2026.01.06
  • 森田智史ブログ
顎・噛みしめと頭痛

上下の歯が接地する時間は1日で何分?

安静時は本来、上下の歯は軽く離れているのが基本です。

古典的な推計として、通常機能(咀嚼・嚥下など)で歯が接触する総時間は1日あたり約17.5分と見積もられています。 

一般向けの解説でも、健常者の歯の接触は1日20分未満とされます。 つまり、日中の「噛みしめ(上下の歯を当てて力が入る癖)」があると、本来の接触時間を大きく上回って顎周りに負荷がかかりやすくなります。


噛みしめが顎関節周囲(筋・靭帯)に与える影響

噛みしめが続くと、特に以下が起こりやすくなります。

  • 咬筋・側頭筋など咀嚼筋の過緊張(だるさ、痛み、こめかみの張り)
  • 顎関節(TMJ)周囲組織への反復ストレス(関節の圧縮、運動の偏り)
  • 開口制限、クリック、顎の疲労感などの顎関節症状(TMD)

TMDは筋性・関節性など複合的ですが、痛みや機能障害の中心が「筋と関節の過負荷」である点は多くの総説で共通しています。 


頭痛との関係(神経学的関係性)

ポイントは、顎(TMJ・咀嚼筋)と頭痛が同じ“三叉神経系”のネットワークに乗っていることです。

  • 顎関節周囲の痛み入力は主に三叉神経を介して中枢に入ります。
  • 一部の頭痛(特に緊張型頭痛や片頭痛)では、顎周囲の痛み・過緊張が絡むと症状が増悪しやすいことが示されています。
  • 近年の系統的レビュー/総説でも、頭痛とTMDの関連や、TMDに起因する二次性頭痛(ICHD分類)について整理されています。 
  • 2024年の系統的レビューでは、頭痛のある人は筋性TMDや痛みを伴うTMDのリスクが高いことが報告されています。 

臨床的には、

「こめかみの頭痛」「目の奥の重さ」「後頭部〜首の付け根の頭痛」などが、噛みしめ・顎周囲の緊張とセットで見られることが多いです。


オステオパシーで行う顎関節への施術

当院の立ち位置としては、歯科治療(スプリント等)や医療的評価を尊重した上で、“噛みしめが起こりやすい身体条件”を整えることを狙います。

主な評価・施術の方向性

  • 顎関節そのもの(開閉口、偏位、関節の可動・滑走)
  • 咀嚼筋(咬筋・側頭筋・内外側翼突筋など)の緊張と左右差
  • 舌骨上筋群〜頸部、胸郭、呼吸(浅い呼吸→噛みしめ増悪、など)
  • 頭頸部(後頭下筋群、頸椎上部)との連動

手技療法全体として、TMDに対する徒手療法が痛みや開口量などに有効である可能性はメタ分析でまとめられています。 

また、顎関節へのOMT(オステオパシー的手技)に関する臨床研究(小規模試験・パイロット含む)も報告があります。 

※ただし、研究はまだ発展途上の領域もあるため、当院では「症状の型・負荷要因・生活背景」を合わせて、再現性のある形に落としていく方針を取ります。


セルフケア:舌を動かすと首や顎に影響が出る

「舌」は顎・舌骨(のど)・頸部筋群と協調して働きます。

舌の位置や動きが、咀嚼筋活動に影響することは筋電図研究で示されています。 

また、頸部姿勢が舌機能に影響しうることも報告されています。 

今日からできるセルフケア(安全・シンプル)

  1. 「歯を離す」リセット(最重要)
  • 唇は軽く閉じる
  • 上下の歯は接触させない(1〜2mm離す)
  • 舌先は上顎の前方(スポット)に軽く置く → 日中に気づいたらこれに戻す
  1. 舌のスライド(1回10往復)
  • 舌先を上顎の前方に当てたまま、上顎をなぞるように後ろへスライド→戻す → 咀嚼筋が“抜ける”感覚が出やすい人がいます
  1. 軽い開口+鼻呼吸(30〜60秒)
  • 口は少し開けて、鼻でゆっくり呼吸 → 噛みしめスイッチを切る練習


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