- 森田智史ブログ
自律神経シリーズ Vol.044|
「階段を降りると膝が痛い」
「立ち上がるときに膝がつらい」
「歩き始めだけ痛む」
「レントゲンで軟骨が減っていると言われた」
「半月板が傷んでいると言われた」
膝が痛いと、どうしても膝だけに意識が向きます。
しかし膝は、
股関節と足部の間にある関節
です。
歩く、しゃがむ、階段を上り下りするといった動作では、
骨盤
股関節
膝
足関節
足部
が連動しています。
そのため森田治療室では、
「膝が痛い=膝だけに原因がある」
とは最初から考えません。

膝の痛みにはいろいろな種類がある
「膝痛」といっても、原因は一つではありません。
例えば、
変形性膝関節症
膝蓋大腿関節の痛み
半月板の問題
靱帯損傷
腱の問題
関節周囲の炎症
外傷
などがあります。
また、股関節や腰部からの関連痛として膝周囲に痛みを感じることもあります。
ですから、
「膝が痛いから軟骨が悪い」
とも、
「半月板が傷んでいるから痛い」
とも、画像だけで判断することはできません。
画像の変化=痛みの強さではない
膝のMRIを撮ると、
半月板損傷
軟骨の変化
骨棘
骨髄病変
などが見つかることがあります。
しかし、こうした所見は症状のない人にもみられます。
無症状の成人を対象にしたMRI研究の系統的レビューでは、40歳以上では軟骨欠損や半月板損傷などがかなりの割合で確認されています。(PubMed)
つまり、
「MRIで変化がある」=「そこが今の痛みのすべて」
とは限りません。
もちろん画像は大切な情報ですが、
症状
動き
筋力
歩き方
日常生活での負荷
と合わせて考える必要があります。
膝は股関節の影響を受ける
例えば階段を降りるとき。
股関節では、
大腿骨の向き
骨盤の安定性
臀部の筋力
などが関係します。
もし股関節周囲が十分に身体を支えられないと、
大腿骨が内側へ入り、
膝も内側へ入りやすくなることがあります。
いわゆる、
「膝が内側へ入る」動き
です。
ただし、
「膝が内側に入るから必ず膝痛になる」
という単純な因果関係ではありません。
それでも、膝蓋大腿部の痛みでは膝だけではなく股関節を含めた運動療法が現在の推奨となっています。2024年のBest Practice Guideでも、教育とともに膝を中心とした運動療法、必要に応じて股関節を対象にした運動を組み合わせることが推奨されています。(PubMed)
変形性膝関節症でも股関節を見る理由
変形性膝関節症でも、股関節周囲の筋力は重要です。
特に中殿筋などの股関節外転筋は、
片脚で身体を支える
骨盤を安定させる
歩行中に下肢をコントロールする
役割があります。
膝OAを対象とした研究では、股関節外転筋の筋力強化によって痛みや機能が改善したことがメタ解析で報告されています。(PubMed)
これは、
「中殿筋が弱いから膝OAになる」
という意味ではありません。
しかし、膝へ加わる負荷を身体全体で分散するうえで、股関節機能が重要であることは分かります。
足首・足部も膝とつながっている
膝の下には足関節と足部があります。
歩くときには、
踵が接地する
↓
足部が荷重を受ける
↓
足関節が動く
↓
脛骨が動く
↓
膝が曲がる
↓
股関節が動く
というように、下肢全体が連動します。
そのため、
足関節の動き
足部の使い方
踵の接地
体重のかかり方
も膝を評価するときには確認します。
ただし足部と膝痛の関係も一つのパターンではありません。
2026年の膝蓋大腿痛に関する系統的レビューでも、足部・足関節のいくつかの特徴との関連は示されている一方、因果関係についてはまだ限定的とされています。(PubMed)
つまり、
「扁平足だから膝が痛い」
のような単純な説明はできません。
「膝が動かない」だけでなく「膝が頑張りすぎている」こともある
前回の腰痛と似ています。
身体には、
動きにくい場所
+
その分を補って動く場所
が同時に存在することがあります。
