2026.08.19
  • 森田智史ブログ
腰痛・坐骨神経痛はなぜ起こる?

自律神経シリーズ Vol.041|

「腰が痛いから、腰を揉んでもらう」

「腰をストレッチする」

「腰の筋肉を鍛える」

それでも、何度も腰痛を繰り返す。

このような場合、

本当に腰だけを見ればよいのでしょうか。

身体を動かすとき、腰だけが単独で動いているわけではありません。

胸椎、骨盤、股関節、膝、足部などが連動しながら、身体全体で動きを分担しています。

そのため森田治療室では、

「腰が痛い=腰に原因がある」

とは最初から考えません。

特に重要だと考えているのが、

胸椎と股関節の可動性です。


腰は「動きを引き受ける場所」になることがある

例えば、床にある物を取ろうとして身体を前へ曲げるとします。

この動きは、

胸椎
腰椎
骨盤
股関節

などが協調して行います。

ところが、

股関節が十分に曲がらない。

胸椎が硬く、身体を回旋・伸展しにくい。

という状態では、必要な動きを別の場所で補う必要があります。

その一つが腰椎です。

つまり、

胸椎・股関節の動きが少ない

腰椎がその動きを補う

同じ部分へ繰り返し負担が集中する

という運動パターンが生じる可能性があります。

実際、腰痛のある人では股関節の可動域、特に内旋などに違いがみられる研究があります。ただし、この関連を支持するエビデンスの確実性は高くなく、「股関節が硬いから腰痛になる」とまで断定することはできません。 (PubMed)


胸椎も腰痛と無関係ではない

腰痛というと、

腰椎
骨盤
股関節

に注目しがちです。

しかし身体をひねる、反る、歩く、物を持ち上げるといった動作では、胸椎も重要な役割を持っています。

腰痛のある人とない人を比較した研究をまとめたメタ解析では、腰痛群では腰椎だけでなく、胸椎の前額面・水平面の可動性にも低下がみられました。 (PubMed)

ここでも、

「胸椎が硬いから腰痛になる」

という単純な因果関係ではありません。

しかし臨床的には、

腰に負担が集中している人ほど、腰から離れた胸椎や股関節まで確認する

という考え方には意味があります。


腰痛は「腰が動かなさすぎる」だけではない

腰痛になると、

「腰が硬いからもっと動かした方がいい」

と思うことがあります。

しかし実際には、身体全体でみると、

動いていない場所と、動きすぎている場所が混在している

ことがあります。

例えば、

胸椎 → 動きにくい
股関節 → 動きにくい
腰椎 → 代わりに動く

という状態です。

この場合、

腰だけをさらにストレッチするよりも、

なぜ腰がそこまで動かなければならないのか

を見る必要があります。

腰痛患者では、機能動作における腰椎・股関節・体幹の運動パターンが健常者と異なることが報告されていますが、「腰椎が必ず過剰に動く」という一つのパターンで全員を説明できるわけではありません。 (PubMed)


腰痛の原因は一つではない

ここは大切です。

腰痛には、

椎間板
椎間関節
仙腸関節
筋肉・筋膜
神経
外傷
炎症

など、さまざまな組織が関係することがあります。

一方で、一般的な腰痛の多くでは、痛みの原因となっている一つの組織を明確に特定できないこともあります。

ですから、

「腰痛=股関節が硬い」

と考えるのも、

「腰痛=椎間板」

と考えるのも単純すぎます。

フォッサムD.O.の講義でも、腰痛・骨盤痛では腰部だけでなく骨盤のねじれなどを確認し、機械的モビリティ・神経的モビリティ・循環という複数の視点から全体像を組み立てる考え方が示されています。


「坐骨神経痛」も全部同じではない

お尻から太もも、ふくらはぎにかけて痛みやしびれがあると、

「坐骨神経痛」

と言われることがあります。

しかし、脚へ広がる痛みにはいくつかのタイプがあります。

本当の神経根性疼痛では、椎間板ヘルニアなどによって神経根が圧迫・炎症を起こすことがあり、機械的圧迫と炎症の両方が症状に関係すると考えられています。 (PubMed)

