2026.09.09
  • 森田智史ブログ
起立性調節障害とは?朝起きられない子どもを「怠け」で見ない

自律神経シリーズ Vol.048|

「朝、何度起こしても起きられない」

「学校へ行こうとすると頭痛や腹痛が出る」

「午前中は動けないのに、夕方になると元気になる」

このような状態が続くと、

「学校には行かないといけない」

「でも身体がしんどくて動けない」

その間で苦しんでいる子どもが少なくありません。

周囲から見ると元気そうに見える時間があるため、

「頑張れば行けるのでは?」

と思われてしまうこともあります。

しかし、起立性調節障害では、本人の意思だけではコントロールしにくい身体の変化が起きています。


起立性調節障害とは?

起立性調節障害(OD)は、立ち上がったときの血圧や心拍、血流などを調節する仕組みがうまく働きにくくなる状態です。

人間が横になった状態から立つと、重力によって血液が下半身へ移動します。

通常は自律神経がすぐに反応して、

心拍数を調節する

血管を収縮させる

脳への血流を維持する

といった働きを行います。

この調節がうまくいかないと、

立ちくらみ

めまい

動悸

頭痛

腹痛

吐き気

倦怠感

朝起きられない

午前中に調子が悪い

などの症状が現れます。(J-STAGE)

特に思春期は、身体が急激に成長する時期でもあり、起立性の問題が起こりやすい年代です。(PubMed)


「朝起きられない」だけの問題ではありません

起立性調節障害というと、

「朝起きられない病気」

と思われることがあります。

しかし実際には、それだけではありません。

頭痛や腹痛、吐き気、動悸、めまい、疲労感、睡眠の問題など、複数の症状が重なることがあります。

小児の自律神経機能障害では、起立時の症状だけでなく、腹痛や吐き気などの消化器症状、疲労、睡眠障害などが併存することも報告されています。(PubMed)

つまり、

「朝起きられない」

という症状だけを見るのではなく、

身体全体の調節がどのような状態になっているのかを見ることが重要です。


森田治療室では「自律神経系の疲労」と考えることがあります

医学的には、起立性調節障害を正式に「脳や自律神経の疲労」と定義しているわけではありません。

ただ、患者さんやご家族に状態を説明するとき、森田治療室では一つのイメージとして、

「脳や自律神経系が疲れていて、身体を調節する余裕が少なくなっている状態」

と説明することがあります。

自律神経は、

血圧

心拍

呼吸

消化

体温

睡眠と覚醒

など、多くの働きを休むことなく調節しています。

起立性調節障害では、この調節システムが立位や日常生活の変化に十分対応できず、さまざまな症状として表れていると考えると理解しやすくなります。

慢性の起立不耐症についても、単一の原因ではなく、自律神経調節、循環血液量、身体活動、睡眠、心理社会的要因などが複雑に関係する状態として考えられています。(PubMed)


大人にも「自分に合った活動量」があります

例えば大人でも、

週5日働いても元気な人がいます。

一方で、体調を考えて週3日勤務にした方が生活を安定させやすい人もいます。

それを単純に、

「週5日働けないから弱い」

とは考えません。

子どもも同じです。

毎日学校へ行っても問題なく過ごせる子もいれば、体調によっては週に数日から始めた方がよい子もいます。

午前中は難しくても午後からなら行ける。

保健室登校なら可能。

授業を一つだけ受けられる。

その子によって、現在使えるエネルギーや身体の余裕は違います。


「学校に行かないと」と「身体がしんどい」の間で苦しんでいる

起立性調節障害の子どもをみていて、とても大切だと感じる部分です。

本人も、

「学校に行かなければ」

と思っています。

友達にも会いたい。

勉強が遅れることも心配。

家族に迷惑をかけたくない。

それでも朝になると身体が動かない。

頭が痛い。

お腹が痛い。

立つと気持ちが悪い。

そのため、

「行きたいのに行けない」

という状態になります。

学校へ行けないこと自体が、新たな不安やストレスになることもあります。

小児の起立性調節障害では、学校生活や家庭環境も含めて評価し、本人・家族・学校が協力して対応することが重要とされています。(J-STAGE)


まずは「その子のペース」を探していく

大切なのは、

「明日から毎日学校へ行く」

ことだけを目標にしないことです。

反対に、ずっと身体を動かさないことも、体力低下(deconditioning)によって起立症状を悪化させる可能性があります。(PubMed)

そのため、

今はどのくらい活動できるのか。

何時頃なら動きやすいのか。

学校へ行った翌日はどうなるのか。

どの程度休めば回復するのか。

を確認しながら、その子に合ったペースを探していくことが重要です。

少し動けるようになったら、そこから少しずつ活動量を広げる。

身体がついてこなければ、一度調整する。

この繰り返しです。

近年の小児起立不耐症の治療でも、水分・塩分、睡眠、栄養、段階的な運動や身体機能の回復などを組み合わせ、日常生活への復帰を支えることが重視されています。(PubMed)


良くなるとき、最初から朝起きられるとは限らない

森田治療室で臨床をしていると、

「朝はまだ起きにくいけれど、最近頭痛が減ってきた」

「毎日あった腹痛が少なくなってきた」

「前より食欲が出てきた」

という変化が先にみられることがあります。

その後、

午前中に少し動けるようになる。

起床時間が少し早くなる。

学校へ行ける日が増えてくる。

というように、生活リズムにも変化が出てくるケースがあります。

これはすべての子どもが同じ順番で良くなるという意味ではなく、森田治療室でみられる臨床上の一つの傾向です。


頭痛や腹痛の変化も大切なサイン

朝起きられるかどうかだけを毎日評価すると、

「今日も起きられなかった」

という結果ばかりに目が向いてしまいます。

しかし回復途中では、

頭痛の回数が減った。

腹痛が弱くなった。

食事が取れるようになった。

立っていられる時間が長くなった。

昼まで寝ていたのが10時に起きられるようになった。

外出できる日が増えた。

といった小さな変化が現れることがあります。

頭痛や腹痛などは起立性調節障害・自律神経機能障害に伴いやすい症状でもあるため、こうした症状の変化も身体全体の経過を見る材料になります。(PubMed)


