- 森田智史ブログ
パニック障害シリーズ Vol.01|
「突然、心臓がバクバクする」「息が吸えない感じがする」「このまま倒れるのではないか、死んでしまうのではないかと怖くなる」。
心臓や肺を検査しても大きな異常はない。それでも一度強い発作を経験すると、「また起きたらどうしよう」という不安が残り、外出そのものが怖くなることがあります。
パニック障害は「考えすぎ」や「気持ちが弱い」ために起こるものではありません。脳が危険を察知する仕組み、自律神経、呼吸、心拍、そして身体から脳へ入ってくる感覚が複雑に関係しています。

パニック発作とは?
パニック発作では、突然強い不安や恐怖とともに、動悸、息苦しさ、胸の圧迫感、発汗、震え、めまい、ふらつき、吐き気、手足のしびれなどが急激に現れます。
さらに、「このまま死んでしまうのではないか」「倒れてしまうのではないか」「自分をコントロールできなくなるのではないか」という強い恐怖を伴うことがあります。
一度発作が起こっただけでパニック障害というわけではありません。その後も「また発作が起きるかもしれない」という予期不安が続き、行動範囲が狭くなっていくことが特徴の一つです。
パニックが起こりやすい環境・状況があります
パニック発作はどこでも起こる可能性がありますが、特に「すぐに逃げられない」「途中で止められない」「具合が悪くなったとき助けてもらいにくい」と感じる環境で不安が強くなる方がいます。
電車・新幹線・飛行機、高速道路や渋滞、トンネル、エレベーター、人混み、映画館、美容院や歯科、会議や学校行事、レジに並んでいるとき、一人で遠くへ出かけるときなどです。
実際にはその場所自体が危険なのではありません。
以前そこで発作が起きた経験や、「ここで苦しくなったら逃げられない」という予測が重なることで、身体がその場所を「危険かもしれない」と学習してしまうことがあります。
そのため、電車に乗る前から動悸がする、トンネルを見るだけで息苦しくなる、家を出る前からお腹が痛くなる、といった反応が起こることもあります。
なぜ身体にこれほど強い反応が起こるのか?
人間には、危険を察知したときに身体を守る仕組みがあります。心拍を上げ、呼吸を速くし、筋肉を緊張させ、すぐに行動できる状態をつくります。
本当に危険な場面では必要な反応です。
ところがパニックでは、心拍が少し速くなる、胸が少し苦しい、呼吸が浅い、頭がふわっとする、といった身体の変化を脳が「危険」と判断しやすくなります。
身体の違和感
→「何かおかしい」と不安になる
→呼吸や心拍がさらに変化する
→身体感覚がさらに強くなる
→もっと怖くなる
この循環が短時間で急激に強くなるのがパニック発作の特徴です。
オステオパシーでは「身体から入る情報」を大切にします
森田治療室では、パニック障害を「精神だけの問題」とは考えません。同時に、「首が悪いからパニックになる」「横隔膜を緩めれば治る」と一つの原因に決めつけることもしません。
身体からは常に、呼吸、心拍、筋肉の緊張、内臓感覚、姿勢など膨大な情報が脳へ送られています。
神経学的にも、身体や内臓から入った感覚は脊髄や脳で統合され、自律神経や筋肉の反応と影響し合います。オステオパシーでは、症状だけでなく、こうした「身体から神経系へ入る情報全体」を評価することを大切にします。内臓と体性組織の反射では、筋緊張や血管運動、組織の過敏性などとして身体に変化が現れることもあります。
パニック症状で実際に確認するポイント
森田治療室では、特に後頭部・頭蓋底、上位頚椎、胸郭上口・第1肋骨、胸椎・肋骨、横隔膜、腹部、仙骨・骨盤などを確認します。
後頭部や頚部では、頭を支える筋肉の過緊張や呼吸との連動をみます。胸郭上口や第1肋骨では、呼吸時の動きや頚部・胸郭との協調を確認します。
胸椎・肋骨は呼吸のたびに動く場所です。パニック症状のある方では、「息を吸わなければ」と頑張るほど胸や首の筋肉を使い続け、呼吸がさらに苦しく感じられることがあります。
横隔膜についても、単に「硬い・柔らかい」だけではなく、胸郭・腹部・骨盤との協調をみます。呼吸は自律神経活動や体液移動とも関連するため、オステオパシーでも重要な評価ポイントとして扱われています。
さらに腹部の緊張、食いしばり、頭痛、胃腸症状、睡眠、姿勢なども含めて評価します。
つまり、胸が苦しいから胸だけを見るのではなく、頭頸部・呼吸・胸郭・腹部・骨盤まで含め、「身体全体がどう協調しているか」を見ることがオステオパシーの強みです。
目指すのは「一切反応しない身体」ではありません
緊張すれば心拍が上がる。人前に出れば少し呼吸が速くなる。これは正常な身体反応です。
大切なのは、身体が反応しないことではなく、必要がなくなったときに再び落ち着いた状態へ戻れることです。
森田治療室では、パニック発作を直接止めることを目的にするのではなく、呼吸・筋緊張・姿勢・循環などを含め、神経系が過剰に警戒し続けにくく、「戻れる余裕」を持った身体環境を目指します。
医療機関での確認も大切です
森田治療室は診断を行う医療機関ではありません。初めて強い胸痛・動悸・息苦しさ・失神などが出た場合は、まず医療機関で他の疾患がないか確認することが重要です。
すでに精神科や心療内科を受診している場合は、医師の診断や治療方針を優先してください。当院には精神科や心療内科へ通院しながらオステオパシーを併用している方も多くいらっしゃいます。
オステオパシーは医療に代わるものではなく、医療を補完する立場です。必要な医療と組み合わせながら、身体面からサポートしていくことを大切にしています。
まとめ
パニック障害では、実際には危険ではない状況でも、脳と身体が「危険に備える反応」を強く起こしてしまうことがあります。
そして一度発作を経験すると、「また起こるかもしれない」という予測だけでも身体が反応するようになることがあります。
だからこそ、心だけ、身体だけと分けるのではなく、脳・自律神経・呼吸・身体感覚を一つのシステムとして考えることが重要です。
次回は「心臓がおかしい気がする」「息ができていない気がする」など、パニック障害でなぜ身体の感覚に敏感になるのかを「内受容感覚」の最新研究から解説します。