一方、

腰方形筋
臀部
椎間関節
仙腸関節
胸腰筋膜

などの問題でも、臀部や脚へ広がる「坐骨神経痛のような痛み」が出ることがあります。

フォッサムD.O.の講義でも、神経根性の痛みと深部組織からの関連痛を区別すること、腰方形筋などから坐骨神経痛様の症状が出る可能性が紹介されています。

つまり、

脚が痛い=すべて坐骨神経が圧迫されている

とは限りません。


坐骨神経痛でも股関節と胸椎を見る理由

本当の神経根症がある場合、

股関節や胸椎を動かせば神経根の炎症が直接治る、

という意味ではありません。

しかし、身体を動かすたびに腰椎へ負担が集中している状態であれば、

胸椎
股関節
骨盤

などの運動を確認することには意味があります。

例えば、

股関節が伸びない

歩くとき腰を反って補う

股関節が曲がらない

物を拾うとき腰を大きく曲げる

胸椎が回らない

身体をひねるとき腰部が代わりに回る

といった補償パターンです。

これは**坐骨神経痛の直接原因というより、「腰部へ繰り返し負担を集中させる身体環境」**として考えます。


森田治療室では「腰だけ」をみない

腰痛・坐骨神経痛の方でも、最初から腰だけに施術を集中するわけではありません。

まず、

胸椎・胸郭

横隔膜

腰椎

骨盤・仙骨

股関節



足部

まで身体全体を確認します。

そして、

胸椎は十分に動くのか。

股関節の屈曲・伸展・回旋はどうか。

骨盤は左右均等に動くのか。

腰椎の一部分だけに動きが集中していないか。

歩行時に腰を反りすぎていないか。

片脚支持で骨盤を安定させられるか。

といったことをみます。

フォッサムD.O.の資料でも、症状の場所と身体の機能障害の場所は一致しないことがあり、症状から離れた部位も含めて機械的・神経的・循環的な要素を評価することが示されています。


腰方形筋・大腰筋・胸腰筋膜も確認する

腰部では、

腰方形筋
大腰筋
胸腰筋膜

なども重要です。

これらは腰椎だけではなく、

肋骨
骨盤
股関節
横隔膜

などとも構造的につながっています。

フォッサムD.O.の講義でも、腰方形筋・胸腰筋膜・大腰筋は腰痛を評価するときの重要な組織として扱われています。特に大腰筋については股関節と腰椎の両方に関わるため、股関節の動きと腰部の関係を考えるうえで臨床的に重要な場所です。

ただし、

「大腰筋が硬いから腰痛」

「胸腰筋膜が原因」

と一つの組織に決めるのではありません。


最初に目指すのは「腰を動かすこと」ではない

腰痛の方に、

「もっと腰を柔らかくしましょう」

と考えるとは限りません。

むしろ、

腰が必要以上に頑張らなくても動ける身体をつくる

という方が近いです。

胸椎が動く。

股関節が動く。

骨盤が動く。

呼吸に合わせて胸郭・横隔膜が動く。

下肢が身体を支えられる。

そうすることで、

身体全体で負荷を分散しやすくなります。


「痛い場所」と「負担をつくっている場所」は同じとは限らない

腰が痛ければ、もちろん腰自体を評価します。

しかし、

腰だけを見続けても繰り返す場合には、

「なぜ腰に負担が集中しているのか」

という視点が必要です。

胸椎なのか。

股関節なのか。

骨盤なのか。

過去の足首や膝の外傷なのか。

慢性的な身体の緊張なのか。

それとも本当に腰椎そのものに大きな問題があるのか。

最初から原因を決めつけず、身体全体を評価していくことが重要です。

森田治療室では、

腰を治すというより、腰が必要以上に頑張らなくてもよい身体環境をつくる

という考え方を大切にしています。


坐骨神経痛で医療機関を優先した方がよい場合

脚の痛み・しびれに加えて、

急速に進行する筋力低下
足が急に上がらなくなった
排尿・排便がしにくい、または失禁する
会陰部の感覚が低下する
両脚に強い症状が出る

などがある場合には、神経への重大な圧迫を伴う可能性があるため、速やかな医学的評価が必要です。

また発熱、強い夜間痛、大きな外傷、原因不明の体重減少などがある場合も医療機関での確認を優先してください。


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参考文献

腰痛患者では股関節ROM・筋力・筋活動などに違いがみられますが、股関節可動域と腰痛の因果関係についてはまだ確実とはいえません。 (PubMed)

腰痛患者では腰椎だけでなく胸椎の運動にも差が報告されています。 (PubMed)

神経根性の坐骨神経痛では、椎間板ヘルニアなどによる神経根の機械的圧迫と炎症が病態に関与します。 (PubMed)

※本記事は情報提供を目的としており、医学的な診断や治療の代わりとなるものではありません。