2026.08.22
  • 森田智史ブログ
変形性股関節症・臼蓋形成不全とは?

自律神経シリーズ Vol.045|

「歩き始めに股関節が痛い」

「長く歩くと鼠径部がつらくなる」

「靴下を履く、爪を切る動作がしにくい」

「車の乗り降りで股関節が痛む」

「以前から臼蓋形成不全があると言われている」

股関節の痛みでは、変形性股関節症や臼蓋形成不全という言葉を聞くことがあります。

特に日本では、臼蓋形成不全を背景として変形性股関節症へ進行するケースがあります。

ただし、

「臼蓋形成不全がある=必ず変形性股関節症になる」
「レントゲンで変形している=痛みの原因はすべて関節」

というわけではありません。

股関節そのものの構造だけでなく、骨盤・腰椎・膝・足部まで含めて、身体がどのように荷重を受けているかを見ることが大切です。


臼蓋形成不全とは?

股関節は、

大腿骨の先端にある「骨頭」

と、

骨盤側にある受け皿「臼蓋」

によって構成されています。

臼蓋形成不全では、この受け皿による骨頭の覆いが少ない状態になっています。

そのため、同じ体重を支える場合でも、荷重を受ける面積が小さくなり、

股関節の一部分に負荷が集中しやすくなる

と考えられています。

2024年に18,807股関節を解析した研究では、臼蓋形成不全がある股関節は、ない股関節と比較して、その後4〜8年間に画像上の股関節OAを発症する割合が高いことが報告されています。(PubMed)

ただし、臼蓋形成不全があっても症状なく生活している人もいます。


「骨盤のゆがみ」で臼蓋形成不全になるわけではない

ここは誤解されやすいところです。

臼蓋形成不全は、基本的には股関節の骨性の形態に関係する問題です。

そのため、

「骨盤を整えれば臼蓋が深くなる」

「施術で股関節の形を正常に戻せる」

というものではありません。

オステオパシーで確認するのは骨の形を変えることではなく、

その形態の中で、現在どのように身体が動き、どこへ負担が集中しているのか

という部分です。


変形性股関節症は「軟骨がすり減るだけ」ではない

変形性股関節症では、

関節軟骨
軟骨下骨
滑膜
関節包
周囲の筋肉

など、関節全体に変化が起こります。

症状として多いのは、

鼠径部の痛み
臀部・太ももの痛み
動き始めの痛み
歩行時痛
股関節の動かしにくさ

などです。

特に股関節OAでは、内旋や内転などの可動域低下が臨床的な手がかりになることが報告されています。(PubMed)


股関節が動かなくなると、別の場所が動き始める

ここは前回までの腰痛・膝痛ともつながる重要なポイントです。

歩く。

立ち上がる。

階段を上る。

靴下を履く。

身体を前へ倒す。

こうした動作では、股関節だけではなく、

腰椎
骨盤
股関節

足部

が連動します。

ところが股関節の動きが少なくなると、

腰や骨盤、膝が代わりに動く

ことがあります。

例えば、

股関節が伸びにくい

歩くとき腰を反って補う

股関節が曲がりにくい

身体を前へ倒すとき腰椎や骨盤で補う

片側の股関節が痛い

反対側へ体重を逃がす

膝や腰への負担が変わる

という状態です。


股関節が痛い人に腰痛や膝痛が出る理由

股関節は身体の中心に近く、

上からは体幹の荷重を受け、

下へはその荷重を脚へ伝えています。

そのため股関節の動きや荷重の受け方が変わると、

骨盤
腰椎

足部

の使い方も変化します。

例えば股関節痛を避けて歩けば、

身体を反対側へ傾ける。

歩幅を小さくする。

痛い脚へ体重をかけない。

膝を使って動きを補う。

といった代償が起こります。

つまり、

股関節だけの問題だったものが、時間とともに腰や膝の負担にもつながる

ことがあります。


痛みが膝に出ることもある

股関節の問題では、

「膝が痛い」

と感じることがあります。

股関節周辺からの関連痛が太ももや膝周囲まで感じられることがあるためです。

そのため、

膝を調べても大きな異常がない。

膝への施術を続けても変わらない。

という場合には、股関節も確認する必要があります。


画像と痛みは完全には一致しない

レントゲンやMRIは非常に重要です。

ただ、

軟骨の変化
関節唇の変化
骨棘
その他の関節内所見

があっても、必ずしもその程度と痛みが一致するわけではありません。

股関節MRIに関する2024年の系統的レビューでは、一部のMRI所見は痛みとの関連がみられるものの、他の構造変化と痛みとの関連については限定的または一貫しない結果でした。(PubMed)

また、股関節の関節唇損傷などは症状のない人にもみられることがあります。(PubMed)

