- 森田智史ブログ
Vol.042|
「腕を上げると肩が痛い」
「服を着るときに腕が後ろへ回らない」
「夜、肩が痛くて目が覚める」
「だんだん動かせる範囲が狭くなってきた」
いわゆる「五十肩」と呼ばれる状態の中には、医学的には**凍結肩(Frozen Shoulder/癒着性関節包炎)**と呼ばれるものがあります。
大きな特徴は、
痛みだけではなく、肩関節の動きそのものが制限されること。
特に腕を外へひねる「外旋」が制限されやすく、本人が動かしても、他の人に動かしても可動域が狭いことが特徴です。2025年の診療ガイドラインでも、肩関節の自動・他動可動域の制限が診断上重要とされています。 (PubMed)

五十肩は「肩がこっている」状態ではない
凍結肩では、肩関節を包んでいる関節包に炎症や線維化、拘縮などが生じ、関節包そのものが硬くなっていきます。
そのため、
「肩周りの筋肉をほぐせば大丈夫」
という問題ではありません。
また、五十肩という言葉は日常的には幅広く使われていますが、
腱板損傷
石灰沈着性腱板炎
変形性肩関節症
頸椎由来の痛み
などでも肩の痛みや動かしにくさは起こります。
まず本当に凍結肩なのかを見分けることが重要です。
なぜ五十肩になるのか?
実は、一次性凍結肩については、
「これが原因です」と一つに決められるものではありません。
年齢では40〜60代頃に多く、特に糖尿病との関連が強く知られています。
糖尿病がある人では凍結肩の発症リスクが高く、血糖コントロールや罹病期間などとの関連も報告されています。 (PubMed Central (PMC))
また、甲状腺疾患についても関連が報告されており、メタ解析では特に甲状腺機能低下症との関連が示されています。 (サイエンスダイレクト)
つまり五十肩は、
肩だけの使いすぎで起こる病気とは限らない
ということです。
肩が動かなくなると、肩甲骨が代わりに動く
ここからが身体全体を見るうえで重要です。
腕を上げる動作は、
肩関節だけ
で行っているわけではありません。
上腕骨
+
肩甲骨
+
鎖骨
+
胸郭
が協調して動くことで、腕を大きく上げることができます。
ところが凍結肩によって肩関節そのものが動きにくくなると、
肩甲骨や体幹がその動きを代償する
ようになります。
凍結肩では肩甲骨の運動パターンにも変化がみられることが、研究でも報告されています。 (PubMed)
「腕は上がっている」ように見えても肩関節は動いていないことがある
例えば腕を横から上げてもらうと、
本人は、
「結構上がります」
と思っていても、
実際には肩関節そのものではなく、
肩甲骨が大きく上がっている。
身体を横へ傾けている。
腰を反っている。
ということがあります。
つまり、
動かない肩関節を、肩甲骨・胸郭・体幹が補っている
状態です。
だから五十肩では、
単純に「腕が何度上がるか」だけではなく、
どこでその動きを作っているのか
を見ることが重要です。
胸郭・胸椎を見る理由
肩甲骨は胸郭の上に乗っています。
そのため、
胸椎が動きにくい。
肋骨が硬い。
胸郭が十分に動かない。
という状態では、肩甲骨も自由に動きにくくなります。
これは、
「胸椎が硬いから五十肩になる」
という意味ではありません。
凍結肩そのものの中心的な病態は肩関節包にあります。
しかし、肩関節がすでに動きにくい状態で、さらに胸郭・肩甲骨まで動きにくければ、
腕を動かすための“逃げ道”が少なくなる
と考えることができます。
肩甲胸郭部への運動やモビライゼーションを含む介入についても研究されていますが、凍結肩に対する効果については研究数や質に限界があり、肩甲骨だけで治るという話ではありません。 (PubMed Central (PMC))
首・鎖骨・第1肋骨も肩の動きに関係する
オステオパシーでは、肩関節だけではなく、
頸部
鎖骨
胸鎖関節
肩鎖関節
第1肋骨
胸郭
胸椎
肩甲骨
なども確認します。
腕を上げるときには、鎖骨も回旋し、肩甲骨も胸郭上を移動します。
ですから、
肩関節だけを無理に動かすよりも、その動きを支える周囲の構造がどう動いているか
を確認することが大切です。
痛い時期に無理に動かせばいいわけではない
五十肩では、
「固まるから痛くても動かした方がいい」
と思われることがあります。
しかし、症状が強い時期に無理なストレッチや強い運動を行うと、痛みが増える場合があります。
現在のガイドラインでも、運動療法は患者さんの痛みや状態に合わせて行うことが推奨されています。また、医療では関節内ステロイド注射なども治療選択肢となります。 (PubMed)
つまり、
とにかく硬いところを強く動かす
のではなく、
今どの程度刺激を入れてよい状態なのかを見極めることが重要です。
オステオパシーでは身体全体を評価する
森田治療室では五十肩でも、
「肩が硬いから肩だけを動かす」
とは考えません。
例えば、
頸部・上部頸椎
↓
鎖骨・第1肋骨
↓
肩甲骨
↓
胸椎・肋骨
↓
肩関節
↓
横隔膜
↓
腰椎・骨盤
まで確認します。
特に、
肩関節そのものはどこまで動くのか。
肩甲骨が必要以上に代償していないか。
鎖骨は腕の動きに合わせて動いているか。
胸郭・胸椎の可動性はどうか。
首・肩周囲に過剰な筋緊張がないか。
痛みを避けるために身体全体が固まっていないか。
といったことをみます。
最初から肩だけを何とかしようとしない
痛みが強い時期ほど、身体は肩を守ろうとします。
肩をすくめる。
首に力が入る。
腕を身体につけて動かさなくなる。
胸郭まで硬くなる。
こうした防御反応が長く続けば、
今度は首や肩甲骨周囲までつらくなることがあります。
そのため最初の段階では、
「肩の可動域を一気に広げる」ことよりも、身体全体の過剰な緊張を整理すること
を優先する場合があります。
そのうえで、
肩関節包
肩甲骨
鎖骨
胸郭
頸部
など、残っている問題を細かく確認していきます。
目指すのは「肩関節だけが柔らかくなること」ではない
腕を上げるという一つの動作にも、
肩関節
肩甲骨
鎖骨
胸郭
胸椎
など多くの場所が関係します。
そのため目標は、
肩だけを柔らかくすることではなく、それぞれの場所が役割を分担できる状態に戻していくこと。
肩関節が動く。
肩甲骨が動く。
胸郭も動く。
首や腰が必要以上に代償しなくても腕を上げられる。
森田治療室では、そのような身体全体の協調をみながら施術を行います。
五十肩と思っていても医療機関での確認が必要な場合
特に、
転倒や外傷後から急に腕が上がらない
明らかな筋力低下がある
肩が赤く腫れて熱を持っている
発熱を伴う
手まで強いしびれや筋力低下がある
急激に症状が悪化している
場合には、五十肩と自己判断せず、まず整形外科などでの評価を優先してください。
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参考文献
2025年に発表されたPrimary Frozen Shoulderの診療ガイドラインでは、診断、運動療法、関節内注射など非手術的管理が整理されています。 (PubMed)
肩疾患では肩甲骨運動の変化が報告され、凍結肩についても肩甲胸郭部を含めた評価の意義が研究されています。 (PubMed)
糖尿病や甲状腺疾患は凍結肩との関連が報告されています。 (サイエンスダイレクト)
※本記事は情報提供を目的としており、医学的な診断や治療の代わりとなるものではありません。