や運動も変えた」

「マッサージや施術も受けた」

それでも、

頭痛
動悸
めまい
息苦しさ
腹痛
不眠
疲労感
不安感

などが繰り返されている。

そのような方では、症状を一つずつ追いかけるだけではなく、身体全体を一度整理してみることも一つの考え方です。

森田治療室では、症状がある場所だけでなく、これまでの経過や過去の外傷、呼吸、身体の緊張、睡眠などを確認しながら、身体全体を評価しています。

「自分の症状でも相談していいのだろうか」というご質問だけでも大丈夫です。

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Vol.033|自律神経の乱れはなぜ起こる?


参考文献

Critchley HD, Patchitt J. Interoception, Insula, and Autonomic Integration: Relevance to the Expression and Treatment of Psychiatric Symptoms. Curr Top Behav Neurosci. 2025. (PubMed)

Remmers MCC, et al. Defining and distinguishing early life stress, trauma, adversity, toxic and chronic stress and allostatic load: a descriptive review. Scand J Public Health. 2024. (PubMed)

Edgell H, et al. Women, orthostatic tolerance, and POTS: a narrative review. Auton Neurosci. 2025. (PubMed)

Daon LD, et al. Prioritizing Function: Practical Management of Orthostatic Intolerance and Autonomic Dysfunction. Pediatr Ann. 2026. (PubMed)

Velasco E, et al. Is chronic pain caused by central sensitization? A review and critical point of view. Neurosci Biobehav Rev. 2024. (PubMed)

※本記事は情報提供を目的としており、医学的な診断や治療の代わりとなるものではありません。