2025.12.15
  • 森田智史ブログ
適応障害とは?ストレスに“心と身体が追いつけなくなる”状態

― 最新研究とエビデンスをふまえた解説 ―

適応障害(Adjustment Disorder)は、明確なストレスをきっかけに 心理的・身体的症状が過剰に現れる状態 です。

世界保健機関(WHO)でも正式な診断として位置づけられ、ストレス関連障害の一つに分類されています。

最近の疫学調査では、精神科外来の5〜20%が適応障害 といわれており(Casey, 2014)、決して珍しい疾患ではありません。


1. 適応障害の主な症状

適応障害の症状は、自律神経・内分泌系・脳のストレス反応が関与しています。

▼ 心の症状

  • 不安、焦り
  • 気分の落ち込み
  • 集中力の低下

ストレスにより 扁桃体(恐怖反応) が過活動になり、前頭前野の判断機能が低下するためです。

▼ 身体症状

  • 動悸・息苦しさ
  • 胃腸症状(吐き気・腹痛)
  • 頭痛・肩こり
  • 不眠

これらはストレスによってHPA軸(視床下部‐下垂体‐副腎系) が刺激され、コルチゾールの乱れ → 自律神経の不安定化を起こすためです(Yehuda, 2002)。


2. 適応障害の原因

適応障害の特徴は、ストレス因子が明確に存在すること

  • 職場・学校の環境変化
  • 家族問題
  • 引っ越しや新生活
  • 病気や介護
  • 人間関係の衝突

研究では、急激な環境変化に対する“適応能力のキャパシティ不足”が最大の要因とされています(Maercker et al., 2013)。

ストレス暴露から 3か月以内に症状が出る というのも、生物学的なストレス反応の時間軸に合致しています。


3. 適応障害になりやすい傾向

医学的研究では、以下の傾向が報告されています。

▼ パーソナリティ特性(心理学研究より)

  • 真面目・責任感が強い
  • 完璧主義
  • ストレスを内に溜め込みやすい (Hammen, 2005)

▼ 生理的傾向

  • 自律神経が乱れやすい
  • 肩こりや頭痛、胃腸症状がもともと多い
  • 睡眠が浅い

これらは ストレスに対する脆弱性(vulnerability) に関連します。


4. 病院での治療(ガイドライン)

医学的治療としては、以下が研究で効果が示されています。

  • 休養・環境調整
  • 認知行動療法(CBT):症状改善に有効(Zelviene, 2019)
  • 薬物療法:抗不安薬・抗うつ薬(必要に応じて)

エビデンス上、ストレス因子から距離を置くと症状が改善しやすいというのが大きな特徴です。


5. オステオパシー的アプローチ

(パニック障害と同じ“身体 × 神経系”への科学的根拠)

オステオパシーは「身体と神経の統合的治療」という点で、近年の心身医学の研究と一致する部分が多くあります。

■ ストレスと自律神経の関係(科学的根拠)

慢性的ストレスは

  • 交感神経の過緊張
  • 呼吸の浅さ
  • 胸郭・横隔膜の可動性低下 をもたらすことが分かっています(Thayer et al., 2012)。

これは頭痛・胃腸症状・動悸を引き起こし、適応障害やパニック症状を悪化させる要因です。

■ オステオパシーの役割(研究の裏付け)

オステオパシーは、

  • 筋緊張の低下
  • 呼吸運動の改善
  • 迷走神経の活動増加 により自律神経のバランスを整えることが研究で報告されています。

特に、迷走神経活動(副交感神経)を高める施術が不安軽減に有効というデータが複数あります(Clarke, 2018)。

■ オステオパシー治療の目的

  • 身体の緊張 → 減らして「余白(レジリエンス)」をつくる
  • 自律神経を整え、ストレス耐性を回復
  • 心の症状だけでなく、身体の不安信号を減らす
  • 「症状をコントロールできる状態」をつくる

パニック障害と同様、“コップの中身を減らし、溢れにくい身体をつくる”ことを目指します。

これは、心療内科での薬物治療とは異なる視点からのアプローチであり、併用することで相乗効果が得られるケースも多いです。


参考となる主要文献

  • Casey P. (2014). Adjustment disorder epidemiology.
  • Maercker A, et al. (2013). Diagnosis and classification of adjustment disorders.
  • Yehuda R. (2002). HPA axis and stress.
  • Thayer JF, et al. (2012). Autonomic imbalance under stress.
  • Clarke B. (2018). Osteopathic manipulative treatment and vagal activity.
  • Zelviene & Kazlauskas (2019). Effectiveness of CBT on adjustment disorders.


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