自律神経の調節が整うと、生活リズムにも変化が出てくる

起立性調節障害では、夜なかなか眠れず、朝起きられないという睡眠・覚醒リズムの問題が重なることがあります。

2025年の日本自律神経学会誌でも、起立性調節障害と概日リズムの後退との関連が取り上げられています。(J-STAGE)

森田治療室では、

頭痛や腹痛が減る。

呼吸や身体の緊張が変わる。

活動できる時間が増える。

睡眠のリズムが少しずつ整う。

そして朝が以前より楽になる。

というように、身体全体の調節が少しずつ戻っていく過程を見ていきます。

「朝起きる」という一つの結果だけではなく、自律神経系に関係する症状全体を追っていくことを大切にしています。


医学的な評価も重要です

朝起きられない、立ちくらみがあるからといって、すべてが起立性調節障害とは限りません。

日本の診療では、

症状の確認

新起立試験

血圧・心拍の変化

日常生活への影響

などを評価します。

また、

鉄欠乏性貧血

甲状腺や副腎などの内分泌疾患

心疾患

神経疾患

など、似た症状を起こす病気を除外することも重要です。(J-STAGE)

必要に応じて、小児科などで医学的な評価を受けてください。


オステオパシーではどこを見る?

森田治療室では、起立性調節障害だからといって「自律神経だけ」を見るわけではありません。

特に、

頭蓋・頭蓋底

上位頚椎

胸郭

肋骨

横隔膜

背骨

仙骨・骨盤

呼吸

などを確認します。

さらに、

睡眠

腹痛や消化器症状

頭痛

活動量

学校生活

症状が出始めた経過

まで含めて評価します。

オステオパシーによって起立性調節障害を治すことや、自律神経を直接正常化できることが確立されているわけではありません。

森田治療室では、身体全体の動きや呼吸、緊張、循環に関係する環境を確認し、その子が日常生活へ適応しやすい身体の状態を考えていきます。


「毎日学校へ行く」だけをゴールにしない

もちろん、学校へ戻ることは一つの大切な目標です。

しかし、

学校へ毎日行ける=回復

学校へ行けない=治っていない

という単純なものでもありません。

まず頭痛が減った。

次に腹痛が減った。

昼まで寝なくなった。

外に出られるようになった。

週1回学校へ行けた。

週3回行けるようになった。

朝から行ける日が出てきた。

こうした変化もすべて大切な経過です。

子ども自身が、

「今日はここまでならできそう」

という身体の感覚を取り戻しながら、自分に合ったペースを探していく。

その先に、学校生活や日常生活が少しずつ広がっていくことが理想だと考えています。


まとめ

起立性調節障害の子どもは、

「学校に行きたくないから朝起きない」

とは限りません。

学校へ行きたい気持ちはあるのに、身体がついてこない。

その間で苦しんでいる子どもも多くいます。

医学的には、起立時の循環調節を中心とした自律神経機能の問題として評価します。

森田治療室では、それを分かりやすく、

「脳や自律神経系が疲れて、身体を調節する余裕が少なくなっている状態」

と捉えることがあります。

大切なのは、無理に周囲と同じペースへ戻すことではありません。

その子の現在の身体に合ったペースを探しながら、

頭痛

腹痛

睡眠

起床時間

活動量

学校生活

など、身体全体の変化を見ていくこと。

自律神経系の調節が少しずつ回復してくると、複数の症状が落ち着き、それに伴って朝の生活リズムにも変化がみられることがあります。

「毎日学校へ行かなければ」

という結果だけを見るのではなく、

まず、その子の身体が今どのくらい頑張れる状態なのか。

そこから考えることが、起立性調節障害ではとても大切です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断や治療の代替となるものではありません。


シリーズバックナンバー

自律神経シリーズバックナンバー

関連シリーズ

Vol.003|自律神経失調症とは?

Vol.008|頭痛が繰り返されるのはなぜ?

Vol.033|自律神経の乱れは何故起こる?



医療機関での確認も大切です

森田治療室は診断を行う医療機関ではありません。すでに医療機関を受診されている場合は、医師の診断や治療方針を優先してください。

当院には、精神科や心療内科などへ通院しながらオステオパシーを受けている方も多くいらっしゃいます。

オステオパシーは医療に代わるものではなく、医療を補完する立場です。必要な医学的評価や治療と組み合わせながら、身体全体の状態を整えていくことにメリットがあると考えています。


参考文献

日本小児心身医学会.小児起立性調節障害診療ガイドライン 改訂第3版.2025. 概説:日本大学医学雑誌 2026. (J-STAGE)

Hebson C, Harberg M, Borasino P. Pediatric orthostatic intolerance – a review with focus on recent research. Curr Opin Pediatr. 2025. (PubMed)

Daon LD, et al. Prioritizing Function: Practical Management of Orthostatic Intolerance and Autonomic Dysfunction. Pediatr Ann. 2026. (PubMed)

Kizilbash SJ, et al. Adolescent fatigue, POTS, and recovery: a guide for clinicians. Curr Probl Pediatr Adolesc Health Care. 2014. (PubMed)

田中英高.小児のめまい・平衡障害―コロナ禍に発症しやすい起立性調節障害―.小児耳鼻咽喉科.2022. (J-STAGE)