ですから、

画像だけではなく、症状・動き・筋力・歩行・日常生活を合わせて見る

必要があります。


臼蓋形成不全では「柔らかくすればいい」とは限らない

臼蓋形成不全では、

「股関節が硬いならストレッチをしてもっと動かそう」

と考えることがあります。

しかし、臼蓋による骨頭の覆いが少ないという構造的特徴があるため、

可動域だけではなく、安定性や荷重の受け方も重要です。

必要以上に股関節だけを動かすより、

骨盤を安定させられるか。

股関節周囲の筋肉が働けるか。

体幹から股関節へ荷重を伝えられるか。

膝・足部で支えられるか。

という全体の協調を見る必要があります。


オステオパシーでは股関節だけを見ない

森田治療室では、

「股関節が痛いから股関節だけ」

とは考えません。

まず、

胸椎・胸郭

腰椎

骨盤・仙骨

股関節



足関節・足部

まで確認します。

例えば、

腰椎が股関節の代わりに動きすぎていないか。

骨盤は左右で同じように動くか。

股関節の屈曲・伸展・回旋はどうか。

片脚で身体を支えられるか。

膝や足首が代償していないか。

歩行時に身体を大きく傾けていないか。

などをみます。


周囲の筋肉・筋膜も確認する

股関節周囲には、

腸腰筋
中殿筋
大殿筋
内転筋群
深層外旋筋群

など、多くの筋肉があります。

股関節が痛い状態が長く続けば、身体は自然にその関節を守ります。

その結果、

筋肉が過剰に緊張する場所。

反対に十分使われなくなる場所。

左右差。

歩行パターンの変化。

などが生じます。

オステオパシーでは、そのような二次的に生じている身体の負担も含めて評価します。


オステオパシーで変形を元に戻すわけではない

変形した股関節を施術で元の形に戻す。

臼蓋形成不全を施術で正常な骨格にする。

失われた軟骨を再生させる。

ということはできません。

変形性股関節症に対する標準的な保存的管理では、状態に合わせた運動療法が中心となります。NICEもOAに対して個別化した運動療法を基本治療として推奨し、徒手療法を行う場合も運動療法と組み合わせるべきとしています。(ナイス)

森田治療室での目的は、

股関節そのものを変えることではなく、現在の股関節に必要以上の負担が集中しにくい身体環境をつくること

です。


痛みが強いからといって、動かさない方がいいわけでもない

股関節が痛いと、

なるべく歩かない。

階段を避ける。

外出を減らす。

という状態になることがあります。

痛みが強い時期には休息も必要ですが、長期間活動量が低下すると、

筋力低下
持久力低下
さらに歩きにくくなる

という循環になることがあります。

変形性関節症では、適切な運動療法は痛みや身体機能の改善を目的とした中心的な治療です。(ナイス)

大切なのは、

「痛くても無理に動く」

でも、

「痛いから全く動かない」

でもなく、

今の状態に合わせて負荷を調整することです。


手術を検討した方がよい場合もある

変形性股関節症が進行し、

強い痛みが続く。

歩ける距離が大きく短くなった。

日常生活が著しく制限されている。

保存的な方法を続けても十分な改善が得られない。

という場合には、人工股関節置換術などを検討することがあります。

NICEでも、痛み・こわばり・機能低下などが生活の質へ大きく影響し、保存的管理で十分な改善が得られない場合には、関節置換術への紹介を検討するよう推奨しています。(ナイス)

施術だけにこだわらず、必要なタイミングで整形外科と連携することも重要です。


目指すのは「股関節だけを柔らかくすること」ではない

臼蓋形成不全や変形性股関節症では、

骨の形そのものを変えることはできません。

だからこそ、

骨盤が動く。

腰が必要以上に代償しない。

股関節周囲の筋肉が働く。

膝と足部で身体を支えられる。

身体全体で負荷を分散できる。

という環境をつくることが大切です。

森田治療室では、

「股関節が悪い」だけで終わらせず、その股関節を身体全体がどのように支えているのか

という視点を大切にしています。


医療機関での確認を優先した方がよい場合

急に強い股関節痛が出た。

転倒後から体重をかけられない。

股関節周囲が赤く腫れ、発熱がある。

安静にしていても急激に痛みが悪化する。

原因不明の体重減少や強い夜間痛がある。

といった場合には、まず医療機関で評価を受けてください。


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関連シリーズ

Vol.041|腰痛・坐骨神経痛はなぜ起こる?

Vol.043|頚椎・腰椎椎間板ヘルニアとは?

Vol.044|膝の痛みが続くのはなぜ?


参考文献

Riedstra NS, et al. Acetabular dysplasia and the risk of developing hip osteoarthritis within 4–8 years. Osteoarthritis Cartilage. 2025. (PubMed)

Fang H, et al. The relationship between MRI-detected hip abnormalities and hip pain in hip osteoarthritis: a systematic review. Rheumatol Int. 2024. (PubMed)

NICE. Osteoarthritis in over 16s: diagnosis and management. (ナイス)

※本記事は情報提供を目的としており、医学的な診断や治療の代わりとなるものではありません。