例えば、
股関節が動きにくい
↓
足関節も動きにくい
↓
しゃがむ・階段動作を膝で補う
↓
膝に負担が集中する
というパターンです。
反対に膝そのものが硬くなっていれば、
股関節や腰に負担が移ることもあります。
ですから大切なのは、
「どこが硬いか」だけではなく、「身体の中で誰が動きを引き受けているのか」
を見ることです。
膝の痛みで身体がさらに固まることもある
膝が痛いと、人は自然にその脚を守ります。
反対側へ体重を逃がす。
膝を曲げない。
歩幅を小さくする。
階段を避ける。
活動量が減る。
これは痛みから身体を守るための自然な反応です。
しかし長期間続けば、
股関節の筋力低下
膝周囲の筋力低下
足関節の動きの低下
活動量の低下
が加わり、
さらに膝を使いにくくなることがあります。
変形性膝関節症では、運動療法が痛みと身体機能の改善に有効であることが2024年のCochrane Reviewでも確認されています。(PubMed)
そのため、
「痛いから一切動かさない」
ことも長期的には適切ではありません。
一方で、強い痛みを我慢して無理に運動する必要もありません。
状態に合わせて負荷を調節することが大切です。
オステオパシーでは膝だけを見ない
森田治療室では膝痛でも、
膝関節だけを施術するとは限りません。
まず、
腰椎
↓
骨盤・仙骨
↓
股関節
↓
膝関節
↓
足関節
↓
足部
まで確認します。
さらに必要に応じて、
胸郭
胸椎
身体全体の重心
歩行
などもみます。
例えば、
股関節は屈曲・伸展・回旋できるか。
骨盤は左右均等に動くか。
膝蓋骨の動きはどうか。
膝の曲げ伸ばしに左右差はないか。
足首は十分に動くか。
片脚で身体を支えられるか。
歩行時に身体がどちらかへ傾いていないか。
などを確認します。
「膝を治す」のではなく、膝だけが頑張らなくてよい身体へ
膝は日常生活の中で何度も荷重を受けます。
歩行。
立ち上がり。
階段。
しゃがむ。
仕事。
スポーツ。
この負荷そのものをゼロにすることはできません。
だから重要なのは、
股関節が働く。
骨盤が安定する。
膝が必要な範囲で動く。
足首が動く。
足部で身体を支える。
それぞれが役割を分担することです。
森田治療室では、
「痛い膝を何とかする」だけではなく、「なぜ膝に負担が集中しているのか」を身体全体から確認する
ことを大切にしています。
膝痛で医療機関を優先した方がよい場合
次のような場合には、まず整形外科などでの評価を優先してください。
大きな外傷後から急に痛くなった
体重をかけられない
膝が大きく腫れている
赤く熱を持ち、発熱を伴う
膝が完全に伸びない・曲がらない
膝崩れを繰り返す
ふくらはぎが急に腫れた
強い痛みが急激に悪化している
特に外傷後のロッキングや大きな腫れでは、半月板や靱帯などの損傷も含めた医学的評価が重要です。
シリーズバックナンバー
関連シリーズ
Vol.041|腰痛・坐骨神経痛はなぜ起こる?
Vol.043|頚椎・腰椎椎間板ヘルニアとは?
Vol.045|変形性股関節症・臼蓋形成不全とは?
参考文献
Lawford BJ, et al. Exercise for osteoarthritis of the knee. Cochrane Database Syst Rev. 2024. (PubMed)
Neal BS, et al. Best practice guide for patellofemoral pain. Br J Sports Med. 2024. (PubMed)
Culvenor AG, et al. Prevalence of knee osteoarthritis features on MRI in asymptomatic uninjured adults. Br J Sports Med. 2019. (PubMed)
※本記事は情報提供を目的としており、医学的な診断や治療の代わりとなるものではありません。